雑学

35. 予算

国の予算

  • 財政活動は、 1年間を会計年度とする予算に基づいて行われる
  • 日本では、4月1日から翌年の3月31日までが「一会計年度」である

予算の構成

  1. 一般会計予算
    • 内閣で1年間の歳出と歳入の原案が作成され、国会で承認を受けて執行される(財政民主主義の原則)
    • 一般会計には、そのときの経済の状況や経済政策の特色が現れる
      • 例)
        国債の発行による歳入の増加
        国債の利払い、償還のための国債費の割合が増大
        社会保障関係費の増加 → 高齢化社会
        地方交付税交付金の増加 → 地方格差の解消
        公共事業関係費の増加 → 景気対策
  2. 特別会計予算
    • 以下のときに限り、財政法のもとで設置することができるもの
      • 特定の事業を行なう場合
      • 特定の資金を保有してその運用を行う場合
      • その他、特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合

財政投融資計画(第二の予算)

  • 重要産業の育成、産業基盤(道路・港湾など)の整備、住宅建設の促進、農林水産業や中小企業の助成を行うための資金
  • 財投債や財投機関債・政府保証債を発行して調達したり、簡易保険積立金などを政府関係機関や地方公共団体などに投資や融資して資金を集める
  • 財投債に充てられる郵便貯金・厚生年金・国民年金の積立金
    • 以前は、旧大蔵省資金運用部を通して投資や融資されていた
    • 近年は、各機関が自主的に運用できるようになった
  • 公共事業
    • 以前は、生産関連社会資本(公園、上下水道、教育施設、病院、道路など)の整備がメインであった
    • 近年は、生活関連社会資本の充実や、情報通信分野の成長産業育成のための基盤整備が求められている
    • 近年は、公共事業の見直しも行われている
      • 環境への影響を事前に調査する「環境アセスメント」の導入
      • 不要な公共事業を見直す「時のアセスメント」制度の導入

参考:財務省 – 予算

34. 財政の機能

財政とは

  • 政府(国および地方公共団体)の経済活動のこと
  • 現代社会では、経済活動における政府の役割が非常に大きくなっている

財政の機能

  • 資源の配分機能
    • 市場メカニズムでは供給が難しい公共財や公共サービスを、政府が提供すること
    • 道路や空港などの公共財(社会資本)、警察や消防などの公共サービスなど
  • 所得の再分配機能
    • 高額所得者からは累進課税によって多くの税金を徴収し、生活が困難な者に生活保護などの社会保障による給付を行う事
    • 貧富の格差を縮小させ、公正な社会を実現することを目的としている
  • 景気の調節機能(
    • ビルト・イン・スタビライザー(自動安定化装置)
      • 自動的に景気を安定させること
      • 好況のときには、税収が増加して企業の設備投資や個人消費を抑える
      • 不況のときには、税収が減少する一方で、社会保障関係費の支出を増加させる
    • フィスカル・ポリシー
      • 不況が深刻化したとき、政府が積極的な財政政策で景気の回復を図ること
      • 公共事業を行うことで財政支出を増加させる
      • 所得税を減税する
    • ポリシー・ミックス
      • 財政政策と金融政策と組み合わせて、安定した経済運営を図ること
    • セーフテイネット(安全装置)
      • 消費者保護、環境保護、規制緩和に対応した仕組み作り

33. 景気変動の局面

好況(好景気)

  • 好況の成り立ち
    1. 商品の需要が増大する
    2. 企業は設備投資を活発に行い、生産が拡大する
    3. 労働の需要も増大する
    4. 賃金も上昇する
    5. 個人消費も拡大する

不況(不景気)

  • 不況の成り立ち
    1. 商品が売れない
    2. 企業は設備投資や雇用を抑える
    3. 生産が落ち込む
    4. 倒産する企業が出てくる
    5. 失業も増加する
    6. 労働時間が減少して賃金が減る
    7. 個人消費も落ち込む

景気後退

  • 景気後退の成り立ち
    1. 景気が過熱する
    2. 生産が拡大する
    3. その一方で、物価が上昇する
    4. 消費が落ち込みはじめる
    5. 商品が売れ残りはじめる
    6. 企業の収益が落ちはじめる
    7. 景気が後退しはじめる

景気回復

  • 景気回復の成り立ち
    1. 財政政策、金融政策、規制緩和などが実施される
    2. 金利が下がり、企業の設備投資が増える
    3. 新規事業にチャレンジする企業が増える
    4. 雇用が増える
    5. 人材確保のために、賃金が上昇する
    6. 個人消費が増え、需要が伸びる
    7. 景気が回復しはじめる

恐慌

  • 不況が急激で深刻な状況
  • 19世紀から20世紀の初めにかけて、ほぼ10年周期で発生していた
  • 1929年の大恐慌(世界恐慌)後、恐慌によって経済が混乱するのを防ぐために、各国政府は積極的に経済の調整を行うようになった
    • 不況期の政府対応
      • 金融政策 → 金融緩和
      • 財政政策 → 財政支出の増加
    • 景気過熱時の政府対応
      • 金融政策 → 金融引締め
      • 財政政策 → 増税

32. 景気変動

景気変動(景気循環)

  • 経済において、景気が拡大する時期と縮小する時期を繰り返すこと
  • 資本主義経済は、景気変動をほぼ規則的にくり返しながら成長してきた
経済循環
景気循環の名称 周期 変動の要因 発見・解明者
キチンの波
(キチン循環)
約40ヶ月 企業の在庫の増減(在庫循環) キチン
(アメリカの経済学者)
ジュグラーの波
(キチン循環)
7-10年 設備更新のための投資(設備投資循環) ジュグラー
(フランスの経済学者)
クズネッツの波
(クズネッツ循環)
約20年 住宅など建造物の建て替え(建築循環) クズネッツ
(アメリカの経済学者)
コンドラチェフの波
(コンドラチェフ循環)
約50年 技術革新、金産出、農業生産 コンドラチェフ
(ソ連の経済学者)

31. 経済成長

経済成長

  • 1年間の経済規模の拡大

経済成長率

  • 経済成長の伸び率
  • 経済成長率は、GDPの前年に対する増加率で示される
  • GDPは市場価格で計算されるため、物価変動分を差し引いた「実質経済成長率」を用いることが多い

経済成長の規模を決める要因

  • ケインズの説
    • イギリスの経済学者
    • 政府による「有効需要政策」の必要性を唱えた
      「実際にお金があって、購買力に裏付けられている有効需要の大きさが、経済成長の規模を決める」
  • シュンペーターの説
    • オーストリア生まれの経済学者
    • イノベーションの重要性を唱えた
      「イノベーション(技術革新)が資本主義経済の経済成長の原動力である」
  • イノベーション(技術革新、新機軸)
    • 新製品の発明・開発、新しい生産方式の導入、生産組織の改善などにより、古い経済局面に変化が生じ、投資が刺激されて、新しい経済局面が生まれること
    • 産業革命から現在までに、いくつかの大きな技術革新の波があった
    • 現代の経済は、コンピュータによる情報技術の活用(IT革命)や人工知能(AI)によって、大きく成長しようとしている

30. 国富

フロー

  • 1年間で新たに生産された国内総生産(GDP)や国民所得(NI)

ストック

  • それまで蓄積されたもの
  • 「固定資本(住宅や道路・港湾・機械など)」に「再生できない有形資産(土地や森林など)」と「対外純資産」を加えたもの

国富(日本のストック)

  • 地価が高いため、国富の約半分を土地が占めている
  • 道路・港湾・橋などの「生産関連社会資本」は充実している
  • 公園・上下水道・図書館などの「生活関連社会資本」は欧米諸国と比べて不足している
  • 国富の規模は、1995年が3118兆円で、2008年末には2787兆円に減少(バブル経済の崩壊で土地資産が減少)

29. 国民所得

国民所得の三面等価

  • GNP・GDPを「生産・分配・支出」の3つの面から捉える
  • ① 生産国民所得、② 分配国民所得、③ 支出国民所得 の各総額は等しい
① 生産国民所得
  • 「第一次産業・第二次産業・第三次産業」に分かれる
  • 産業の割合によって、国の産業構造の発展段階を知ることができる
  • 日本は「第三次産業」が70%を超え、経済のサービス化が進展している
② 分配国民所得
  • 「雇用者所得(賃金など)」「企業所得(利潤など)」「財産所得(利子や地代など)」から構成される
  • 「雇用者所得」は60%を超えている
③ 支出国民所得
  • 「民間最終消費支出(家計の消費支出など)」「政府最終消費支出」「国内総資本形成(企業の設備投資や政府の公共投資など)」「経常海外余剰」から構成される
  • 「民間最終消費支出」は55%を超えている
  • 家計の消費支出の動向は景気に大きな影響を与える

28. 国民総生産(GNP)と国内総生産(GDP)

GNPとGDP
国民総生産(GNP)
  • 国民経済の大きさを示す指標
  • 国民が1年間に新たに生産したモノやサービスの粗付加価値の合計額
    • 粗付加価値には減価償却費(固定資本減耗分)が含まれる
  • 生産物販売総額から、原材料などの中間生産物購入総額を差し引いたもの
  • 海外にある日本企業が生産した価値の額は計算に入れられているが、日本国内にある外国企業が生産した価値の額は入れられてはいない
国民純生産(NNP)
  • GNPから、工場や機械などの減価償却費(固定資本減耗分)を差し引いたもの
  • NNPは市場での取引価格で評価されているため、消費税などの間接税が含まれる一方で、補助金分だけ安くなる
国民所得(NI)
  • NNPから間接税を引き、補助金を加えたもの
国内総生産(GDP)
  • GNPから海外からの「純所得(外国からの所得の受取-外国に対する所得の支払)」を差し引いたもの
  • 経済の国際化が進展してきたため、GNPではなくGDPを経済指標に用いるようになった
  • 国民の福祉にとってマイナスとなる要因も計算に含まれている
    • 公害を発生させる産業活動
    • 環境破壊をもたらす開発
    • 長時間労働・長時間通勤 など

27. 経済指標

政府が行う経済政策の目標

  • 国民の福祉の実現
  • 経済成長と景気や物価の安定

経済状態を示す指標(ファンダメンタルズ:経済の基礎的条件)

  • 国民総生産(GNP)
  • 国内総生産(GDP)
  • 国民純生産(NNP)
  • 国民所得(NI)
  • 鉱工業生産指数
  • 失業率
  • 物価指数 など

国民の福祉水準を示す指標

  • 国民純福祉(NNW)
  • グリーンGDP など

26. 日本の物価の長期的な動向

第二次世界大戦直後

  • 年率100%を超えるハイパー・インフレーション(ハイパーインフレ)が起こった
  • 経済復興のために復興金融金庫などが資金を大量に供給して、激しいインフレーションが続いた(復金インフレ)

1960年代

  • 高度経済成長期(1954年~)には、卸売物価(企業物価)は安定していた
  • 消費者物価は、年率で平均5~6%の上昇が続いた
  • 中小企業製品、農産物、サービスの価格が上昇して「生産性格差インフレ」が起こった
  • 高度経済成長によって賃金が上昇した
    • 大企業への影響
      • 生産性を上昇させて賃金コストの上昇を吸収できた
    • 中小企業、農業、サービス業への影響
      • 生産性の伸びが賃金上昇に追いつかなかった
      • コストの上昇を、一部の製品やサービスの価格に転嫁した結果、消費者物価が上昇した

1970年代

  • 1973年の石油危機による原油価格の上昇と、列島改造ブームによる地価の高騰によって、急激な物価上昇を招いた(狂乱物価)
  • 1970年代初めには、 日本を含む先進資本主義諸国は、スタグフレーション(不況下での物価上昇)にみまわれた
    • スタグフレーション=景気停滞(スタグネーション)と物価上昇(インフレーション)の合成語

1980年代

  • 内外価格差の問題
    • 1985年の「プラザ合意」による円高ドル安誘導政策
    • 輸入品価格が下落し、円高差益が発生
    • 価格の下落には至らなかった
    • 欧米諸国との「内外価格差」が問題へ
  • バブル景気
    • 円高不況に対応するため、公定歩合が引き下げられる
    • 余剰資金が、土地や株式などに投機的に投資される(財テク)
    • 地価や株価などの資産価格が高騰
    • バブル経済へ

1990年代

  • バブル経済が崩壊した1990年代になると、景気が低迷して価格が下落する傾向が続いた
  • 1993年ごろからは、円高による安いアジア製品の流入、規制緩和による大型小売店の進出、大型量販店(デイスカウント・ストア)の出現により、メーカー主導の価格設定の仕組みが崩れた
  • 価格破壊(価格引下げ競争)が起こって、1990年代末から2000年代の初めにかけてデフレーションが発生した

2000年代

  • 2008年秋、アメリカの投資銀行の経営破綻(リーマン・ショック)をきっかけとして、世界金融危機がはじまった
  • 世界金融危機の影響を受けて、日本の物価が低迷する
  • 2009年秋、日本政府は再び「デフレ状態にある」と宣言した