88. 連結決算の原則と手続き

連結決算日

  • 年次連結財務諸表は1年、中間連結財務諸表は6か月を会計期間とし、親会社の会計期間にもとづき、年1回、一定の日を連結決済日とする
  • 連結決算日(子会社の決算日と親会社の決算日)が同一ではない場合、子会社は連結決済日において正規の決算に準ずる合理的な手続きをもって、決算を行う必要がある
  • 連結貸借対照表や連結損益計算書は、同一日の個別貸借対照表や個別損益計算書をもとに作成されたものでなければならない
    → 同一日でないと、連結会社全体の財政状態や経営成績を正しく表示することができない
  • 決算日の差異が3か月を超えない場合は、子会社の正規の決算を基礎として連結決済を行うことが認められる
    • 決算日が異なることによって生ずる連結会社間の取引に関わる会計記録の重要な不一致については整理する必要がある
    • 例)
      親会社の決算日後に、子会社が決算日をむかえ、かつ親会社の決済日と子会社の決算日との間に、親会社が子会社に商品を販売した
        ↓
      親会社側では、この販売に関わる取引は、財務諸表に反映されていないが、子会社側では反映されているという状況が生ずる
        ↓
      子会社側では、この取引の記録を消去する処理が必要となる

親会社及び子会社の会計処理の原則・手続き

  • 各連結会社は、それぞれ固有の環境下において経営活動を行っているため、会計処理および手続きに関しては、各社がその環境に合致した方法を選択することが合理的である
  • 連結財務諸表は、親会社と子会社をひとつの組織体とみなし、その全体的な財政状態および経営成績を把握するために作成されるものである
    → 同ーの環境下で行われた同ーの性質の取引などに適用する会計処理方法および手続きは、原則として連結会社において統一する

複数の会計処理と連結決算

  • 財務諸表の作成
    • 「減価償却では定額法、定率法などが認められている」など、同様の取引について複数の処理方法が認められている場合がある
    • 複数の処理方法が認められている理由は「企業の状況を最も適切に示す数値をもたらす処理方法が用いられるべき」という考え方にもとづいている
  • 連結会社の会計処理
    • 親会社では定額法が用いられ、子会社では定率法が用いられている場合、「定額法による親会社の減価償却費額」と「定率法による子会社の減価償却費額」とは性格を異にする数値であり、これらを合計することには問題がある
    • 定額法に統一する際、どちらを選択すべきか?
      • 親会社に適した「定額法による数値」と子会社に適さない「定額法による数値」を合算
      • 親会社に適した「定額法による数値」と子会社に適した「定率法による数値」を合計

87. 連結財務諸表の一般基準

連結財務諸表原則の一般基準

  • 連結の範囲、連結決算日、親会社と子会社の会計処理の原則・手続きを示している

連結の範囲

  • 親会社は原則として、すべての子会社を連結の範囲に含めて連結財務諸表を作成しなければならない
  • 親会社:会社間の支配従属関係において、他の会社を支配している会社
  • 子会社:支配されている会社
  • 子会社の範囲が異なると、作成される連結財務諸表の内容も異なるため、子会社に該当するかどうかの決定基準「連結の範囲」が問題となる

連結の範囲の決定基準

  • 支配力基準
    • 会社(親会社)が他の会社を支配しているかどうかによって決定する
    • 他の会社の財務・営業、または事業の方針を決定する機関(株主総会や取締役会などの意思決定機関)を実質的に支配しているかどうか、によって連結の範囲を決定する
  • 持ち分基準(持ち株基準)
    • 議決権つき発行済み株式の親会社の持ち分比率(持ち株比率)を判断基準とする
    • 長所
      • 支配の度合いが数値によって客観的に判断可能である
    • 短所
      • 株式保有以外の手段による企業支配が見逃される
      • 支配従属関係にあるにも関わらず、意図的に持ち分比率を下げて連結の範囲から除外することによって、連結数値の操作が可能となる
  • 会計では支配力基準が採用されている
    • 連結財務諸表に支配従属関係にもとづく経済的実態を反映させることができる
    • 恣意的な数値操作を防ぐことができる

支配力基準

  • 支配力基準では、支配力の不在が示されない限り、以下のようなケースは子会社に該当する
    1. 他の会社の議決権の過半数(50%超)を実質的に所有している場合
      • 議決権のある株式、または出資の名義が役員など、会社以外となっていても、会社が自己の計算で所有している場合は、会社が実質的に所有しているものとみなす
    2. 他の会社の議決権の所有割合が50%以下であっても、高い比率(40%以上)の議決権を有しており、かつ当該会社の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合
      • 議決権を行使しない株主の存在や、役員・関連会社などの協力的な株主の存在によって、株主総会で議決権の過半数を継続的に占めることができると認められる場合
      • 役員・従業員、あるいはかつてそうであった者が取締役会の構成員の過半数を継続して占めていると認められる場合
      • 重要な財務、および営業の方針決定を支配する契約などが存在する場合
    3. 子会社が他の会社を支配している場合(孫会社の場合)
      • 親会社の支配下にあると考えられるため、子会社とみなされる

連結の範囲に含まれないケース

  • 更生会社、整理会社、破産会社などであって、他者の管理下におかれるなど、有効な支配従属関係が存在せず、組織の一体性を欠く会社は子会社に該当しない
  • 子会社であっても、支配が一時的な場合や、連結することによって利害関係者の判断を著しくにぶらせる恐れのある場合は、連結の範囲に含めない
  • 子会社であっても、規模が小さく、重要性が乏しいと判断される場合は、連結の範囲に含めないことができる

連結の会社と株主

  • 連結子会社:連結の範囲に含まれる子会社
  • 連結会社:連結の範囲に含まれる子会社+親会社
  • 非連結子会社:連結の範囲に含まれない子会社
  • 少数株主:親会社による子会社株式に対する保有割合が100%に満たない場合、子会社における親会社以外の株主
  • 連結決算上、少数株主に帰属する子会社の純資産で、連結の対象となる部分は、親会社に帰属する部分とは別に「少数株主持分」として処理される
  • 少数株主持分は、連結貸借対照表の純資産の部において、株主資本などとは区別して表示される

連結財務諸表における実質優先思考(サブスタンス・オーバー・フォーム)

  • 形式(フォーム)よりも実質(サブスタンス)を優先(重視)する考え方
  • 企業集団を構成する各企業は、(法的)形式上はそれぞれ独立の存在だが、(経済的)実質上はひとつになって活動しているため、連結財務諸表を作成する
  • 連結の範囲には、持ち分基準(形式)ではなく、支配力基準(実質)を採用する

86. 連結財務諸表の一般原則

連結財務諸表原則における連結財務諸表作成に関する規範的原則

  • 一般性の原則
    • 真実性の原則:連結財務諸表は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない
    • 個別財務諸表基準性の原則:連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない
    • 明瞭性の原則:連結財務諸表は、企業集団の状況に関する判断を誤らせないよう、利害関係者に対し、必要な財務情報を明確に表示するものでなければならない
    • 継続性の原則:連結財務諸表作成のために採用した基準及び手続は、毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない
  • 重要性の原則
    • 会計上の重要性に乏しい軽微なものは、本来の厳密な会計処理ではなく簡便に処理してかまわない
    • 重要性の低い取引に関して簡便な会計処理を行っても、それは正規の簿記の原則に違反したものとはならない
    • 子会社であって、その資産、売上高等を考慮して、連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものは、連結の範囲に含めないことができる

企業会計原則と同義の原則

  • 以下の連結財務諸表原則は、企業会計原則における同名の原則と同様の意義を持つ
    • 真実性の原則
    • 明瞭性の原則
    • 継続性の原則
    • 重要性の原則

個別財務諸表基準性の原則

  • 連結財務諸表は、企業集団を構成する各社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるべきである
  • 作成の際、個別財務諸表は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されるべきである
  • 個別財務諸表が、一般原則の要請するものに反して、財政状態、および経営成績を適正に表示していない場合には、重要な影響を及ぼさないケースを除き、適正に修正して連結決算を行う必要がある

85. 連結財務諸表の必要性

連結財務諸表の必要性

  • 企業規模の拡大等にともなって、現代の企業活動は、個々の企業が単独で経済活動を営むよりも、支配従属関係にある親会社と子会社とが企業集団を形成し、相互に連携しつつ経済活動を展開する方が多くなっている
  • 例えば製造業では、各社で役割を分担し、連携して企業を行う
    • 原材料の入手を担当するA社
    • 原材料を部品に加工するB社
    • 部品から製品を製造するC社
    • 完成した製品を販売するD社
  • A社からD杜までの4社が一体となって、ひとつの事業を行っている(企業全体として相互に連携して経済活動を行っている)
      ↓
    「個別財務諸表」が提供する個々の企業の会計情報からは、企業全体としての成否の判断や将来性の予測が困難である
      ↓
    経済的事実と利害関係者への情報提供から考えて、この集団を単一の組織体とみなすべきである
      ↓
    企業全体の財務諸表を作成することが、むしろ合理的である

個別財務諸表

  • 法的に独立した個々の企業が作成する財務諸表
  • 企業集団の一部たる各社の会計情報を提供するにとどまる
  • 企業集団全体の会計情報を提供するものではない

連結財務諸表(連結計算書類)

  • 支配従属関係にある2つ以上の会社や事業体からなる企業集団を単一の組織体とみなし、親会社が当該企業集団の財政状態、および経営成績を総合的に報告するために作成する財務諸表
  • 以下のような規則で、財務諸表の作成、および表示方法が定められている
    1. 連結財務諸表原則
    2. 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則)
    3. 会社法
    4. 会社計算規則
  • 連結財務諸表の種類
    1. 連結貸借対照表
    2. 連結損益計算書
    3. 連結株主資本等計算書
    4. 連結キャッシュフロー計算書

84. 日本の会計制度における資金計算書の変遷

資金繰表

  • 資金繰表による資金情報の開示は、1953年の大蔵省令「有価証券の募集又は売出の届出等に関する省令」のもと、有価証券報告書等において行われていた
  • 資金繰表における資金概念 = 現金預金

資金収支表

  • 資金収支表による資金情報の開示は、1986年に改正された「有価証券の募集または売出の届出などに関する省令」によるものであった
  • 資金収支表における資金慨念 = 現金預金に一時所有の有価証券を加えたもの

キャッシュフロー計算書

  • 1998年に設けられた連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準によって、翌1999年に作成が義務づけられた財務表
    • 損益計算書、貸借対照表と同様、財務諸表のひとつとして位置づけられている
    • キャッシュフロー計算書の導入前は、資金繰表や資金収支表(財務諸表の範囲外にあって資金情報を開示する計算書)が用いられていた
  • 現金および現金同等物が資金として扱われる
    • 現金同等物
      • 定期預金や公社債投資信託など、取得日から満期日または償還日までの期問が3か月以内の短期投資
      • 即時に換金が可能なもの
      • キャッシュフロー計算書の作成時点と換金時点で額に大きな変動がないもの
  • 資金繰表とキャッシュフロー計算書の資金概念
    • 資産の価格変動の影響がほとんどなく、資産評価の問題を伴わない点では共通している
      → 日本の資金計算書は一貫して、即時に換金が可能な資産を構成要素とする資金慨念を採用してきた
    • 資金収支表において資金の範囲に含まれていた一時所有の有価証券は、キャッシュフロー計算書では、現金同等物から除外されている
      → 一時所有の有価証券は、価格変動の影響は大きいものの、即時に換金が可能であるため除外

83. 資金概念

資金の性質の違い

  • 棚卸資産と有価証券
    • 運転資本の構成要素
    • 投資過程にある資産
    • 即時に換金が可能という点では異なる
  • 有価証券
    • 証券市場において取引される
    • 貸借対照表価額で売却できるとは限らない
    • 即時に換金が可能である
  • 棚卸資産
    • 確実に売却されるとは限らない
    • 不良在庫として損失処理されることもある

当座資金

  • 即時に換金が可能な資産のみを資金の範囲に含める資金概念
  • 現金および短期的な金銭債権から、1年以内に返済しなければならない金銭債務を差し引いたもの
    • 短期的な金銭債権 = 売掛金や受取手形のような売上債権および市場において即時に売却しうる有価証券
    • 1年以内返済の金銭債務 = 買掛企や支払手形のような仕入債務および短期借入金
  • 当座資金 = 即時に換金が可能な資産の余剰

支払資金

  • 当座資金から短期借入金を差し引いた資金概念
    • 短期借入金は1年以内に返済しなければならないが、借入は財務活動の一環である
  • 現金と営業活動に関する金銭債権の合計から、営業活動に関する金銭債務を差し引いたもの
    • 営業活動に関する金銭債権 = 売掛金や受取手形
    • 営業活動に関する金銭債務 = 買掛金や支払手形
  • 営業活動に附随する金銭債権や金銭債務は、営業活動において自然に回転する(買掛金や売掛金の回収によって得られた現金によって支払われる)
    → 支払い資金は回収過程にある(回収されれば現金になる)資産の余剰を示している

82. 運転資金計算書とキャッシュフロー計算書

運転資金計算書

  • 流動資産に分類される棚卸資産や有価証券など
    • 短期に現金に変わる可能性の高い資産
    • 売却されて現金、または金銭債権になる資産
    • 営業活動における資金の「回収過程にある資産」ではなく、「投資過程にある資産」である
    • 貸借対照表上の価額は、売却によって得られる現金の額ではなく、将来に売却されたときのおおよその現金収入額を示している
  • 投資過程にある資産には、資産評価の問題が生ずる
      ↓
    運転資本は、投資過程の資産を資金の範囲に含める
      ↓
    運転資本は、企業の支払能力の評価基準として適当ではない

キャッシュフロー計算書

  • 現金および現金同等物を資金の範囲とする
  • 棚卸資産や有価証券などの変動は、資金の範囲に含めない
    • 資産の増加 → 現金の用途
    • 資産の減少 → 現金の調達
  • 現金以外の貸借対照表項目の変動は、現金の調達または現金の用途として捉える
      ↓
    運転資本のように、資産評価の問題を伴わない
      ↓
    現金の変動をまとめたキャッシュフロー計算書のほうが、支払い状況を明確にしている

キャッシュフローと運転資本の比較

  • 資金の範囲
    • キャッシュフロー = 現金および現金同等物
    • 運転資本 = 棚卸資産や有価証券など投資過程の資産を含める
  • キャッシュフロー
    • 過去の支払い状況に関しては、運転資金計算書よりも詳細に示すことができる
    • 将来の支払能力の評価に関しては、運転資金計算書よりも劣る
  • 運転資本
    • 実際に現金になるかという不確実性がある
    • 将来に現金になる資産の余剰を示すことによって、企業の支払能力を表す

81. 運転資金計算書

運転資本

  • 流動資産から流動負債を差し引いたもの(広義の意味)
    • 通常、流動資産は流動負債よりも多い
      → 運転資本 = 流動資産によって流動負債が支払われた残り
  • おおよそ1年以内に現金化される資産の余剰を意味している
    • 流動資産、流動負債には、正常営業循環基準、1年基準が適用される
    • 流動資産
      • 購入、販売、販売代金の回収という営業循環にある資産
      • 1年以内に換金される資産
    • 流動負債
      • 仕入債務、営業活動にかかわる金銭債務など、営業循環において支払いがなされる負債
      • 1年以内に支払い期日が到来する負債
    • 運転資本 = 1年以内に支払いにあてることができる
      → 支払能力の余裕を意味している

流動比率

  • 財務諸表の数値を用いた比率分析において、企業の安全性を測るもの
  • 運転資本を、支払能力の判断基準にした比率

運転資金計算書(運転資本運用表)

  • 運転資本を資金の範囲とする資金計算書
  • 流動資産、流動負債以外の固定資産、固定負債、資本の変動が運転資本の変動にどのような影響を与えたのかを示す計算書
    • 貸借対照表の貸方の総額に変化がない場合
      • 固定資産の減少 → 運転資本の増加
      • 固定資産の増加 → 運転資本の減少
    • 固定資産の額に変化がない場合
      • 固定負債や資本の増加 → 運転資本の増加
      • 固定負債や資本の減少 → 運転資本の減少
  • 運転資金計算書だけでは、運転資本の構成要素の変動を知ることはできない
    • 運転資金明細書がなければわからない
  • 運転資本の構成要素は、経営活動の自然な資金の回転によって生み出され、運転資本はその余剰である
    • 購入によって生じた買掛金
      → 販売によって生じた売掛金の回収によって得た現金によって支払われる
    • 買掛金の支払いのために調達した短期借入金
      → いずれは売掛金の回収によって得た現金によって支払われる

運転資金計算書まとめ

  • 固定資産、固定負債、資本の変動が運転資本の変動にどのような影響を与えたのかを示すもの
  • 企業の財務安全性に関する示峻を得ることができる
    • 運転資本の増加が、安全な資金調達によるものとなっているか?
      • 安全な資金調達 = 1年超の将来に返済期日を迎えるもの
    • 固定資産の購入が、危険な運転資本によるものとなっていないか?
      • 危険な運転資金 = 1年以内の返済にあてるべき流動資産で構成されたもの

運転資金計算書の例

例1. 運転資金計算書 (間接法)
税引前利益 (経常利益) 55
減価償却費 80
税金の支払い △22
営業活動による運転資金の増減 113
建物の増加 △500
投資活動による運転資金の増減 △500
借入金の返済 △100
増資 500
財産活動による運転資金の増減 400
運転資金の増減 13
期首運転資金 480
期末運転資金 493
例2. 運転資金明細書 (間接法)
X1年度 X2年度 増減
現金 100 93 △7
売掛金 200 250 50
商品 300 200 △100
有価証券 30 50 20
買掛金 (150) (100) 50
合計 480 493 13

80. 支払能力の評価

企業の支払能力

  • 企業が期日に負債などの支払いを行えなえるかどうか
  • 返済期日までに、返済に必要な現金を調達することができるか
    • 借入能力
    • 所有する資産の処分価値
    • 原価節減能力
    • 配当引き下げの弾力性
    • 増資によって資金を訓達する能力
  • かつては、運転資本で評価していた
    • キャッシュフロー計算書が制度化される前には、運転資本を資金の範囲とする計算書が利用されていた

キャッシュフロー計算書

  • 過去における現金(および現金同等物)の変動を示す
  • 企業がどのようにして現金を調達し、何に使ったかを示す
  • 将来における支払い能力は示さない
  • 支払い能力を評価するための材料として、過去のキャッシュフローの状況を知ることが利用目的となる

79. 資金計算書の役割

企業の収益力

  • 利益の多寡、または利益獲得の効率性として評価される
  • 企業の利害関係者は、企業の収益力に最も関心をよせる
    • 高い収益力は、株主に多くの配当を支払うことを可能にする
    • 経営者にとっては、経営規模の拡大や安定した経営を可能にする
  • 収益力は企業の長期的な支払い能力にも寄与する

企業の支払能力

  • 収益力と同様、利害関係者にとって重要な関心事である
  • 利益があっても、短期的に安定した経営が行えるとは限らない
  • 借入金や買掛金などの負債を期日に返済できなければ、企業は存続することができない
  • 企業は経営において生ずる支払いを、期日に滞りなく行えてこそ、安定した経営ができる

資金計算書

  • 損益計算書と貸借対照表だけでは分からない部分を明らかにするために作成された分析表
  • 利益以外の貸借対照表項目の変化を明らかにするために作成された計算書
    • 利益の変動要因は、損益計算書によって分かるが、利益以外の貸借対照表項目を変化させた要因は、損益計算書と貸借対照表だけでは分からない

資金計算書の役割

  • 貸借対照表
    • 企業の財政状態を示す財務表
    • 企業の支払い状況について、期末時点における結果は知ることができるが、フローの状況は知ることができない
  • 財政状態変動表
    • 貸借対照表の期間変動をまとめた計算書
  • 資金計算書
    • 財政状態変動表をもとに、資金がどのように集められ、どのように使われたかが明らかになるように作成された計算書
    • 「フローの状況を知るための計算書」という役割が求められる