25. 規制緩和

規制緩和

  • 経済を活性化するために、政府によるさまざまな規制を縮小すること
  • 経済のあり方を、市場経済の原理に基づくものにするため、政府は公企業の民営化、規制緩和や自由化などの政策をとる

規制緩和の効果

  • 市場における公正で有効な競争条件が整備され、国民にとっての利便性が向上し、雇用の拡大が図られる
    • 新規ビジネスへの参入や新サービスの開拓による生産の効率化
    • 価格の低下
    • 内外価格差の縮小(同一の商品・サービスの国内と国外の価格差が縮まる)
    • 消費者の選択肢の拡大
  • 財政の肥大化や国民の過度な税負担を抑制し、必要なところに政府の支出を重点、配分できる

1990年代以降の規制緩和の例

  • タクシ一台数の制限撤廃
  • 電力自由化
  • 酒類免許制度の撤廃
  • 港湾運送事業への新規参入
  • 電気通信事業の開放
  • 農業への株式会社参入
  • 郵便事業の民間開放
  • 地ビールなどの最低醸造量の緩和
  • 人材派遣業の認可及び範囲の拡大

24. 企業買収による寡占・独占

19世紀後半に生まれた企業集中の形態

  • カルテル(企業連合)
    • 同一業種の複数の企業が独占目的で行う、価格・生産計画・販売地域等の協定
    • 官公庁などが行う入札制度における事前協定を「談合」と呼ぶ
  • トラスト(企業合同)
    • 同一業種の複数の企業が株式の買収や持合い、受託を行ったり、持ち株会社を設立して同種企業を傘下に持つなどして、企業として一体化すること
    • 市場を寡占、独占することを目的としている
  • コンツェルン(企業連携)
    • 親会社が個々に独立した企業の株式を持ち、実質的に支配すること
    • 銀行かそれに相当する企業の持株会社が、多種多様な産業を支配した状態
  • コングロマリット(複合企業)
    • 異業種の会社まで合併などで吸収し、多種類の事業を営む大企業
    • 企業のM&A(合併・買収)を積極的に行う

TOB(株式公開買付)

  • ある株式会社の経営権を握ることを目的に、「買付け期間・買取り株数・価格」を公表して、不特定多数の株主から株式市場外で株式を買い集める仕組み
  • 第三者が、企業買収や子会社化など、対象企業の経営権の取得を目的に実施することが多い

TOBの種類

  • 友好的TOB
    • 買収される会社の経営陣などの賛同を得て実施する株式公開買付け
  • 敵対的TOB
    • 賛同を得ずに一方的に行う株式公開買付け

TOBの具体例

  • ライブドアによるニッポン放送の買取に対抗した、フジテレビの「友好的TOB」
  • ドン・キホーテによるオリジン東秀への「敵対的TOB」と、それに対抗したイオンの「友好的TOB」
  • 村上ファンドによる阪神電気鉄道M&A、それに対抗した阪急ホールデインクスの「友好的TOB」
  • 王子製紙による北越製紙への「敵対的TOB」

23. 市場の発展

市場での自由競争に勝つための動き

  • 企業は大量生産によって商品のコストを下げようとする(規模の経済)
  • 企業の規模は次第に大きくなる(生産の集積)
  • 競争力のない企業が市場から消える(生産の集中)
  • 市場には少数の大企業だけが生き残る(寡占・独占)

規模の経済

  • 生産量の増大につれて、平均費用(コスト)が減少した結果、利益率が高まる傾向のこと
  • 規模の経済性が働く産業
    • 他の企業に先駆けて市場に参入し、いち早く生産量を拡大した企業が、競争力を強め、市場において有利な地位を確立する
  • 日本の主要輸出製品(自動車や半導体など)
    • 規格化しやすく、大量生産に適した製品
    • 生産量の拡大に伴い、生産技術の向上などの習熟効果が強い
    • 研究開発費などの初期投資が巨額である
    • 量産によるコスト低下の効果が著しい

寡占市場

  • 寡占:市場に少数の大企業しかいない状態
    独占:市場が1杜で支配されている状態
  • 寡占市場の特徴
    • 技術革新でコストが下がったり、需要が減少したりしても、価格が下がりづらい(価格の下方硬直性)
    • 市場シェアが最も高い企業が「プライス・リーダー」となって価格を設定すると、他の企業もそれに続いて同じ価格を設定する(管理価格)
    • 宣伝などによって購買欲を刺激されて、商品を買う傾向が強くなる(依存効果)
    • 宣伝費が巨額にふくらみ、それが価格に転嫁される
    • デザイン、ブランド、宣伝、アフターサービスなどによる「非価格競争」が行われる

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

  • 自由で公正な競争を確保するための日本の法律
  • 公正取引委員会(独立した行政委員会)が取り締まる
  • 自由競争の確保のために、カルテル、談合、ダンピング、再販売価格維持制度などを禁止
    • カルテル
      • 企業・事業者が独占目的で行う、価格・生産計画・販売地域等の協定
    • 談合
      • 公共工事などの入札の際に、入札価格や業者間の利益配分、落札業者を事前に話し合って決めること
    • ダンピング
      • シェアの拡大や競争に勝つために、商品の販売価格を適正な価格より不当に安くすること
    • 再販売価格維持制度
      • 品質低下を避けるために、メーカーが卸売価格や小売価格を指示して、問屋や小売庖に商品を流す制度
      • 書籍・CD・新聞・医薬品や化粧品など一部の商品について独占禁止法を適用しない

22. 市場経済の機能

資本主義経済における「市場」

  • 供給:企業は、生産物を商品としてより高く売ろうとする
  • 需要:消費者は、より良い商品をより安く買おうとする(需要)
  • 市場:供給と需要が価格によって調整される場

完全競争市場

  • 自由競争が行われている市場
  • 完全競争市場の特性
    • 供給が需要より多いと商品が売れ残り、価格は低下する
    • 価格が下がると、供給側は供給を減らし、需要側は需要を増やす
    • 需要が供給より多いと品不足となり、価格は上昇する
    • 価格が上がると供給側は供給を増やし需要側は需要を減らす

市場価格

  • 市場での需要と供給の関係で決まる価格
  • 需要と供給の関係によって価格は上下するとともに、需要と供給は価格を目安に調整される

価格の自動調節機能

  • 市場価格が需要と供給を調整する働き
  • アダム・スミスいわく「神の見えざる手」
  • 価格の自動調節機能 = 市場メカニズム(市場機構)

市場経済

  • 市場メカニズムによって資源の最適配分が実現される経済
  • 市場経済の種類
    • ① 斜陽産業
      • 需要が減少している産業
      • 商品が売れずに価格が下落するため、平均利潤が減少する
    • ② 成長産業
      • 需要が増加している産業
      • 商品の需要が多く、価格が上昇し、平均利潤が増加する
  • 資本が ① 斜陽産業 から ② 成長産業 に移動し「資源の最適配分」が行われる

市場の種類

  • 商品市場
    • モノやサービスが取引され、財の価格が市場価格の役割を果たす
  • 労働市場
    • 労働が取引され、賃金が市場価格の役割を果たす
  • 金融市場
    • 資金が取引され、金利が市場価格の役割を果たす
  • 株式市場(証券市場)
    • 株式などが取引され、株価が市場価格の役割を果たす
  • 外国為替市場
    • 外国通貨が取引され、外国為替相場(為替レート)が市場価格の役割を果たす

21. デフレーション(デフレ)

デフレの原因

  • 輸入品の増加
    • 中国などで生産された安い輸入品が大量に日本に流入し、物価が下がった
    • 例)カジュアル衣料「ユニクロ」の低価格戦略
  • 需要の弱さ
    • 景気の長期低迷で、消費者が商品を買わなくなり、企業は商品の価格を引き下げていく
    • 例)ハンバーガーショップ「マクドナルド」の低価格競争
  • 資産価値の目減り
    • 土地や株式などの資産価値が目減りする
        ↓
      土地を担保に企業に資金を貸し出していた銀行は、企業に返済を迫るようになる
        ↓
      企業は設備投資や商品の仕入れを抑え、従業員の給与を減らして、借金の返済に回す
        ↓
      銀行は資金の返済が確定するまで、他の企業への新たな貸出しを見送る
        ↓
      経済社会で資金の動きがにぶくなる
        ↓
      商品や設備への需要が減り、物価が下落する

デフレの種類

  • デフレ・スパイラル
    • 物価下落と利益減少が繰り返される連鎖的な悪循環
    • デフレによる物価の下落で企業収益が悪化、人員や賃金が削減され、それに伴って失業の増加、需要の減衰が起こり、さらにデフレが進む

デフレの効果

  • 例1)物価下落
      ↓
    企業の売上が下がる
      ↓
    所得や雇用を通じて家計に悪影響を浸ぼす
      ↓
    経済規模が縮小する
  • 例2)商品価格が下落
      ↓
    企業の生産意欲が減退
      ↓
    経済活動が停滞
      ↓
    賃金の下落や雇用の減少
      ↓
    消費者の買い控え、景気の後退による商品の売れ残り
      ↓
    更なる商品価格の下落(悪循環)

20. インフレーション(インフレ)

インフレの原因

  • 需要インフレ
    • 景気が好調になると、需要が拡大して商品の価格が高くなり、その結果物価が上昇する
  • 供給インフレ
    • 原材料費や賃金が上昇すると、その分だけ企業は商品の価格を吊り上げるため、その結果物価が上昇する
  • 輸出インフレ
    • 外国への輸出が増えると、国内の供給量が減り商品の価格が高くなるため、その結果物価が上昇する
  • 輸入インフレ
    • 輸入が増えると、外国の景気に左右されるようになり、物価が上昇する
  • 貨幣的要因によるインフレ
    • 日本銀行が貨幣を増刷しすぎると、通貨量が増えて貨幣価値が下がり、物価が上昇する

インフレの種類

  • ディマンド・プル・インフレーション
    • 通貨供給量(マネーサプライ)や財政支出の増加などにより、総需要が総供給より多くなって、物価が上昇する現象
  • コスト・プッシュ・インフレーション
    • 賃金や原材料費などの生産コストの上昇が物価を押し上げる現象
  • ハイパー・インフレーション
    • 物価が短期間に数十倍にも高騰する現象
  • クリーピング・インフレーション
    • 長期間にわたり徐々に物価が上昇する現象

インフレの効果

  • 例1)インフレが進む
      ↓ 
    通貨価値が下落
      ↓ 
    実質賃金が下落
      ↓ 
    預貯金の目減りを招く
      ↓ 
    労働者や年金生活者の生活が苦しくなる
  • 例2)土地などの資産価値が増加
      ↓ 
    借金などの負債が目減りする
      ↓ 
    インフレ・マインドを刺激
      ↓ 
    投機目的で借金をしてまでも土地や財貨を買い急ぐ
      ↓ 
    さらにインフレーションを刺激する

19. 物価

物価とは

  • さまざまな商品の価格を総合し平均化したもの

物価の種類

  • 企業物価
    • 企業間で取引される商品の価格を平均化したもの
  • 消費者物価
    • 家計が小売段階で購入する商品の価格を平均化したもの

物価指数

  • ある基準年の物価水準を100として、他の年の物価の上昇や下落を比率で示したもの
  • 物価の動きを示す指標

インフレーション・デフレーション

  • インフレーション(インフレ)
    • 物価が持続的に上昇する現象
  • デフレーション(デフレ)
    • 物価が持続的に下落する現象
  • インフレ・デフレへの対策
    • インフレーションやデフレーションは、経済活動に大きなマイナスの影響を与えることがある
    • 政府や日本銀行は「物価の安定」を財政・金融政策の大きな目標としている

18. 市場の失敗

市場の失敗

  • 市場経済にゆだねていると・・・
    • 必要なモノやサービスが、適正な価格で、必要なだけ供給されないことがある
    • 資源の最適配分が実現しないことがある
    • 上記のような状態は、経済的に効率的ではない
  • 市場の失敗とは、市場経済にゆだねた結果(市場メカニズムが働いた結果)、「経済的な効率性」が達成されていない状態のこと

市場の失敗例

  • 外部不経済
    • 市場を通さないで、第三者に経済的な不利益を与えること
    • 例)自動車の排気ガスによる大気汚染などの公害
      → 排気ガスは市場を介さず、社会に直接的に公害を与える
  • 収穫逓増的(費用逓減的)な事業を行う産業
    • 多額の設備が必要となるため、多数の企業による競争が成立せず、巨大企業の独占が発生するような産業
    • 例)電力、水道、ガス、交通など

      → 事業設備(インフラ)を整えるのに多額の初期費用が必要となる産業
    • この産業では、大量生産によって利益が生まれる(規模の経済が働く)
  • 公共財や公共サービスの提供
    • 一般の道路や橋などのように、誰もが使うものを提供すること(共同性)
    • ある人が消費しても、他の人の消費量は減らないものを提供すること(非競合性)
    • 公共財・公共サービスでは、料金を払わない人(フリーライダー)を排除できない(非排除性)

市場の失敗への対策例

  • 排出基準の設定
    • 工場などから排出される汚染物質の許容限度を設定する
  • 公共料金の設定
    • 巨大企業が市場を独占しており、価格を自由に設定できてしまうため、その価格を「公共料金」として規制する
  • 政府による資源の配分(公共投資など)
    • 国や地方自治体が公共事業などに投資することによって、社会に資源を再配分する

17. 需要と供給の変化

需要が増加すると、均衡価格は上昇

  • 消費者の所得(給与など)が増加したり、商品がヒットしたりして需要が増えると、需要曲線は右に移動する
    → 点E’で取引が成立するようになり、均衡価格が上昇する

    需要供給曲線

需要が減少すると、均衡価格は下落

  • 消費者の所得が減少したり、景気が悪くなったりして需要が減ると、需要曲線は左に移動する
    → 点E”で取引が成立するようになり、均衡価格が下落する

    需要供給曲線

供給が増加すると、均衡価格は下落

  • 天候が良くて豊作になったり、技術革新によって生産性が向上して供給が増えると、供給曲線は右に移動する
    → 点E’で取引が成立するようになり、均衡価格が下落する

    需要供給曲線

供給が減少すると、均衡価格は上昇

  • 天候が悪くて不作になったり、工場での事故や災害によって供給が減ると、供給曲線は左に移動する
    → 点E”で取引が成立するようになり、均衡価格が上昇する

    需要供給曲線

市場メカニズム

  • 需要量と供給量が一致するまで価格を動かして、取引を成立させる仕組み

16. 価格メカニズム(2)

もし価格が点Eのときよりも高かったら

  • もし価格が点Eのときよりも高かったら、需要量よりも供給量の方が大きくなり、供給側に「余剰(余り)」が生じる
    → 余ったものを売ろうとして価格は下がるだろう

    需要供給曲線

もし価格が点Eのときよりも安かったら

  • もし価格が点Eのときよりも安かったら、供給量よりも需要量の方が大きくなり、品不足が生じる
    → 品不足になると商品価値が高まり、価格は上がるだろう

    需要供給曲線

点Eのときの価格が「均衡価格」

  • 需要曲線と供給曲線が交わる点Eのときに、需要量と供給量が等しくなり、商品の過不足もなく、価格が安定する

    需要供給曲線