2024.06.10 40. 税制の課題 日本の税制 第二次世界大戦後、1950年のショウプ勧告に基づく税制改革 シャウプ税制:所得税、法人税、富裕税、相続税といった直接税を中心とし、補完税として酒税、専売益金といった間接税を配する税体系 日本はシャウプの税制改革により、所得税を中心とする直接税中心主義をとってきた ↓ 高度経済成長が終わり、安定成長になると、所得税・法人税などの税収の伸びが鈍ってきた 少子高齢社会に向けて新たな財源を考える必要性 ↓ 不公平税制が問題となってきた 給料から直接所得税を源泉徴収されるサラリーマンと、自分で所得を税務署へ確定申告する自営業者等とで、税務署が把握する所得の捕捉率に格差がある サラリーマンの補足率:9~10割 自営業者の補足率:5~6 割 農民の補足率:3~4 割 税の不公平 1トーゴーサン(10・5・3) 1クロヨン(9・6・4) ↓ 1989年、税制改革 直接税中心の税制を、間接税の割合が高い税制へ改める動き 所得税や法人税の税率が下げられる 消費税3%が導入される ↓ 1997年、消費税が5%に引き上げられる 消費税のうち1%は「地方消費税」として地方税に組み入れられる ↓ 少子高齢社会の進展 若年層の租税負担が増えることが予想される
2024.06.09 39. 所得税 所得税の税率 分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階に区分されている 平成27年分以降の所得税率 課税される所得金額 税率 控除額 195万円以下 5% 0円 195万円を超え~330万円以下 10% 97,500円 330万円を超え~695万円以下 20% 427,500円 695万円を超え~900万円以下 23% 636,000円 900万円を超え~1,800万円以下 33% 1,536,000円 1,800万円を超え~4,000万円以下 40% 2,796,000円 4,000万円超 45% 4,796,000円 確定申告 所得税は「申告納税制度」を建前としている 個人事業主の場合:確定申告によって納税額を申告する 給与所得者の場合:源泉徴収制度によって、給与から前もって税金が差し引かれて(天引き)、会社が代わりに納税する 給与所得者であっても確定申告をする例 給与の金額が2,000万円を超えている 2カ所以上から給与を受け取っている 給与所得のほかに原稿料(雑収入)を受け取っている 満期の生命保険金などの所得を得た 医療費控除(10万円を超えた分)を受けたい 寄付金控除(1万円を超えた分)を受けたい 確定申告において、納税額が安くなった場合は、国から還付金が指定銀行に振り込まれる
2024.06.08 38. 税制 国税と地方税 租税の種類 国に納める「国税」 地方公共団体に納める「地方税」 国税 所得税 法人税 地方税 住民税である「(都)道府県民税」「市町村民税」 土地や家屋に課税される「固定資産税」 企業や商庖などの事業に課税される「事業税」 間接税と直接税 日本の税制は直接税が中心となっている 直接税 租税負担者と実際に納税する者が同一となる税 例)所得税、法人税、相続税、住民税 所得税 個人が1年間に得た所得に課税される 累進課税(課税対象の額が大きくなるほど、税率が高くなる仕組み) 法人税 企業などの法人の所得に課税される 法人の種類によって一定の比率で課税される 法人税は、不況期には税収が落ち込む 間接税 租税を負担する担税者と実際に納税する者が異なる税 例)消費税、酒税、関税(海外から輸入した商品への課税) 消費税 商品やサービスの購入・消費価格に上乗せされて、消費者が負担する税 商品やサービスに上乗せされた消費税は、それを受け取った企業や事業主が納税する 消費税は、所得の多少にかかわらず、消費者すべてに対して一律に課税される 生活必需品への課税は、低所得者には相対的に重い負担になる(逆進的) 商品の代金を支払うときにいっしょに納税し、1回ごとの納税額が少額であることが多いことから、負担者の納税感が所得税に比べて薄くなる
2024.06.07 37. 租税の意義 日本国憲法における国民の三大義務 教育の義務 勤労の義務 納税の義務 租税 国や地方公共団体が行う様々な経済活動を支える主な財源 公平の原則 租税の徴収における原則 水平的公平:所得や消費額が同じ者は同じ負担をする 垂直的公平:所得の多い者はより大きい負担をする 累進課税制度 所得の多い者ほど税率を高くする制度で、加えて控除制度を設けている 課税対象額(課税所得)から各種控除額を差し引く 例)配偶者控除・扶養控除:配偶者や子どもを扶養するための費用を差し引く 租税法定主義の原則 法律の根拠がなければ、新たに租税を課したり、それを変更することができない 憲法(84条)に定められている
2024.06.06 36. 財政赤字 特例国債(赤字国債) バブル経済崩壊後の景気低迷、高齢社会のための財政支出の増大によって、特例国債が大規模発行される 財政法 建設国債の発行は認めている 国債の日本銀行引き受けを禁止している 一般会計の歳入不足を補うための赤字国債の発行を禁止している 特別立法により、特例国債の発行を認めさせている 特別国債の大規模発行における問題 国債依存度(一般会計歳入に占める国債の割合)が高くなっている 歳出に占める国債費の割合が20%を超え、政策で使える予算が減っている(財政の硬直化) 償還しなければならない国債の発行残高が高くなっている 債務残高対GDP比は200%を超えており、先進国で一番高い 経済の低成長が続き、人口の高齢化が進むなかで、赤字国債の発行を減らす財政改革が難しくなっている 財政構造改革法 正式名「財政構造改革の推進に関する特別措置法」 1997年11月に成立した、財政収支を健全化し、変容する経済社会情勢に対応できるような財政構造を実現することを目的とした法律 赤字国債の発行をゼロにする 公共事業費や社会保障などの経費を削減する 景気が低迷したため、1998年 12月に小渕内閣は同法律を凍結し、景気回復を最優先させる措置をとった
2024.06.05 35. 予算 国の予算 財政活動は、 1年間を会計年度とする予算に基づいて行われる 日本では、4月1日から翌年の3月31日までが「一会計年度」である 予算の構成 一般会計予算 内閣で1年間の歳出と歳入の原案が作成され、国会で承認を受けて執行される(財政民主主義の原則) 一般会計には、そのときの経済の状況や経済政策の特色が現れる 例) 国債の発行による歳入の増加 国債の利払い、償還のための国債費の割合が増大 社会保障関係費の増加 → 高齢化社会 地方交付税交付金の増加 → 地方格差の解消 公共事業関係費の増加 → 景気対策 特別会計予算 以下のときに限り、財政法のもとで設置することができるもの 特定の事業を行なう場合 特定の資金を保有してその運用を行う場合 その他、特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合 財政投融資計画(第二の予算) 重要産業の育成、産業基盤(道路・港湾など)の整備、住宅建設の促進、農林水産業や中小企業の助成を行うための資金 財投債や財投機関債・政府保証債を発行して調達したり、簡易保険積立金などを政府関係機関や地方公共団体などに投資や融資して資金を集める 財投債に充てられる郵便貯金・厚生年金・国民年金の積立金 以前は、旧大蔵省資金運用部を通して投資や融資されていた 近年は、各機関が自主的に運用できるようになった 公共事業 以前は、生産関連社会資本(公園、上下水道、教育施設、病院、道路など)の整備がメインであった 近年は、生活関連社会資本の充実や、情報通信分野の成長産業育成のための基盤整備が求められている 近年は、公共事業の見直しも行われている 環境への影響を事前に調査する「環境アセスメント」の導入 不要な公共事業を見直す「時のアセスメント」制度の導入 参考:財務省 – 予算
2024.06.04 34. 財政の機能 財政とは 政府(国および地方公共団体)の経済活動のこと 現代社会では、経済活動における政府の役割が非常に大きくなっている 財政の機能 資源の配分機能 市場メカニズムでは供給が難しい公共財や公共サービスを、政府が提供すること 道路や空港などの公共財(社会資本)、警察や消防などの公共サービスなど 所得の再分配機能 高額所得者からは累進課税によって多くの税金を徴収し、生活が困難な者に生活保護などの社会保障による給付を行う事 貧富の格差を縮小させ、公正な社会を実現することを目的としている 景気の調節機能( ビルト・イン・スタビライザー(自動安定化装置) 自動的に景気を安定させること 好況のときには、税収が増加して企業の設備投資や個人消費を抑える 不況のときには、税収が減少する一方で、社会保障関係費の支出を増加させる フィスカル・ポリシー 不況が深刻化したとき、政府が積極的な財政政策で景気の回復を図ること 公共事業を行うことで財政支出を増加させる 所得税を減税する ポリシー・ミックス 財政政策と金融政策と組み合わせて、安定した経済運営を図ること セーフテイネット(安全装置) 消費者保護、環境保護、規制緩和に対応した仕組み作り
2024.06.03 33. 景気変動の局面 好況(好景気) 好況の成り立ち 商品の需要が増大する 企業は設備投資を活発に行い、生産が拡大する 労働の需要も増大する 賃金も上昇する 個人消費も拡大する 不況(不景気) 不況の成り立ち 商品が売れない 企業は設備投資や雇用を抑える 生産が落ち込む 倒産する企業が出てくる 失業も増加する 労働時間が減少して賃金が減る 個人消費も落ち込む 景気後退 景気後退の成り立ち 景気が過熱する 生産が拡大する その一方で、物価が上昇する 消費が落ち込みはじめる 商品が売れ残りはじめる 企業の収益が落ちはじめる 景気が後退しはじめる 景気回復 景気回復の成り立ち 財政政策、金融政策、規制緩和などが実施される 金利が下がり、企業の設備投資が増える 新規事業にチャレンジする企業が増える 雇用が増える 人材確保のために、賃金が上昇する 個人消費が増え、需要が伸びる 景気が回復しはじめる 恐慌 不況が急激で深刻な状況 19世紀から20世紀の初めにかけて、ほぼ10年周期で発生していた 1929年の大恐慌(世界恐慌)後、恐慌によって経済が混乱するのを防ぐために、各国政府は積極的に経済の調整を行うようになった 不況期の政府対応 金融政策 → 金融緩和 財政政策 → 財政支出の増加 景気過熱時の政府対応 金融政策 → 金融引締め 財政政策 → 増税
2024.06.02 32. 景気変動 景気変動(景気循環) 経済において、景気が拡大する時期と縮小する時期を繰り返すこと 資本主義経済は、景気変動をほぼ規則的にくり返しながら成長してきた 景気循環の名称 周期 変動の要因 発見・解明者 キチンの波(キチン循環) 約40ヶ月 企業の在庫の増減(在庫循環) キチン(アメリカの経済学者) ジュグラーの波(キチン循環) 7-10年 設備更新のための投資(設備投資循環) ジュグラー(フランスの経済学者) クズネッツの波(クズネッツ循環) 約20年 住宅など建造物の建て替え(建築循環) クズネッツ(アメリカの経済学者) コンドラチェフの波(コンドラチェフ循環) 約50年 技術革新、金産出、農業生産 コンドラチェフ(ソ連の経済学者)
2024.06.01 31. 経済成長 経済成長 1年間の経済規模の拡大 経済成長率 経済成長の伸び率 経済成長率は、GDPの前年に対する増加率で示される GDPは市場価格で計算されるため、物価変動分を差し引いた「実質経済成長率」を用いることが多い 経済成長の規模を決める要因 ケインズの説 イギリスの経済学者 政府による「有効需要政策」の必要性を唱えた 「実際にお金があって、購買力に裏付けられている有効需要の大きさが、経済成長の規模を決める」 シュンペーターの説 オーストリア生まれの経済学者 イノベーションの重要性を唱えた 「イノベーション(技術革新)が資本主義経済の経済成長の原動力である」 イノベーション(技術革新、新機軸) 新製品の発明・開発、新しい生産方式の導入、生産組織の改善などにより、古い経済局面に変化が生じ、投資が刺激されて、新しい経済局面が生まれること 産業革命から現在までに、いくつかの大きな技術革新の波があった 現代の経済は、コンピュータによる情報技術の活用(IT革命)や人工知能(AI)によって、大きく成長しようとしている