95. 子会社株式の支配獲得 (2)

投資と資本の相殺消去の具体例

例題2

  • 連結決算日のX1年3月3日に、P社はS社株式の10%を190で取得した
  • 同社の純資産の部には、資本金1,000、資本剰余金400、利益剰余金400が計上されていた
  • この期の純損益は0であって、利益配当は行われなかった
  • S社の資産および負債を時価評価したところ、取得原価100の土地の時価が180であった
  • 翌X2年3月3日、P社はS社株式の80%を1,600で追加取得し、子会社とした
  • 同日、S社の純資産の部には資本金1,000、資本剰余金400、利益剰余金400が計上されていた
  • S社の資産・負債を時価評価したところ、取得原価100の土地の時価が200となっていた

部分時価評価法と段階法の場合

  1. 初回取得時における時価評価(部分時価評価法)
    評価差額 = (時価 - 取得原価) × 親会社の初回取得持ち分比率 = 80 × 0.1

    借方 貸方
    土地 8 評価差額 8
  2. 初回取得時における投資と資本の相殺消去(段階法)
    少数株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金) × 少数株主の持ち分比率 = 1,800 × 0.9

    借方 貸方
    資本金 1,000 S社株式 190
    資本剰余金 400 少数株主持分 1,620
    評価差額 8
    利益剰余金 400
    のれん 2
  3. 追加取得時における時価評価(部分時価評価法)
    評価差額 = (時価 - 取得原価) × 親会社の追加取得持ち分比率 = 100 × 0.8

    借方 貸方
    土地 80 評価差額 80
  4. 追加取得時における投資と資本の相殺消去(段階法)
    株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金) × 少数株主の持ち分比率 = 1,800 × 0.8

    借方 貸方
    少数株主持分 1,440 S社株式 1,600
    評価差額 80
    のれん 80

部分時価評価法(簡便法)と一括法の場合

  1. 支配獲得日における時価評価(部分時価評価法:簡便法)
    評価差額 = (時価 - 取得原価) × 親会社の持ち分比率 = 100 × 0.9

    借方 貸方
    土地 90 評価差額 90
  2. 支配獲得日における投資と資本の相殺消去(一括法)
    少数株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金) × 少数株主の持ち分比率 = 1,800 × 0.1

    借方 貸方
    資本金 1,000 S社株式 1,790
    資本剰余金 400 少数株主持分 180
    評価差額 90
    利益剰余金 400
    のれん 80

全面時価評価法と一括法の場合

  1. 支配獲得日における時価評価(全面時価評価法)
    評価差額 = 時価 - 取得原価

    借方 貸方
    土地 100 評価差額 100
  2. 支配獲得日における投資と資本の相殺消去(一括法)
    少数株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金 + 評価差額) × 少数株主の持ち分比率 = 1,900 × 0.1

    借方 貸方
    資本金 1,000 S社株式 1,790
    資本剰余金 400 少数株主持分 190
    評価差額 100
    利益剰余金 400
    のれん 80

94. 子会社株式の支配獲得 (1)

株式の段階的取得による支配獲得

  • 株式を2回以上に渡って段階的に取得することによって、子会社の支配を獲得した場合、投資と資本を相殺消去する方法として、「段階法」と「一括法」のいずれかが適用される
    • 段階法:株式の取得日ごとに親会社が追加的に取得した株式への投資と、それに対応する子会社の資本を、段階的に相殺消去する処理法
    • 一括法:株式の取得過程とは関係なく、支配獲得日に投資と資本を一括して相殺消去する処理法
  • いずれの方法を選択しても、相殺消去の際に、追加投資額とそれに対応する持ち分額の間に差額が生じた場合は、その差額を「のれん(または負ののれん)」として処理する

資産・負債の評価方法と合理的な相殺消去

  • 部分時価評価法を適用している場合 → 段階法
    • 部分時価評価法
      • 子会社の資産・負債のうち、親会社の持ち分に相当する部分のみを株式取得日ごとに時価によって評価する方法
      • 親会社による子会社への段階的な投資を反映する方法
      • 親会社説と整合的な会計方法
    • 子会社の資産・負債を、段階的に評価処理するならば、投資と資本についても、株式の取得に応じて段階的に相殺処理することが整合的な処理方法といえる
    • 部分時価評価法を適用している場合は、段階法を選択することが首尾一貫した処理となる
  • 全面時価評価法を適用している場合 → 一括法
    • 全面時価評価法
      • 子会社の資産・負債における親会社の持ち分と、少数株主の持ち分の両方を、支配獲得日の時価によって評価する方法
      • 経済的単一体説と整合的な会計方法
    • 一括法
      • 被投資会社が子会社として企業集団に加わり、経済的単一体が形成されることになった支配獲得日において、投資と資本を相殺消去する方法
      • 全面時価評価法を適用している場合は、一括法を選択することが首尾一貫した処理となる
    • 資産・負債の評価における簡便法の適用
      • 計算の結果が著しく相違しない場合に限り、部分時価評価法を適用していても、支配獲得日における時価で親会社の持ち分に相当する部分を一括して評価することもできる
      • その場合には、投資と資本の相殺消去についても、一括法を適用することになる

93. 連結貸借対照表の作成

連結貸借対照表の作成

  • 連結貸借対照表は、連結会社の個別貸借対照表における額を基礎とする
  • 子会社の資産・負債の評価、連結会社相互間の投資と資本との相役消去、債権と債務との相殺消去などの修正処理を行って作成される

子会社の資産・負債の評価

  • 連結貸借対照表の作成にあたっては、子会社の支配獲得日において、子会社の資産・負債を時価によって評価する
  • 時価評価方法
    1. 部分時価評価法
      • 子会社の資産・負債のうち、親会社の持ち分に相当する部分を株式の取得日ごとに、当該日の公正な評価額(時価)で評価する
      • 少数株主の持ち分に相当する部分は、子会社の個別貸借対照表上の額で評価する
      • 親会社の持ち分に相当する部分のみを時価で評価するため、親会社説と整合的な方法である
      • 計算の結果が著しく相違しない場合は、簡便法として、支配獲得日の時価を基準として、親会社の持ち分に相当する部分を、一括して評価する方法を適用することもできる
    2. 全面時価評価法
      • 子会社の資産・負債のすべてを、支配獲得日の時価で評価する
      • 少数株主の持ち分も含めて時価で評価するため、経済的単一体説と整合的な方法である
  • いずれの時価評価方法を選択しても、資産・負債を時価評価した際の時価と取得原価の差額は「評価差額」とされ、子会社の純資産の部に計上される
    借方 貸方
    諸資産 1,000,000 評価差額 1,000,000
  • 支配獲得、株式取得、売却などの日が子会社の決算日以外の場合は、当該日の前後のいずれか近い決算日(みなし支配獲得日)に、支配獲得、株式取得、売却などが行われたとみなして、処理することが認められている

92. 投資と資本の相殺消去 (1)

投資と資本の相殺消去

  • 連結決算では、連結会社全体をひとつの会計単位とみなして、財務諸表を作成する
  • 連結決済は、親会社から子会社への投資は会計単位内部での資金移動にすぎない
      ↓
    連結会社の個別貸借対照表をそのまま合算してしまうと、資産・純資産が過上計上されてしまう
      ↓
    親会社の子会社に対する投資(子会社株式)と、これに対応する子会社の資本(純資産の部に計上される、新株予約権および少数株主持分以外の諸勘定)を相殺消去する必要がある
      ↓
    子会社相互間の投資と、これに対応する資本についても、相殺消去する必要がある

「持ち分比率が100%の子会社への投資」と「その子会社の資本」の相殺消去

借方 貸方
資本金 XXXX 子会社株式 XXXX
資本剰余金 XXXX
評価差額 XXXX
利益剰余金 XXXX

少数株上が存在する場合

  • 子会社の資本のうち、親会社の投資に相当する部分が持ち分比率に応じて相殺消去され、少数株主に帰属する部分は「少数株主持分」として処理される
    借方 貸方
    資本金 XXXX 子会社株式 XXXX
    資本剰余金 XXXX 少数株上持分 XXXX
    評価差額 XXXX
    利益剰余金 XXXX

投資と資本を消去する際に消去差額が借方に生じる場合

  • 消去差額を「のれん」として計上する
    借方 貸方
    資本金 XXXX 子会社株式 XXXX
    資本剰余金 XXXX 少数株上持分 XXXX
    評価差額 XXXX
    利益剰余金 XXXX
    のれん XXXX

のれん

  • 子会社の純資産の公正な評価額以上に対価を支払ったことによって生じた差額
  • 子会社の持つ「超過収益力」を表す
  • 資産として計上され、計上後20年以内に定額法、その他の合理的な方法によって、償却される
  • 差額が貸方に生じた場合は、その差額を「負ののれん」として、負債の部に計上し、のれんと同様の方法によって償却される
  • 「のれん」「負ののれん」は、いずれも金額の重要性が乏しい場合には、当期の損益として処理することもできる

91. 投資と資本の相殺消去 (2)

相殺消去の具体例

例題1

  • X1年3月31日に、A社はB社株式の80%を1,600で取得し、連結子会社とした
  • 同社の純資産の部には、資本金1,000、資本剰余金400、利益剰余金400が計上されていた
    • B社の資産・負債を時価評価したところ、取得原価100の土地の時価が200となっていた
  • X2年3月31日、連結決算にあたり、のれん80を償却期間を20年として償却する

部分時価評価法の場合

  1. 資産・負債の時価評価
    評価差額 = (時価 - 取得原価) × 親会社の持ち分比率 = 100 × 0.8

    借方 貸方
    土地 80 評価差額 80
  2. 投資と資本との相殺消去
    少数株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金) × 少数株主の持ち分比率 = 1,800 × 0.2

    借方 貸方
    資本金 1,000 S社株式 1,600
    資本剰余金 400 少数株主持分 360
    評価差額 80
    利益剰余金 400
    のれん 80

全面時価評価法の場合

  1. 資産・負債の時価評価
    評価差額 = 時価 - 取得原価

    借方 貸方
    土地 100 評価差額 100
  2. 投資と資本の相殺消去
    少数株主持分 = (資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金 + 評価差額) × 少数株主の持ち分比率 = 1,900 × 0.2

    借方 貸方
    資本金 1,000 S社株式 1,600
    資本剰余金 400 少数株上持分 380
    評価差額 100
    利益剰余金 400
    利益剰余金 80

のれん処理

  • のれん償却
    借方 貸方
    のれん償却額 4 のれん 4

90. 連結財務諸表の作成

連結財務諸表作成の基本的な手続き

  1. 個別財務諸表の合算
    • 「個別財務諸表基準性の原則」に従って、まず連結の範囲に含まれる各社の個別財務諸表にある勘定科目を合計する
    • この際、各勘定科目の合計や修正処理を行うために「連結精算表」が利用される
  2. 連結にあたっての修正処理
    • 各勘定科目の合算では、単純な合計のみではなく、修正が必要となる場合がある
    • 主な修正事項
      • 子会社の資産および負債の評価
      • 連結会社間の投資と資本との相殺消去
      • 取引高および債権債務の相殺消去
      • 未実現損益の消去

連結精算表

  • 各連結会社の作成した個別財務諸表の各勘定科目の合算および修正処理を行う際に利用される精算表
  • 連結精算表では、各勘定科目が合計欄で合計される
      ↓
    資産・負債の評価や、投資と資本の相殺消去などによる修正仕訳が、修正記入欄に記入される
      ↓
    合計欄の額に修正記入欄の額が加減され、連結財務諸表に記載される各勘定科目の額が導かれる
連結精算表の例
勘定科目 親会社の
個別財務諸表
子会社の
個別財務諸表
合計 修正記入 連結財務諸表
借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方




資産
 
負債
 
純資産
××
××
 
 
××
××
××
××
××
××
 
 
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××
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××
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××
 
 
××
××
××
××
合計 ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ××




収益
 
費用
 
当期純利益
 
 
××
××
××
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××
 
 
××
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××
 
××
 
××
 
 
××
××
××
××
××
合計 ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ××
株変
主動
資計
本算
等書
前期末残高
 
当期変動額
 
当期末残高
 
 
××
 
××
××
××
 
××
 
 
××
 
××
××
××
 
××
 
 
××
 
××
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××
 
××
 
 
××
××
 
 
××
 
××
 
 
××
 
××
××
××
 
××
合計 ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ×× ××

89. 連結主体論

連結主体論

  • 会計主体論:会計はどのような(誰の)観点から行われるのか
  • 連結主体論:連結財務諸表の作成はどのような(誰の)観点から行われるのか
  • 親会社説と経済的唯一体説のいずれの見解によるかによって、適用すべき会計処理方法が異なる
  • 現行の連結財務諸表の作成は、原則として、親会社説に立脚して行われている
    • 連結財務諸表の主な情報利用者が、親会社への投資者であるため
    • 親会社説による会計処理方法の方が、企業集団経営の実際的な感覚を適切に反映しているため

連結主体論

  1. 親会社説
    • 「連結財務諸表の作成は、支配株主である親会社の観点から行われる」とする見解
    • 親会社のみが子会社の株主であると考える
    • 子会社の純資産の内、親会社の出資に対応する持ち分のみを連結財務諸表において連結すべき資本とする
    • 少数株主持分は、他人からの資金調達とみなし、負債と同様に位置づける(将来の返済義務が存在しない点では負債と異なる)
  2. 経済的単一体説
    • 「連結財務諸表の作成は、親会社のみならず、少数株主をも含めた全株主の観点から行われる」とする見解
    • 企業集団全体を単一の経済実体として捉え、少数株主も親会社と同様に子会社の出資者とみなす
    • 親会社の持ち分と少数株主の持ち分とを連結すべき資本と考える

88. 連結決算の原則と手続き

連結決算日

  • 年次連結財務諸表は1年、中間連結財務諸表は6か月を会計期間とし、親会社の会計期間にもとづき、年1回、一定の日を連結決済日とする
  • 連結決算日(子会社の決算日と親会社の決算日)が同一ではない場合、子会社は連結決済日において正規の決算に準ずる合理的な手続きをもって、決算を行う必要がある
  • 連結貸借対照表や連結損益計算書は、同一日の個別貸借対照表や個別損益計算書をもとに作成されたものでなければならない
    → 同一日でないと、連結会社全体の財政状態や経営成績を正しく表示することができない
  • 決算日の差異が3か月を超えない場合は、子会社の正規の決算を基礎として連結決済を行うことが認められる
    • 決算日が異なることによって生ずる連結会社間の取引に関わる会計記録の重要な不一致については整理する必要がある
    • 例)
      親会社の決算日後に、子会社が決算日をむかえ、かつ親会社の決済日と子会社の決算日との間に、親会社が子会社に商品を販売した
        ↓
      親会社側では、この販売に関わる取引は、財務諸表に反映されていないが、子会社側では反映されているという状況が生ずる
        ↓
      子会社側では、この取引の記録を消去する処理が必要となる

親会社及び子会社の会計処理の原則・手続き

  • 各連結会社は、それぞれ固有の環境下において経営活動を行っているため、会計処理および手続きに関しては、各社がその環境に合致した方法を選択することが合理的である
  • 連結財務諸表は、親会社と子会社をひとつの組織体とみなし、その全体的な財政状態および経営成績を把握するために作成されるものである
    → 同ーの環境下で行われた同ーの性質の取引などに適用する会計処理方法および手続きは、原則として連結会社において統一する

複数の会計処理と連結決算

  • 財務諸表の作成
    • 「減価償却では定額法、定率法などが認められている」など、同様の取引について複数の処理方法が認められている場合がある
    • 複数の処理方法が認められている理由は「企業の情況を最も適切に示す数値をもたらす処理方法が用いられるべき」という考え方にもとづいている
  • 連結会社の会計処理
    • 親会社では定額法が用いられ、子会社では定率法が用いられている場合、「定額法による親会社の減価償却費額」と「定率法による子会社の減価償却費額」とは性格を異にする数値であり、これらを合計することには問題がある
    • 定額法に統一する際、どちらを選択すべきか?
      • 親会社に適した「定額法による数値」と子会社に適さない「定額法による数値」を合算
      • 親会社に適した「定額法による数値」と子会社に適した「定率法による数値」を合計

87. 連結財務諸表の一般基準

連結財務諸表原則の一般基準

  • 連結の範囲、連結決算日、親会社と子会社の会計処理の原則・手続きを示している

連結の範囲

  • 親会社は原則として、すべての子会社を連結の範囲に含めて連結財務諸表を作成しなければならない
  • 親会社:会社間の支配従属関係において、他の会社を支配している会社
  • 子会社:支配されている会社
  • 子会社の範囲が異なると、作成される連結財務諸表の内容も異なるため、子会社に該当するかどうかの決定基準「連結の範囲」が問題となる

連結の範囲の決定基準

  • 支配力基準
    • 会社(親会社)が他の会社を支配しているかどうかによって決定する
    • 他の会社の財務・営業、または事業の方針を決定する機関(株主総会や取締役会などの意思決定機関)を実質的に支配しているかどうか、によって連結の範囲を決定する
  • 持ち分基準(持ち株基準)
    • 議決権つき発行済み株式の親会社の持ち分比率(持ち株比率)を判断基準とする
    • 長所
      • 支配の度合いが数値によって客観的に判断可能である
    • 短所
      • 株式保有以外の手段による企業支配が見逃される
      • 支配従属関係にあるにも関わらず、意図的に持ち分比率を下げて連結の範囲から除外することによって、連結数値の操作が可能となる
  • 会計では支配力基準が採用されている
    • 連結財務諸表に支配従属関係にもとづく経済的実態を反映させることができる
    • 恣意的な数値操作を防ぐことができる

支配力基準

  • 支配力基準では、支配力の不在が示されない限り、以下のようなケースは子会社に該当する
    1. 他の会社の議決権の過半数(50%超)を実質的に所有している場合
      • 議決権のある株式、または出資の名義が役員など、会社以外となっていても、会社が自己の計算で所有している場合は、会社が実質的に所有しているものとみなす
    2. 他の会社の議決権の所有割合が50%以下であっても、高い比率(40%以上)の議決権を有しており、かつ当該会社の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合
      • 議決権を行使しない株主の存在や、役員・関連会社などの協力的な株主の存在によって、株主総会で議決権の過半数を継続的に占めることができると認められる場合
      • 役員・従業員、あるいはかつてそうであった者が取締役会の構成員の過半数を継続して占めていると認められる場合
      • 重要な財務、および営業の方針決定を支配する契約などが存在する場合
    3. 子会社が他の会社を支配している場合(孫会社の場合)
      • 親会社の支配下にあると考えられるため、子会社とみなされる

連結の範囲に含まれないケース

  • 更生会社、整理会社、破産会社などであって、他者の管理下におかれるなど、有効な支配従属関係が存在せず、組織の一体性を欠く会社は子会社に該当しない
  • 子会社であっても、支配が一時的な場合や、連結することによって利害関係者の判断を著しくにぶらせる恐れのある場合は、連結の範囲に含めない
  • 子会社であっても、規模が小さく、重要性が乏しいと判断される場合は、連結の範囲に含めないことができる

連結の会社と株主

  • 連結子会社:連結の範囲に含まれる子会社
  • 連結会社:連結の範囲に含まれる子会社+親会社
  • 非連結子会社:連結の範囲に含まれない子会社
  • 少数株主:親会社による子会社株式に対する保有割合が100%に満たない場合、子会社における親会社以外の株主
  • 連結決算上、少数株主に帰属する子会社の純資産で、連結の対象となる部分は、親会社に帰属する部分とは別に「少数株主持分」として処理される
  • 少数株主持分は、連結貸借対照表の純資産の部において、株主資本などとは区別して表示される

連結財務諸表における実質優先思考(サブスタンス・オーバー・フォーム)

  • 形式(フォーム)よりも実質(サブスタンス)を優先(重視)する考え方
  • 企業集団を構成する各企業は、(法的)形式上はそれぞれ独立の存在だが、(経済的)実質上はひとつになって活動しているため、連結財務諸表を作成する
  • 連結の範囲には、持ち分基準(形式)ではなく、支配力基準(実質)を採用する

86. 連結財務諸表の一般原則

連結財務諸表原則における連結財務諸表作成に関する規範的原則

  • 一般性の原則
    • 真実性の原則:連結財務諸表は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない
    • 個別財務諸表基準性の原則:連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない
    • 明瞭性の原則:連結財務諸表は、企業集団の状況に関する判断を誤らせないよう、利害関係者に対し、必要な財務情報を明確に表示するものでなければならない
    • 継続性の原則:連結財務諸表作成のために採用した基準及び手続は、毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない
  • 重要性の原則
    • 会計上の重要性に乏しい軽微なものは、本来の厳密な会計処理ではなく簡便に処理してかまわない
    • 重要性の低い取引に関して簡便な会計処理を行っても、それは正規の簿記の原則に違反したものとはならない
    • 子会社であって、その資産、売上高等を考慮して、連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものは、連結の範囲に含めないことができる

企業会計原則と同義の原則

  • 以下の連結財務諸表原則は、企業会計原則における同名の原則と同様の意義を持つ
    • 真実性の原則
    • 明瞭性の原則
    • 継続性の原則
    • 重要性の原則

個別財務諸表基準性の原則

  • 連結財務諸表は、企業集団を構成する各社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるべきである
  • 作成の際、個別財務諸表は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されるべきである
  • 個別財務諸表が、一般原則の要請するものに反して、財政状態、および経営成績を適正に表示していない場合には、重要な影響を及ぼさないケースを除き、適正に修正して連結決算を行う必要がある