(2) 子会社が親会社に販売した場合(アップ・ストリーム)
- 子会社において、未実現損益が計上される
- 子会社に少数株主が存在しない場合
- 「親会社が子会社に販売した場合」と同様の消去方法を用いる
- 少数株主が存在する場合
未実現損益の計上方法
- 全額消去、親会社負担方式
- 親会社が、子会社の未実現損益の消去をすべて負担する方法
- 「子会社の少数株主が存在するにも関わらず、親会社が未実現損益の消去をすべて負担する」という問題点がある
- 全額消去、持ち分按分負担方式
- 経済的単一体説と整合する消去方式
- 親会社と少数株主とを経済的に単一のものとみなして処理を行う
- 親会社および子会社のそれぞれの持ち分比率に応じて負担額を按分する方法
- 未実現損益をすべて消去し、消去の負担額を親会社と少数株主との持ち分比率に応じて按分する
- 連結財務諸表原則は、この方式を採用している
- 売手側の子会社に少数株主が存在する場合には、未実現損益は、親会社と少数株主の持分比率に応じて、親会社の持分と少数株主持分に配分するものとする
- 親会社持ち分相当額消去方式
- 少数株主を企業集団の外部者として捉えた方式
- 親会社説と整合する消去方式
- 「取引高の消去処理において、売上がすべて消去されているにも関わらず、未実現損益の消去は部分的になる」という問題点がある
- 親会社の持ち分和当額のみを消去する方法
- 実現損益のうち、親会社の持ち分相当額のみを消去し、少数株主に帰属する部分は実現しているものとみなして消去しない
例題6
- X1年3月3日、P社はS社株式の80%を取得して連結子会社とした
- 連結決算日のX2年3月31日において、親会社P社がS社から購入した商品3,000のうち、400が在庫として残っている
- S社は、P杜に利益率10%で商品を販売している
- 取引高の相殺消去
借方 |
貸方 |
売上 |
3,000 |
売上原価 |
3,000 |
- 未実現損益の相殺消去
未実現損益 = S社から購入した商品の期末残高 × 利益率 = 400 × 10%
子会社負担分の未実現損益 = 未実現損益 × 少数株主の持ち分比率 = 40 × 0.2
借方 |
貸方 |
売上原価 |
40 |
商品 |
40 |
少数株主持分 |
8 |
少数株主損益 |
8 |
(3) 子会社間で売買された場合
- 資産を売却した子会社に、未実現損益が計上されるため、「子会社が親会社に販売した場合」に準じた方法が用いられる
- 連結会社相互間で固定資産が売買された場合
- 固定資産が建物や機械装置といった減価償却が行われる資産である場合
- 減価償却費の修正も必要となる
- 減価償却の基礎となる取得原価が、未実現損益の分だけ過大(または過小)評価されることによって、減価償却費も過大(または過小)計上されているために、修正しなくてはならない
未実現損益の消去
- 連結会社相互間で、棚卸資産や固定資産などの資産を、取得原価に利益を加算して売買することがある
- 企業集団内における資産の移動にすぎない
- 連結決算時に外部への販売が完了していない場合、当該資産が期末に残存している場合には、当該資産に含まれる未実現損益を消去しなければならない
未実現損失
- 売り手側の帳簿価額のうち、回収不能と認められる部分は消去しない
- 未実現損益の額に重要性が乏しい場合には、消去しないこともできる
- 未実現損益の消去が必要なケ―ス
- (1) 親会社が子会社に販売した場合(ダウン・ストリーム)
- (2) 子会社が親会社に販売した場合(アップ・ストリーム)
- (3) 子会社間で売買された場合
(1) 親会社が子会社に販売した場合(ダウン・ストリーム)
- 親会社において未実現損益が計上される
- 子会社が保有する当該資産の額は、未実現損益の分だけ過大(または過小)に評価され、その額だけ売上原価が過小(または過大)に計上される
- 未実現利益の仕訳
借方 |
貸方 |
売上原価 |
XXXX |
棚卸資産 |
XXXX |
- 未実現損失の仕訳
借方 |
貸方 |
棚卸資産 |
XXXX |
売上原価 |
XXXX |
例題5
- X1年3月31日にP社は、S社株式の80%を取得して、連結子会社とした
- 連結決算日のX2年3月31日において、S社が親会社P社から購入した商品 3,000のうち、400が在庫として残っている
- P社は、S社に利益率10%で商品を販売している
- 取引高の相殺消去
借方 |
貸方 |
売上 |
3,000 |
売上原価 |
3,000 |
- 未実現損益の相殺消去
未実現損益 = P社から購入した商品の期末残高 × 利益率 = 400 × 0.1