製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金は、条件つき債務に属する
- 製品保証引当金
- 一定期間の修理保証をつけて製品を販売することによって、修理にともなう資源流出が合理的に予想されるものを当期の費用として認識し、それと同時に負債を認識する引当金
- 1年以内の保障部分については「流動負債」
- 1年を超える部分については「固定負債」
- 売上割戻引当金
- 一定数量、または一定金額以上の商品、製品を販売した得意先に対して、割り戻しを行うことによって、合理的に予想される割り戻し額を当期の収益から搾除し、それと同時に負債として認識する引当金
- 割り戻しは次期に行われることから、「流動負債」に区分される
- 返品訓整引当金
- 販売した商品、製品について販売価格で返品を受け入れる特約を結んでいることによって、合理的に予想される返品額を当期の売上
- 総利益から控除し、それと同時に負債として認識する引当金
- 返品は1年以内に行われる場合が多いことから、「流動負債」に区分される
修繕引当金、特別修繕引当金
修繕引当金、特別修繕引当金は、法的な債務ではないが、将来における財産の流出が合理的に予想されることから、会計的負債として認識される
- 修維引当金
- 毎年行われる通常の修繕が、何らかの理由で行われなかった場合において、次期に行われる修繕にかかる資源流出を、当期の費用として認識し、それと同時に負債として認識する引当金
- 「流動負債」に区分される
- 特別修繕引当金
- 数年ごとに定期的に行われる大修繕に備え、大修繕にかかる資源流出を合理的に見積もり、当期に配分される費用を認識し、それと同時に負債として認識する「引当金」
- 次期に修繕が行われる部分については「流動負債」
- それ以外は「固定負債」
- 賞与引当金
- 条件つき債務のひとつ
- 従業員に対する賞与のうち、すでに労務の提供を受けた当期分として負担すべき金額を見積もって費用を認識し、それと同時に負債として認識する引当金
- 給与の後払い分であるが、金額を見積り計算するという点で、未払費用とは性質を異にする
- 「流動負債」に区分される
退職給付引当金
- 条件つき債務のひとつ
- 従業員が将来において退職する際に支払うべき退職給付のうち、すでに労務の提供を受けた当期分として、負担すべき金額を見積もって費用を認識し、それと同時に負債として認識する引当金
- 給与の後払い分であるが、金額と支払い時期を見積り計算するという点で、未払費用とは性質を異にする
- 「固定負債」に区分される
引当金のまとめ
|
貸借対照表の区分 |
法的債務性 |
相手感情の性質 |
例 |
評価性引当金 |
資産の部(控除項目) |
ーーー |
費用 |
貸倒引当金 |
負債性引当金 |
負債の部 |
あり(条件つき債務) |
収益の控除 |
売上割戻引当金 返品調整引当金 |
費用 |
製品保証引当金 賞与引当金 退職給付引当金 |
なし(会計的負債) |
費用 |
修繕引当金 特別修繕引当金 |
特別法上の引当金 |
なし(将来の損失) |
利益留保 |
渇水準備引当金 |
任務積立金 |
純資産の部 |
なし(偶発債務) |
利益留保 |
地震損失引当金 |
負債性引当金の該当条件
- 将来における資源の流出はいまだ確定していないが、その可能性が高いもの
- 流出の金額を合理的に見積もることができるもの
- 流出の原因が、当期においてすでに発生している場合に限り、当期において負債として認識することが認められているもの
負債性引当金、評価性引当金(貸倒引当金)の認識要件(企業会計原則注解より)
- 将来の特定の支出、または損失であること(将来の特定の支出)
- その発生が当期以前の事象に起因していること
- その発生の可能性が高いこと
- その金額を合理的に見積ることができること
引当金の認識
- 「借方項目の費用(○○引当金繰入)」と「貸方項目の負債(○○引当金)」とを同時に認識する
借方
| 貸方
|
○○引当金繰入(費用) |
100,000 |
○○引当金(負債) |
100,000 |
引当金の認識の論拠
- 発生主義にもとづくもの、対応原則にもとづくもの
- 引当金を費用の側面から捉えるもの
- 引当金の論拠となる発生主義
- 広義の発生主義、発生原因主義
- 「当期の収益と因果関係があるものを当期の費用として認識する」という対応原則の考え方が根底にある
- 期間利益計算を適正に行うべく、資源流出と当期の収益とが経済的犠牲と成果との関係にあるのであれば、同じ期に計上すべきである
- 負債性引当金の場合
- 将来の資源流出の原因が発生した時点にで費用を認識し、引当金を計上する
- 評価性引当金の場合
- 資源の流入の取り消し、または損失が発生した時点に費用を認識し、引当金を計上する
- 保守主義にもとづくもの
- 「費用や損失をできるだけ早期に計上しよう」という保守主義を引当金の認識の論拠とする考え方
- 負債と利益留保とを混同することにつながりかねず、利益計算の適正化という点からは妥当とはいいがたい
- 電力事業法にもとづく渇水準備引当金
- 湖水期の収益減少に備えるための利益留保性準備金
- 公益保護の観点から法によって、負債計上を強制されたものであって、会計上の負債とは区別して表示される
- 資源流出の可能性の高さにもとづくもの
- 資源流出の可能性の高さを引当金の認識の論拠とする考え方
- 企業会計原則注解も、将来の資源流出の可能性が高いことを引当金の認識の要件のひとつとしている
- 当期の負債である引当金を認識する際には、資源流出の可能性の高さに加えて、発生主義や対応原則が論拠となる
- 無限に予想される将来の資源流出について、可能性の高さのみによって当期の負債を認識するのは困難であるため
- 利益留保性の準備金との区別が曖昧になりかねないため
- 将来における資源流出の可能性が低いものや、金額の見積りが困難なものは、特別法上の渇水準備引当金等を除き、引当金として認識することは認められない
- 引当金として認められない例
- 地震損失引当金、係争中の事件に関する損害賠償などの偶発債務
- 利益留保性の準備金として、純資産の部の「任意積立金」に計上される(「偶発債務」として貸借対照表の註記事項に記載されるのみ)
減価償却費の計算方法
いずれも取得原価から残存価値を控除した額を費用化する方法だが、各期への配分方法が異なる
- 定額法
- 減価償却費 = ( 取得原価 - 残存価額 ) ÷ 耐用年数
- 費用化される額を耐用年数に渡って定額ずつ配分し、減価償却費を計算する方法
- 定率法
- 減価償却賞 =(取得原価 - 減価償却累計額)× 償却率
- 未償却残高に一定の償却率で減価償却費を乗じて計算する方法
- 償却率は耐用年数にもとづいて定められ、毎年一定である
- 取得してから間もない資産の場合は費用の額が大きく、残存耐用年数が少ない資産の場合は費用の額が小さくなる
- 級数法
- 減価償却費 = ( 取得原価 - 残存価額 ) × ( n - k + 1 ) ÷ ( n ( n + 1 ) ÷ 2 )
※ 耐用年数 n の資産の k 年目の減価償却
- 算術級数を用いて各期に配分する方法
- 取得してからまもない資産の場合は費用の額が大きく、残存耐用年数が少ない資産の場合は費用の額が小さくなる
- 費用の差は定率法ほどは大きくない
- 生産高比例法
- 減価償却費 = ( 取得原価 - 残存価額 ) × ( 当期実際利用量 ÷ 総利益可能量 )
- 耐用年数ではなく、利用割合によって計算する方法
- 適用対象となる資産
- 総利用可能量をあらかじめ推定できるもので、かつ減価の主な原因が利用によるもの
- 航空機や自動車など
棚卸資産(商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品等)
- 棚卸資産 = 企業の通常の営業活動において、販売を目的として保有され、短期間に費消部分を物量的に把握できる資産
- 流動資産に分類される
- 棚卸資産の種類
- 販売のために他企業から購入した商品
- 自ら生産した製品
- 生産の途中段階の半製品(生産途中でも外部に販売できるもの)
- 仕掛品(生産途中では外部に販売できないもの)
- 生産のために短期間に費消される原材料、消耗品(貯蔵品)
- 販売活動や一般管理活動のために費消される消耗品(貯蔵品)
- 棚卸資産の評価・計上
- 基本的には取得原価で評価される
- 費用配分の原則にもとづいて、費消分が当期の費用配分される
- 未費消分は、資産のまま計上され、次期以降の費用に配分される
- 当期に費消された棚卸資産の額を計算するためには、棚卸資産の物量と単価とを計算する必要がある
- 物量は、継続記録法(帳簿棚卸法)または実地棚卸法によって把握される
- 単価は、個別法、先入先出法、後入先出法、平均法、売価還元法などによって把握される
棚卸資産の物量を測る方法
- 継続記録法(帳簿棚卸法)
- 商品有高帳などの帳簿記録によって、棚卸資産の費消分と期末在庫分とを継統的に把握する方法
- 実地棚卸法
- 決算時においてなど、定期的に行われる実地棚卸にもとづき、以下の式で当期費消分を間接的に把握する物量計算の方法
- 期首数量 + 当期取得数 - 期末数量 = 当期費消数量
- いずれの方法によっても期末棚卸資産の数量は一致するはずである
- 実際には、移動や展示による破損、紛失などによって、実地棚卸法の数の方が少なくなる
- 不足分は、棚卸減耗として当期の費用に含められる
棚卸資産の単価を計る方法
- 個別法
- 取得原価が異なる棚卸資産ごとに区別して把握し、個々の実地原価によって、費消分および期末在庫分の単価を算定する方法
- 先入先出法
- 最も古く取得したものから費消し、期末在庫分は最も新しく取得したものであるとみなす方法
- 後入先出法
- 最も新しく取得したものから費消し、期末在庫分は最も古く取得したものであるとみなす方法
- 平均法
- 取得した棚卸資産の平均単価を計算する方法
- 移動均法(取得ごとに平均単価を計算する)
- 総平均法(一定別間に取得した棚卸資産の総価額を総数量で割る)
- 売価還元法
- 期末棚卸資産の売価の合計額に原価率を乗じて、取得原価を把握する方法
- 強制評価減
- 期末棚卸資産は基本的には取得原価で評価されるが、時価が取得原価より著しく下落し、回復の見込みがあると認められない場合には、時価によって評価しなければならない
- 切り下げられた場合の評価損は、営業外費用、または特別損失として計上される
- 低価法
- 時価が取得原価まで回復する見込みがある場合や、時価の下落が著しくない場合であっても、時価と取得原価とのいずれか低い
- 価額によって評価することが認められている
- 強制評価減とは異なり、企業は任意で適用することができる
- 適用した場合には、以後継続して行なわなければならない