高校レベルの経済

20. インフレーション(インフレ)

インフレの原因

  • 需要インフレ
    • 景気が好調になると、需要が拡大して商品の価格が高くなり、その結果物価が上昇する
  • 供給インフレ
    • 原材料費や賃金が上昇すると、その分だけ企業は商品の価格を吊り上げるため、その結果物価が上昇する
  • 輸出インフレ
    • 外国への輸出が増えると、国内の供給量が減り商品の価格が高くなるため、その結果物価が上昇する
  • 輸入インフレ
    • 輸入が増えると、外国の景気に左右されるようになり、物価が上昇する
  • 貨幣的要因によるインフレ
    • 日本銀行が貨幣を増刷しすぎると、通貨量が増えて貨幣価値が下がり、物価が上昇する

インフレの種類

  • ディマンド・プル・インフレーション
    • 通貨供給量(マネーサプライ)や財政支出の増加などにより、総需要が総供給より多くなって、物価が上昇する現象
  • コスト・プッシュ・インフレーション
    • 賃金や原材料費などの生産コストの上昇が物価を押し上げる現象
  • ハイパー・インフレーション
    • 物価が短期間に数十倍にも高騰する現象
  • クリーピング・インフレーション
    • 長期間にわたり徐々に物価が上昇する現象

インフレの効果

  • 例1)インフレが進む
      ↓ 
    通貨価値が下落
      ↓ 
    実質賃金が下落
      ↓ 
    預貯金の目減りを招く
      ↓ 
    労働者や年金生活者の生活が苦しくなる
  • 例2)土地などの資産価値が増加
      ↓ 
    借金などの負債が目減りする
      ↓ 
    インフレ・マインドを刺激
      ↓ 
    投機目的で借金をしてまでも土地や財貨を買い急ぐ
      ↓ 
    さらにインフレーションを刺激する

19. 物価

物価とは

  • さまざまな商品の価格を総合し平均化したもの

物価の種類

  • 企業物価
    • 企業間で取引される商品の価格を平均化したもの
  • 消費者物価
    • 家計が小売段階で購入する商品の価格を平均化したもの

物価指数

  • ある基準年の物価水準を100として、他の年の物価の上昇や下落を比率で示したもの
  • 物価の動きを示す指標

インフレーション・デフレーション

  • インフレーション(インフレ)
    • 物価が持続的に上昇する現象
  • デフレーション(デフレ)
    • 物価が持続的に下落する現象
  • インフレ・デフレへの対策
    • インフレーションやデフレーションは、経済活動に大きなマイナスの影響を与えることがある
    • 政府や日本銀行は「物価の安定」を財政・金融政策の大きな目標としている

18. 市場の失敗

市場の失敗

  • 市場経済にゆだねていると・・・
    • 必要なモノやサービスが、適正な価格で、必要なだけ供給されないことがある
    • 資源の最適配分が実現しないことがある
    • 上記のような状態は、経済的に効率的ではない
  • 市場の失敗とは、市場経済にゆだねた結果(市場メカニズムが働いた結果)、「経済的な効率性」が達成されていない状態のこと

市場の失敗例

  • 外部不経済
    • 市場を通さないで、第三者に経済的な不利益を与えること
    • 例)自動車の排気ガスによる大気汚染などの公害
      → 排気ガスは市場を介さず、社会に直接的に公害を与える
  • 収穫逓増的(費用逓減的)な事業を行う産業
    • 多額の設備が必要となるため、多数の企業による競争が成立せず、巨大企業の独占が発生するような産業
    • 例)電力、水道、ガス、交通など

      → 事業設備(インフラ)を整えるのに多額の初期費用が必要となる産業
    • この産業では、大量生産によって利益が生まれる(規模の経済が働く)
  • 公共財や公共サービスの提供
    • 一般の道路や橋などのように、誰もが使うものを提供すること(共同性)
    • ある人が消費しても、他の人の消費量は減らないものを提供すること(非競合性)
    • 公共財・公共サービスでは、料金を払わない人(フリーライダー)を排除できない(非排除性)

市場の失敗への対策例

  • 排出基準の設定
    • 工場などから排出される汚染物質の許容限度を設定する
  • 公共料金の設定
    • 巨大企業が市場を独占しており、価格を自由に設定できてしまうため、その価格を「公共料金」として規制する
  • 政府による資源の配分(公共投資など)
    • 国や地方自治体が公共事業などに投資することによって、社会に資源を再配分する

17. 需要と供給の変化

需要が増加すると、均衡価格は上昇

  • 消費者の所得(給与など)が増加したり、商品がヒットしたりして需要が増えると、需要曲線は右に移動する
    → 点E’で取引が成立するようになり、均衡価格が上昇する

    需要供給曲線

需要が減少すると、均衡価格は下落

  • 消費者の所得が減少したり、景気が悪くなったりして需要が減ると、需要曲線は左に移動する
    → 点E”で取引が成立するようになり、均衡価格が下落する

    需要供給曲線

供給が増加すると、均衡価格は下落

  • 天候が良くて豊作になったり、技術革新によって生産性が向上して供給が増えると、供給曲線は右に移動する
    → 点E’で取引が成立するようになり、均衡価格が下落する

    需要供給曲線

供給が減少すると、均衡価格は上昇

  • 天候が悪くて不作になったり、工場での事故や災害によって供給が減ると、供給曲線は左に移動する
    → 点E”で取引が成立するようになり、均衡価格が上昇する

    需要供給曲線

市場メカニズム

  • 需要量と供給量が一致するまで価格を動かして、取引を成立させる仕組み

16. 価格メカニズム(2)

もし価格が点Eのときよりも高かったら

  • もし価格が点Eのときよりも高かったら、需要量よりも供給量の方が大きくなり、供給側に「余剰(余り)」が生じる
    → 余ったものを売ろうとして価格は下がるだろう

    需要供給曲線

もし価格が点Eのときよりも安かったら

  • もし価格が点Eのときよりも安かったら、供給量よりも需要量の方が大きくなり、品不足が生じる
    → 品不足になると商品価値が高まり、価格は上がるだろう

    需要供給曲線

点Eのときの価格が「均衡価格」

  • 需要曲線と供給曲線が交わる点Eのときに、需要量と供給量が等しくなり、商品の過不足もなく、価格が安定する

    需要供給曲線

15. 価格メカニズム(1)

完全競争

  • 企業や家計が生産量や消費量を変更しても、市場で成立している価格に影響しないような状況

完全競争市場

  • 完全競争が行われる市場のこと
  • 完全競争市場は次の4条件を満たす
    • ① 市場には多数の参加者(生産者や消費者)がいる
    • ② 財(商品)の質が同じである(商品の品質が同じ)
    • ③ 市場に関する情報をすべての参加者が保有している
    • ④ 市場への新規参入や撤退が自由である
  • 価格のメカニズムを考えるために仮定され理想的な市場であって、現実の市場にはほとんど存在しない

取引が成立するのは点E

  • 完全競争市場において、ある商品の需要と供給の量を表す「需要曲線」と「供給曲線」が与えられているとしたら、取引が成立するのは、需要側と供給側の希望が一致した点Eのときである

    需要供給曲線

14. 企業の社会的責任(CSR)

企業に期待すること

  • 環境保全、商品の安全性、経営の情報開示(ディスクロージャー)や、企業トップが説明責任(アカウンタピリティ)を果たすことが求められてきた
  • 企業に期待する活動
    • スポーツや文化・芸術活動への支援(メセナ)
    • 福祉や地域の緑化活動
    • 体育館やプールじぜ人の施設開放
    • 慈善活動への援助
    • 社会貢献活動(フィランソロピー)
    • 工場や事務所のバリアフリー化
    • 障害者の積極的な雇用推進
    • 視覚障害者向けに点字の商品カタログを作成
    • 従業員のためのボランテイア休暇制度
    • 福祉や地域活動
    • 国際協力への参加 など
  • 市民社会の一員として、企業の社会的責任(CSR)を果たすことは、企業の存立に必要な時代となった

企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)

  • CSRとは
    • 市民社会の一員として、 法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけでなく、市民や地域、社会の要求に応え、社会貢献や社会的配慮、情報公開や対話を自主的に行うこと
  • CSRの参考になる要綱
    • 日本経団連「企業行動憲章」
    • 経済同友会「自己評価ツール」
  • 具体的な例
    • 地球環境への配慮
    • 適切な企業統治と情報開示
    • 誠実な消費者対応
    • 環境や個人情報保護
    • ボランティア活動支援などの社会貢献
    • 地域社会参加などの地域貢献
    • 安全や健康に配慮した職場環境と従業員支援

CSRが普及した背景

  • 株式市場や格付機関が企業評価の尺度としてCSRの視点を取り入れるようになった
  • CSRに取り組むことで、顧客や消費者にプラスのイメージを与え、その企業の商品の売上げの増加が見込まれるようになった

13. 資本主義経済における企業の目的

資本主義経済の原則

  • 資本主義経済の原則は「経済活動の自由」
  • 経済主体(企業)に対しては「法令の遵守(コンプライアンス)」や「企業倫理に基づいた活動」を期待する

資本主義経済における企業の目的

  • 他の企業と競争して、利潤をあげるために技術革新を進め、生産性を向上する
  • 消費者に対しては、そのニーズに応えてより良い商品をより安く提供する
  • 労働者に対しては、高い賃金を払うなどの良い待遇を実現する
  • 投資家に対しては、より多くの配当を分配する
  • 社会に対しては、雇用の促進や技術開発によって、地域社会や経済全体の発展に貢献する

企業の利潤追及で発生する問題

  • 公害問題
  • 薬害・有害食品、欠陥商品などの消費者問題
  • 過労死などの労働問題

12. 企業の社会的責任(CSR)

企業に期待すること

  • 環境保全、商品の安全性、経営の情報開示(ディスクロージャー)や、企業トップが説明責任(アカウンタピリティ)を果たすことが求められてきた
  • 企業に期待する活動
    • スポーツや文化・芸術活動への支援(メセナ)
    • 福祉や地域の緑化活動
    • 体育館やプールじぜ人の施設開放
    • 慈善活動への援助
    • 社会貢献活動(フィランソロピー)
    • 工場や事務所のバリアフリー化
    • 障害者の積極的な雇用推進
    • 視覚障害者向けに点字の商品カタログを作成
    • 従業員のためのボランテイア休暇制度
    • 福祉や地域活動
    • 国際協力への参加 など
  • 市民社会の一員として、企業の社会的責任(CSR)を果たすことは、企業の存立に必要な時代となった

企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)

  • CSRとは
    • 市民社会の一員として、 法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけでなく、市民や地域、社会の要求に応え、社会貢献や社会的配慮、情報公開や対話を自主的に行うこと
  • CSRの参考になる要綱
    • 日本経団連「企業行動憲章」
    • 経済同友会「自己評価ツール」
  • 具体的な例
    • 地球環境への配慮
    • 適切な企業統治と情報開示
    • 誠実な消費者対応
    • 環境や個人情報保護
    • ボランティア活動支援などの社会貢献
    • 地域社会参加などの地域貢献
    • 安全や健康に配慮した職場環境と従業員支援

CSRが普及した背景

  • 株式市場や格付機関が企業評価の尺度としてCSRの視点を取り入れるようになった
  • CSRに取り組むことで、顧客や消費者にプラスのイメージを与え、その企業の商品の売上げの増加が見込まれるようになった

11. 資本主義経済における企業の目的

資本主義経済の原則

  • 資本主義経済の原則は「経済活動の自由」
  • 経済主体(企業)に対しては「法令の遵守(コンプライアンス)」や「企業倫理に基づいた活動」を期待する

資本主義経済における企業の目的

  • 他の企業と競争して、利潤をあげるために技術革新を進め、生産性を向上する
  • 消費者に対しては、そのニーズに応えてより良い商品をより安く提供する
  • 労働者に対しては、高い賃金を払うなどの良い待遇を実現する
  • 投資家に対しては、より多くの配当を分配する
  • 社会に対しては、雇用の促進や技術開発によって、地域社会や経済全体の発展に貢献する

企業の利潤追及で発生する問題

  • 公害問題
  • 薬害・有害食品、欠陥商品などの消費者問題
  • 過労死などの労働問題