75. キャッシュフロー計算書の作成

キャッシュフロー計算書の作成
キャッシュフロー計算書の作成方法には2つの方法がある

  1. 損益計算書と2期間の貸借対照表(比較貸借対照表)を主に利用して、キャッシュフロー計算書を作成する方法
    • 複式簿記の手続きを経て作成された財務諸表を利用してキャッシュフロー計算書を作成する方法
    • 若干の明細書、利益処分に関する資料も必要
    • 一般的に用いられる
  2. 複式簿記の仕組みにキャッシュフロー計算書を作成するための勘定組織を組み入れ、期末の決算における勘定の集計によってキャッシュフロー計算書を作成する方法

損益計算書と比較貸借対照表によるキャッシュフロー計算書の作成

  • 「損益計算書の利益」を「比較貸借対照表から得られる各勘定の差額」を用いて「収支」を調整する
  • 利益から収支への調整ルール
    現金の滅少(資金の運用) 現金の増加(資金の調達)
    資産の勘定(現金以外) 増加 減少
    負債の勘定減少 減少 増加
    資本の勘定減少増加 減少 増加

企業の資金の流れ

  1. 負債、資本によって現金を調達
  2. その現金を資産の購入に使用
  3. 購入された資産が売却される
  4. 現金が回収される

現金と資産の関係

  • 現金以外の資産が増加
    = 現金を使ってその資産を手に入れた
    = 資産の増加 → 現金の減少
  • 現金以外の資産が減少
    = その資産を手放すことによって現金を手に入れた
    = 資産の減少 → 現金の増加

現金と負債・資本の関係

  • 銀行からの借入(負債)
    • 借入を行う → 現金の増加
    • 借入金の返済 → 現金の減少
  • 株式の発行(資本)
    • 資本の増加 → 現金の増加
    • 負債、資本の増加 → 現金の増加
    • 負債、資本の減少 → 現金の減少

貸方と借方

  • 貸借対照表の貸方は資金の調達情況、借方は資金の運用情況を示す
    • 貸方 = 現金という資金の調達情況
      • 負債や資本は、現金の調達を示す
      • 負債や資本の増加 → 現金の増加
      • 負債や資本の減少 → 現金の減少
    • 借方 = 現金という資金の運用情況
      • 資産は、調達した現金の用途を示す
      • 資産の増加 → 現金の減少
      • 資産の減少 → 現金の増加

74. キャッシュフロー計算書の表示

直接法と間接法

  • キャッシュフロー計算書の表示には、「直接法」と「間接法」という2つの方法がある
  • キャッシュフロー計算書は、直接法と間接法を問わず、3つに区分されている
    1. 営業活動によるキャッシュフロー
    2. 投資活動によるキャッシュフロー
    3. 財務活動によるキャッシュフロー
  • 直接法と間接法の違いは、営業活動によるキャッシュフローの表示のみである
    • 直接法
      • 商品や製品の売上収入から仕入支出、人件費などの営業支出を差し引き、営業活動によるキャッシュフローが計算される
    • 間接法
      • 利益(一般には税引当期純利益)に、営業活動により生ずる資産や負債の増減と、非資金的損益項目を加減することによって、営業活動によるキャッシュフローが表示される

非資金的損益項目

  • キャッシュフロー計算書(間接法)における非資金的損益項目
    • 現金支出をともなわない費用(非資金的費用)、および現金収入をともなわない収益(非資金的収益)のこと
  • 非資金的費用の例
    • 引当金の繰り入れ
    • 費用の未払い分
    • 減価償却費
      • 現金支出をともなわない費用
      • 有形固定資産の購入時に現金支出したが、その全額が購入時に費用として計上はされない
      • 決算において、支出額の一部が減価償却費として計上される
      • 減価償却(費用計上)時には、現金の支出はなされない
  • 非資金的収益の例
    • 引当金の戻し入れ益
    • 収益の未収分
    • 有価証券の評価益
      • 決算時に帳簿価格よりも市場価格の方が高かった場合に計上される収益
      • 評価益の計上にともなって、現金収入は生じない

73. キャッシュフロー計算書

利益

  • 損益計算書と貸借対照表の財務表において計算される
    • 損益計算書
      • 会計期間の利益の増加要因と減少要因とが示され、その期間の利益が計算される
    • 貸借対照表
      • 利益は、資本(純資産)として示される

収支

  • 決算時点の現金の在り高は、貸借対照表に示される
    • 会計期間における現金の入りと出は、損益計算書や貸借対照表には示されない
  • 会計期間の収入(現金の増加)と支出(現金の減少)を知るためには、収支についてまとめられたキャッシュフロー計算書が必要になる

キャッシュフロー計算書
営業活動、投資活動、財務活動の3つの側面から企業の1期間における収支の情況をまとめている

  1. 営業活動(営業活動によるキャッシュフロー)
    • 商品の購入から販売に至るまでの活動
    • 購入、販売に附随する信用取引(掛けや手形による代金のやりとり)や販売、管理に関する活動
  2. 投資活動(投資活動によるキャッシュフロー)
    • 建物、備品などの有形固定資産の購入、売却活動
    • 有価証券の売買や貸し付けに関する活動
  3. 財務活動(財務活動によるキャッシュフロー)
    • 資金調達に関する活動
    • 株式、社債の発行や借り入れ
    • 減資
    • 社債の償還
    • 借人金の返済

72. 利益と収支

利益と収支

  • 企業の目的は「儲けること」、すなわち「利益の獲得」である
  • 「儲け・利益」は、収益から費用を差し引いた残りとして計算される
    • 収益 = 企業が営業活動から得たもの(儲けのプラス要素)
      • 収益が生ずると、現金や売掛金などの資産が増加
      • 収益を得るためには、現金や商品などの資産が減少
    • 費用 = 収益を得るために犠牲となったもの(儲けのマイナス要素)
    • 利益 = 企業の資産の純増加として示されるもの
  • 利益が計上されると、利益の額に等しい額の純資産が増加するが、利益の額に等しい額の現金が増加するわけではない
    • 現金の増加は「収入」、現金の減少は「支出」
    • 収入と支出との差額は「収支」

利益と収支の例

  • 商品を100円で購入し、代金を現金で支払う
      ↓ 100円の現金を支払う
    その商品を120円で掛け売りする
      ↓ 売上120円 - 売上原価100円
    利益は20円になる
      ↓ 掛け売りのため、現金の入りは0円
    収支は△(マイナス)100円となる
  • 利益は「購入時点の価値」と「販売時点の価値」との差額として計算される
    利益 収支
    売上高 120
    売上原価 100
    収支(商品の販売) 0
    支出(商品の購入) 100
    20 △100

利益と収支の違い

  • 利益は、営業活動の成果を示す
  • 収支は、現金の「入り」と「出」との差額として計算され、現金の増加、減少の結果を示す
  • 期間利益計算と発生主義によって規定される近代会計においては、利益と収支とが一致しないことがほとんどである

71. 損益計算書の表示原則

総額主義

  • 収益と費用の総額を表示し、後に利益(損失)を表示するもの
  • 利益の獲得過程を相殺することなく表示するため、企業の経営活動が網羅的に示され、活動規模や利益率などの情報がもたらされる
  • 売上、売上原価、販売費および一般管理費は、企業の主たる営業活動によって生ずる収益と費用であって、対応関係にある
  • 収益と費用は、企業の経営活動を判断する際に最も重要な要素であることから、重要性の乏しいものを除き、総額主義によって表示しなければならない

純額主義

  • 対応関係にある同種の「収益」と「費用」とを相殺し、その差額たる「利益」のみを表示するもの
  • 企業の経営活動の結果である「利益」のみを明示することができるが、その獲得過程は示されない
  • 損益計算書においては、重要性の低い項目など、利益の明示を優先すべき項日こついては純額で表示される
    • 運用益の獲得を目的とする売買目的有価証券は、銘柄の違いは重要ではないことから、「売却益と売却損」「評価益と評価損」を相殺し、純額で表示される
    • 売買目的以外の有価証券の売却損益や、固定資産の売却損益などは、対応関係にないため、相殺は行えない

当期業績主義

  • 損益計算書において、当期における企業の経営活動の結果を示す期間利益を表示しようとするもの
    • 期間利益 = 営業活動や財務活動など、企業が継常的に行う活動
  • 企業の正常な経営活動の結果を示す指標として「経常利益」が表示される
    • 経常利益は臨時的、偶発的な利得や損失の影響を受けないため、当期における経営活動を判断する指標となる
    • 企業の期間比較を行うときにも利用される

包括主義

  • 損益計算書において、当期に生じたすべての「収益、費用、利得、損失」を表示し、当期における「純利益」を表示しようとするもの
  • 臨時的、偶発的な利得や損失を反映した「税引前当期純利益」、そこから法人税等を控除した「当期純利益」が表示される
    • 税引前当期純利益や当期純利益は、企業の正常な経営活動の結果を判断するには適当ではないが、資本(純資産)の増減額を示す最終的な利益である
  • 現在の損益計算書は、基本的には包括主義にもとづいている
    • 区分表示を行うことで、「当期業績主義」と「包括主義」の双方の利点を取り入れている

70. 損益計算書の表示区分

利益計算

  • 損益計算書では、収益、費用、利得、損失の源泉によって、「営業利益計算」、「経常利益計算」、「純利損益計算」の3つの区分をもって表示する
    • 営業利益計算 → 営業利益
    • 経常利益計算 → 経常利益
    • 純利益計算 → 当期純利益

営業利益計算

  • 「売上」「売上原価」「販売費および一般管理費」が表示される
  • 企業の主目的である営業活動(本業)の成果と犠牲を、対応表示することによって、その結果である営業損益が示される
  • 営業利益計算の項目
    • 売上高
      • 企業の主目的である営業活動において、商品、製品、サービス等の販売によって獲得した収益
    • 売上原価
      • 販売した商品の取得原価、製品の製造原価
      • 売上と売上原価とは直接的な対応関係にあって、その差額は「売上総利益」として表示される
      • 企業が2つ以上の営業を目的とする場合には、売上・売上原価・売上総利益を、営業ごとに分けて表示する
    • 販売費および一般管理費
      • 企業の主目的たる営業活動において要した費用のうち、売上原価に算入されないもの
    • 販売費
      • 商品や製品の販売に直接に要した費用
      • 販売手数料
      • 運送料
      • 広告宣伝費
      • 保管料
    • 一般管理費
      • 販売に直接には関係しないが、企業の営業活動において不可欠の、経常的に発生する費用
      • 給料、賃金
      • 法定福利費
      • 水道光熱費
      • 減価償却費

経常利益計算

  • 財務活動や営業外活動によって生ずる「営業外収益」と「営業外費用」が表示される
  • 営業利益計算の区分で示される「営業利益」に、「営業外収益/営業外費用」を加減することによって、企業の経常的な活動の結果である「経常利益」が示される
  • 経常利益計算の項目
    • 営業外収益・営業外費用(財務活動)
      • 受取利息
      • 支払利息
      • 社債利息受取配当金
      • 売買目的有価証券の有価証券売却損益や評価損益
  • 営業外活動
    • (不動産業を除く)不動産の賃貸や仲介による賃貸料や受取手数料
    • そのために要した諸費用

純利益計算

  • 臨時的、偶発的な出来事によって生ずる「特別利益」および「特別損失」と、「法人税等」とが表示される
  • 経常利益計算の区分で示される「経常利益」に、「特別利益/特別損失」を加減することによって、最終的な利益である「当期純利益」が示される
  • 純利益計算の項目
    • 特別利益・特別損失
      • 固定資産の売却損益や除却損
      • 災害損失
      • 過年度損益修正
  • 税効果会計の手続き
    • 損益計算書では、一時差異にかかわる税額が法人税等調整額として計上される

法人税の捉え方
法人税等を費用とするか否かは、意見の分かれるところである

  1. 利益を配当の源泉と捉える場合、利益を企業の資本(純資産)の増減額と捉える場合
    • 税の支払いによって、配当の源泉となる処分可能利益が減少するため、法人税等は費用の一項目となる
  2. 法人税等を利益の控除項目と捉える場合
    • 法人税等の税額は、収益、費用(および利得、損失)の差額である利益額にもとづいて算定されるため、費用や損失と区別して、利益の控除とする
  3. 利益を、企業の経営活動の良否を判断する指標と捉える場合
    • 税額は、企業の経営努力を直接的に反映するものとはいいがたい
    • 収益に対応する犠牲としての期間費用とは区別すべきである
    • 臨時的、偶発的な出来事によって生ずる特別損失にも該当しない
  4. 税効果会計の場合
    • 法人税等を費用とする
  5. 資本主論や代理人論の場合
    • 法人税等もその他の費用も同様に、資本主に帰属する持ち分を減らす費用と捉える
  6. 企業主体論の場合
    • 法人税等を費用と捉える
  7. 企業体論の場合
    • 法人税等を国などに帰属すべき利益の分配と捉える

69. 利益の種類

利益の種類

青 = 収益および利益、赤 = 費用および損失

売上高
売上総利益 売上原価
営業利益 販売費および一般管理費
営業利益 営業外収益
経常利益 営業外費用
経常利益 特別利益
税引前当期純利益 特別損失
当期純利益   ← 法人税。住民税、および事業税

売上総利益(租利)

  • 売上総利益 = 売上 - 売上原価
  • 「売上」から「売上原価」を控除した額
  • 企業の主目的である営業活動(生産活動や販売活動、つまり本業)の結果を示す最も単純な指標
  • 広告宣伝費や人件費等が考慮されていないことから、営業活動の良心を判断する指標としては「営業利益」の方を用いることが多い

営業利益

  • 営業利益 = 売上総利益 - 販売費および一般管理費
  • 営業利益 = 売上 - 売上原価 - 販売費および一般管理費
  • 「売上総利益」から「販売費および一般管理費」を引いた額
  • 企業の主目的である営業活動による売上から、これに対応する費用である「売上原価」と「販売費および一般管理費」とを控除した額
  • 企業の主目的たる営業活動(本業)の結果を示す指標

経常利益(期間利益)

  • 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
  • 経常利益 = 営業利益 + 営業外活動による損益
  • 「営業利益」に「営業外収益」と「営業外費用」を加減した額
  • 企業の主目的である営業活動(本業)の結果と、営業外活動(財務活動やその他の経常的な活動)の結果を総合的に示す指標
  • 企業が経常的に行う経営活動の結果を判断する指標
  • 企業の正常な活動の良否を判断する際に用いられる

税引前当期純利益

  • 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
  • 税引前当期純利益 = 経常利益 ± 臨時的、偶発的な利得、損失
  • 「経常利益」に「特別利益」と「特別損失」を加減した額
  • 企業の経常的な経営活動に加えて、臨時的、偶発的な利得、損失や過年度損益修正を反映し、当期における企業の資本(純資産)の増減額を示す最終的な指標

当期純利益

  • 当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税、住民税、および事業税
  • 「税引前当期純利益」から「法人税、住民税、事業税」を控除した額

68. 企業の経営活動と損益の源泉

企業が経常的に行う経営活動

  • 生産活動
  • 販売活動
  • 財務活動
  • その他の経常的活動

損益の源泉

  • 生産活動や販売活動
    • 企業の主目的たる営業活動
    • 本業
      • 原材料の購入
      • 製品の製造
      • 販売、商品の購入・販売
      • サービスの販売
      • 広告宣伝、人事管理といった補助的な活動
  • 財務活動
    • 企業の資金調達に関わる活動
    • 資金の貸付・借入
    • 社債の発行・償還
    • 有価証券の売買
    • その他の経常的活動(企業が本業以外に行う活動)
      • 不動産の賃貸や仲介(不動産業を除く)
  • 臨時的、偶発的な出来事(取引)
    • 固定資産の売買
    • 売買目的以外の有価証券の売買
    • 災害による損失

損益計算書の表示区分

  • 経常的活動による収益および費用、更にその源泉が営業活動(生産活動や販売活動などの本業)か、営業外の活動(財務活動やその他の経常的活動)かによって区分表示される
    区分 損益計算書の表示項目 算定される利益 損益の源泉
    営業利益
    計算
    Ⅰ 売上高
    Ⅱ 売上原価
    売上総利益 主たる営業活動
    (生産活動、販売活動)
    経済的
    活動
    Ⅲ 販売費および一般管理費 営業利益
    経常利益
    計算
    Ⅳ 営業外収益
    Ⅴ 営業外費用
    経常利益 営業外活動
    (財務活動、その他の経常的活動)
    純利益
    計算
    Ⅵ 特別利益
    Ⅶ 特別損失
    税引前当期純利益 臨時的、偶発的な出来事
    (法人税、住民税、および事業税) (当期純利益) (利益額からの控除)
  • 臨時的、偶発的な出来事を源泉とする特別利益・特別損失と、企業の正常な活動(経常的活動)を源泉とする収益・費用を区別して表示する
    • 特別利益・特別損失は、企業の純資産額に影響を及ぼすが、企業の正常な活動を反映するとは言い難い

67. 損益計算書の様式

勘定式

  • 収益(および利得)、費用(および損失)、当期純利益(または当期純損失)を借方と貸方とに対照表示する様式
  • 複式簿記の構造を理解しやすい
    損益計算書(勘定式)
    売上原価
    販売費および一般管理費
    営業外費用
    特別損失
    法人税、住民税、および事業税
    登記純利益
    売上高
    営業外収益
    特別利益

報告式

  • 収益、費用(および利得、損失)をその発生源泉別に区別して記載し、それぞれの段階における利益額を明示する様式
  • 表示の明瞭さ、情報の有用さから、一般的に採用される
    損益計算書(報告式)
    Ⅰ 売上高
    Ⅱ 売上原価
       売上総利益
    Ⅲ 販売費および一般管理費
       営業利益
    Ⅳ 営業外収益
    Ⅴ 営業外費用
       経常利益
    Ⅵ 特別利益
       税引前当期純利益
    Ⅶ 法人税、住民税、および事業税
       当期純利益

66. 収益と費用の捉え方

動態論からの捉え方

  • 収益と費用 = 経営活動の成果と犠牲
  • 期間利益計算を重視
  • 損益計算書が重要な役割を果たし、貸借対照表は、調整項目を収容するものとして位置づけられる
  • 期間利益の構成要素たる収益(期間収益)と費用(期間費用)とは、経営活動の成果と犠牲を示すものとして、独立的に定義されなければならない

新静態論、資産負債アプローチからの捉え方

  • 経済的資源の情況を重視
  • 貸借対照表が重視され、損益計算書は資本(純資産)の変動原因を示すものとして位置づけられる
  • 各要素の定義
    1. 収益と利得
      • ともに資本(純資産)の増加原因
      • 従属的に定義
    2. 費用と損失
      • ともに資本(純資産)の減少原因
      • 従属的に定義
    3. 資本(純資産)の増減
      • 資本取引以外の取引によって資本の増減をもたらすもの
      • 資本金の追加受け入れや払い出しといった資本取引によっても生ずるため
    4. 利益の額
      • 配当可能額を算定する根拠
      • 経営活動の原資である「資本」と、それによって得た「利益」とは、資本維持の観点からは、厳密に区別しなければならない
      • 配当は「利益」を源泉として行わなければならない
      • もし「資本」から配当を行えば、企業は経営活動の原資を失い、継続企業としての能力を失う
    5. 収益(利益のプラス要素)の認識基準
      • 実現主義を適用する
      • 客観性や確実性を求める
      • 資金性(貨幣性資産の受領)を要件のひとつとする

静態論からの捉え方

  • 債権者保護を重視
  • 貸借対照表が重視され、収益や費用は資本の変動原因を示すものとして位置づけられる
  • 企業の弁済能力(資産の担保性や実在性)が重視されるため、収益・費用・利益にはほとんど関心が向けられない

会計の目的と利益の変化

  • 会計の目的によって、収益や費用の定義や認識基準は異なり、利益の額も変化する
  • 維持すべき資本を「名目資本」「実質資本」「実体資本」のいずれとするかによって、資本と利益との境界、収益と費用の認識、利益の額は変化する
  • 利益の額を変化させる会計の目的
    1. 配当可能額の算定
      配当可能額の算定を目的として計算される利益額は、資金性が重視されることから、比較的小さくなる傾向がある
    2. 将来における経済的資源の流入、流出の判断のための情報提供
      情報提供を目的として計算される利益額は相対的に大きくなる傾向がある
    3. 企業の経営活動の良否の判断