大学レベルの会計

41. 測定基準の分類

原価・時価による資産の測定基準

分類⽅法1 原価 過去時点の額 → 取得原価
時価 現在・将来の額 → 現在原価、売却時価、割引現在価値
分類⽅法2 原価 犠牲 → 取得原価、現在原価
時価 成果 → 売却時価、割引現在価値

⾦銭債権(売掛⾦、受取⼿形、未収⾦など)の測定

  • 利息額を客観的に区別することが困難
  • 割引を⾏わない「将来の収⼊額(割引前の将来キャッシュフロー)」を⽤いる

棚卸資産(商品、製品など)の期末時点の測定

  • 「取得原価」と「時価(現在原価、または売却時価)」のいずれか低い⽅の額で測定する(低価基準)

40. 測定:資産の測定基準

資産の測定ポイント

  1. どの時点の⾦額に基づいているか?
    • 過去か、現在か、未来か
  2. 「犠牲」と「成果」のどちらに属する⾦額か?
    • 犠牲 = ⽀出額
    • 成果 = 収⼊額

資産の測定区分

過去 現在 未来
犠牲(⽀出額) 取得原価 現在原価     
成果(収⼊額) 売却時価 割引現在価値     

取得原価

  • 資産を取得するために⽀出した額
  • 資産を取得した時点の価格
  • 決算時では、過去の価格となる = 歴史的原価
  • 客観性のある数値
    1. 売り⼿と買い⼿の取引関係において、客観的に⾒極められた数値
    2. 過去の事実に基づく客観的な数値

現在原価

  • 現在における原価
  • 保有する資産を、現時点で改めて購⼊したときに要する⽀出額
  • 現在の購⼊市場における価格
  • 資産の再調達、または取り替えを仮定した価格 = 再調達原価、取替原価

売却時価

  • 販売市場における現在の価格
  • 現在の収⼊額
    • 売却額それ⾃体ではなく、売却にかかる附随費⽤(⼿数料や処理費⽤など)を差し引いた正味の額 = 正味実現可能価額、正味売却価格
    • 資産の測定額となる

割引現在価値(割引現価)

  • 割引現在価値とは
    「将来キャッシュフローの割引現在価値」の略称
    保有する資産によって獲得が⾒込まれる「将来の現⾦収⼊額(キャッシュフロー)」を、⼀定の利⼦率(割引率)で割り引いて計算される額
    将来の収⼊額を基礎にした測定額
  • 割引現在価値の判断基準
    1. 主観価値による判断
      • 将来のキャッシュフローと、これを割り引く利⼦率が、企業の主観的な判断に依存する
    2. 使⽤価値による判断
      • 将来のキャッシュフローが、「⼀般的な資産の使⽤」によって判断される
  • 割引現在価値の算定
    • 「将来のキャッシュフローの⾒積もり」と「割引率の決定」が必要となり、企業の主観的判断に依存する
    • 同⼀の資産であっても、割引現在価値を計算する過程や結果により、額が異なる場合がある

39. 測定:資産

会計における測定(評価)

  • 測定 = 認識段階において取引として認織された「資産、負債、資本、収益、費⽤」の各項⽬に貨幣的数値を割り当てること
  • 貨幣的な測定の公準
  • 会計における測定では貨幣数値を⽤いる

資産測定を適⽤するときの問題

  • 資産として会計の中に取り込まれたとき、どのような⾦額を割り当てるのか?
  • 期末時点で保有し、翌期に繰り越す資産に対して、どのような⾦額を割り当てるのか?
  • 貸借対照表に記載する資産の⾦額はいくらにするのか?

負債・資本の測定

資産 負債
資本
  • 負債の測定
    • 契約によって発⾏額や返済額が確定しているため、期末時点での測定に関する問題は⽣じない
  • 資本の測定
    1. 株主からの払込資本
      • 株主から払い込まれた額によって確定
    2. 留保利益
      • 期間収益から期間費⽤を差し引いた残りとして確定
  • 「資産 − 負債 = 資本」という関係から、資産と負債の額が決まれば、資本の額も定まる

費⽤性資産の測定

  • 費⽤性資産 = 「将来において期間費⽤となる」として翌期に繰り越されたものが、蓄積されたもの
  • 期間費⽤になった額と、ならなかった額(資産として翌期に繰り越される額)とが、各期末において測定される
  • 「資産の測定」と「費⽤の測定」の両⾯で重要な意味を持つ

38. 期間収益と期間費⽤

期間収益と期間費⽤の対応関係

  1. 個別的対応(直接的対応)
    • 特定の財・サービスを媒介とする対応
    • 売上と売上原価との対応
      • 商品・製品の販売による収益と、商品の購⼊や製品の製造にかかる原価など、収益に直接の関わりを持つ費⽤との対応
    • 現実的には業種などの違いによって、その対応の確度には差がある
      • サービス業の場合、対応関係は⽐較的正確に把握可能
      • 売上原価を「先⼊先出法」などで算定する⼩売業や製造業の場合、⼀定期間の売上の合計と売上原価の合計で対応関係を把握する
        (→期間的対応)
      • 先⼊先出法 = 先に取得したものから順に払い出されると仮定して、棚卸資産の取得原価を払出原価と期末原価に配分する⽅法
  2. 期間的対応(間接的対応)
    • 期間を媒介とする対応
    • 売上と費⽤(給料や減価償却費など)との対応
    • 収益との間に直接的な因果関係はないが、期間収益を得るために役⽴っている費⽤は、経営活動を通じて間接的に対応していると考え、両者の対応関係を認める
  3. 損失とみられるものと収益との間に⾒られる対応関係
    • 商品・製品の評価損
    • 貸し倒れによる損失
    • 経常的にして不可避的に⽣ずる損失の場合、費⽤の性格を有しているため、損失の⼀部を収益と対応しているとみなす

37. 認識:収益費⽤対応の原則

期間収益と期間費⽤の違い

  • 収益
    • 実現主義に基づいて、そのまま「期間収益」となる
  • 費⽤
    • 発⽣主義に基づいているが、そのまま「期間費⽤」となるわけではない
    • 「価値減少事実の発⽣」によって⼀端は費⽤として認識されるが、「期間収益との対応関係」がなければ認められない

収益費⽤対応の原則

  • 「収益の認識基準としての実現主義」と「費⽤の認識基準としての発⽣主義」との橋渡しをする原則
    • 「発⽣主義に基づいて認識された期間費⽤」の中から「実現主義に基づいて認識された期間収益」と対応する部分が抜き出される
    • 「期間収益(価値増加)」と「期間費⽤(価値減少)」との間に、結果・原因・対応関係を求める
    • ある期間の経営活動から得た収益と、それを得るために費やされた費⽤との差としての利益を、より適切な形で表すことができる
    • 収益や費⽤の勘定科⽬によって対応に違いが出る
  • 「期間収益」と「期間収益」とに対応表⽰を求めることから「収益費⽤対応表⽰の原則」ともいう
収益 費⽤
発⽣時  
価値増加
【発⽣の認識】
価値減少
実現時 【実現の認識】
確定性・客観性の認識
= 期間収益
 
← 収益費⽤対応の原則 →
(期間費⽤の抜き出し)
 
期間収益と対応したもの
= 期間費⽤
期末後 収益と未対応のもの
= 資産(将来の費⽤)

収益費⽤対応の原則:メーカーの例

  • 製品を製造するために材料を消費した時点で、発⽣主義(価値減少事実の発⽣)に基づいて、材料費として認識される
  • 製品の製造によって価値増加も発⽣するが、製品が完成して外部に販売されるまで、収益の認識は⾏われない
  • 材料費も直ちに期間費⽤とはならず、製造途上では「仕掛品の原価」、完成後では「製品の原価」を構成するものとなる
  • 製品が販売され、収益(売上)が認識されてはじめて、収益(売上)と対応関係をもつ費⽤(売上原価の⼀部)として期間費⽤となる

費⽤性資産(仕掛品、製品)

  • 将来の期間費⽤となるものであるため、損益計算書には記載しない
    → 貸借対照表において繰り越される
  • 仕掛品、製品 = 将来において期間費⽤となるもの
  • 将来の収益獲得に役⽴つもの = 資産のような性質を持つもの

36. 認識:費用

発⽣主義会計における収益・費⽤の認識

  • 収益の認識基準
    • 「発⽣主義」に確定性・客観性という制約を付けて「実現主義」を適⽤
  • 費⽤の認識基準
    • 「発⽣主義」を適⽤
    • 広義の概念
      • 収益獲得への貢献の有無を区分せず、あらゆる経済価値の減少を「費⽤」と認識
    • 狭義の概念
      • 財・サービスの消費による経済価値の減少に基づいて「費⽤」と認識
      • 収益の獲得に貢献する経済価値の減少でなければならない
      • ⽕災、盗難などによる経済価値の減少は「損失」
  • 収益ありきの費⽤
    • 利益計算は「期間収益から期間費⽤を差し引く」という形で⾏われることから、期間費⽤は「期間収益に対応する費⽤」として認識される

費⽤の発⽣

  • 価値減少の「確定事実の発⽣」
    • 財・サービスの消費によって価値の減少が客観的に認められいる
    • 後になって取り消されることのない事実として⽣じている
  • 価値減少の「原因事実の発⽣」= 原因主義
    • 現時点では価値の減少を客観的に確定することはできず、将来その確定が確認できる
      • 例)備品や建物などの固定資産の費⽤化
        • ⻑期にわたって使⽤される資産は、最終的に廃棄される時点でなければ、その価値の減少は確定しない
        • 使⽤や時間の経過とともに価値は減少していることから、消費分が費⽤として認識されなければ、合理理的な期間利益計算は⾏えない
        • 使⽤や時間の経過という価値減少の原因事実の発⽣にもとづいて「減価償却」という形で費⽤化していく
    • 価値減少の原因となる事実がすでに⽣じてい
      • 例)製品保証引当⾦(負債性引当⾦)
        • 販売後の⼀定期間における無料修理を保証して、製品を販売したときに設定される引当⾦
        • 「製品を販売したことが将来における価値減少の原因となる」という「原因事実の発⽣」に基づいて、製品を販売した期間に費⽤を認識する

費⽤の認識における発⽣主義

  • 「確定事実の発⽣」だけでなく、「原因事実の発⽣」も含んだ概念
    • 広義の発⽣主義
      • 原因事実の発⽣も含めたもの → 費⽤の認識
    • 狭義の発⽣主義
      • 発⽣主義は価値減少の事実発⽣のみ
  • 費⽤の認識原則
    • 価値減少の確定事実の発⽣だけでなく、原因事実の発⽣をもって認識させる
    • 収益との対応関係を前提するため、費⽤は「確定性を持たない価値減少」をも含んだ発⽣主義に基づいて認識される

35. 2つの収益認識

「実現主義=販売基準」とする場合の収益認識

  • ベースは「販売基準」、「⽣産基準・回収基準」は実現主義の例外
  • 問題点
    • 「実現主義の例外」とみなされる基準やケースが存在してしまう
    • 会計構造全体は「発⽣主義会計」を採⽤しているが、収益の認識では「発⽣主義の例外」が存在してしまう
    • 「実現主義・発⽣主義・現⾦主義」が対⽐関係となり、収益が認識しづらい
ビジネスプロセス
1.材料購⼊
2.⽣産開始 ⽣産基準 「発⽣主義」による収益認識
3.⽣産完了 (実現主義の例外)
4.販売 (引き落とし) 販売基準 「実現主義」による収益認識
5.代⾦回収 回収基準 「現⾦主義」による収益認識 (実現主義の例外)

「実現=経済価値の増加の確定性・客観性が確保された時点」とする場合の収益認識

  • 「販売基準・⽣産基準・回収基準」はすべて実現主義
ビジネスプロセス
1.材料購⼊
2.⽣産開始 ⽣産基準 「実現主義」による収益認識
3.⽣産完了
4.販売 (引き落とし) 販売基準
5.代⾦回収 回収基準

どちらの収益認識が妥当か

  • 実現主義は「確定性・客観性の確保」という要件を満たした時点で、経済価値の増加を認識するのが妥当
    →「販売基準・⽣産基準・回収基準=多様な業種・業態における収益の確定性・客観性の確保のケース」と捉えてしまう
  • 「実現主義=⼀定の制約条件をともなった発⽣主義」とするのが妥当
    →「収益における実現主義」と「費⽤における発⽣主義」が「発⽣主義会計」という1つの会計構造の中に⽭盾なく存在でき

34. 認識:実現主義と発⽣主義会計

収益の認識

  • 取引の対価である「現⾦の増加」ではない
  • 取引の対象である「経済価値の増加」である

認識⾯からみた会計構造

  • 現⾦主義会計ではない
  • 発⽣主義会計である

収益認識の基準

  • 「販売基準」は⼀般的に適⽤される
  • 「⽣産基準」や「回収基準」は、実現主義の適⽤、あるいは実現主義の例外とも考えられる

33. 認識:実現主義の基準

「実現」の⼀般的な要件

  • 財貨の引き渡しやサービスを提供したとき
  • その対価として、特定資産を受領したとき、または債務を弁済したとき

販売基準による「収益」の認識

  • 販売⾏為の完了時点で収益を認識すること
  • 「現⾦等価物」の解釈は複数存在するものの、⼀般的に販売⾏為の完了をもって「収益の実現」とみなされる
    • 「実現主義=販売基準」と同義に捉えられることもある
  • 今⽇の会計制度では、販売基準以外の収益の認識も少なからず認められている

⽣産基準による「収益」の認識

  • ⽣産過程の途上、または完了の時点で収益を認識すること
  • ⽣産基準の種類
    1. 時間基準
      • 不動産賃貸業、⾦融業、電⼒会社、ガス会社のように、⼀定の契約にもとづいてサービス提供が⾏われている場合
      • 時間の経過に応じて収益を認識することが可能
    2. ⼯事進⾏基準
      • 建設業、造船業のように、⽣産の前に請負契約が結ばれ、完成物の引き渡しと取引価格(販売価値)とが確定している場合
      • ⽣産、または⼯事の進捗度に応じて収益を認識することが可能
    3. 収穫基準
      • 政府などによる買い⼊れが定められている特定の農産物、鉱産物(ただし、貴⾦属,宝⽯として扱われるものに限る)のように、所定の価格での販売が保証されている、あるいは容易に販売しうる市場(売り⼿市場)が存在する場合
      • (販売以前の)収穫、または⽣産を完了した時点で、収益を認識することが可能

⽣産主義に対する⾒解

  • 「実現主義=販売基準」の⾒地からすると、販売⾏為の完了以前における収益の認識である
    • 実現主義の例外(発⽣主義の適⽤)とみなされる
  • 実現主義の根拠に「収益の確定性・客観性」を求める場合は、⽣産主義は実現主義の⼀例とみなされる
    • 収益の確定性・客観性=決定的な事柄の存在を求める考え

回収基準(回収期限到来基準)による「収益」の認識

  • 代⾦の回収の可否にかかわらず、回収期限(⽀払い期限)が到来した時点で収益を認識すること
  • 例:割賦販売(クレジット販売)
    • 販売代⾦を分割払いとする場合、販売⾏為を完了しただけでは、収益の確実性を確保できたとはいえない
    • 実際に代⾦が回収されるまでは、収益の成⽴が不確実な状態にある
    • 代⾦の回収が⻑期に渡るため、代⾦が完全に回収されない危険性が⾼い
    • 代⾦の回収にあたって、販売後にある程度の「回収費⽤」を要する
    • 収益の確実性を確保するため、代⾦の回収時点まで、収益の認識を先送りすることが認められている

回収基準に対する⾒解

  • 「実現主義=販売基準」の⾒地からすると、販売⾏為の完了後における収益の認識である
    • 実現主義の例外(現⾦主義の適⽤)とみなされる
  • 実現主義の根拠に「収益の確定性・客観性」を求める場合は、回収基準は実現主義の⼀例とみなされる
    • 割賦販売 → 代⾦の回収時点が収益の認識 → 代⾦回収の実現 → 実現主義の⼀例

32. 貨幣性資産

貨幣性資産

  • 現⾦
  • 現⾦等価物

貨幣性資産の受領

  • 貨幣性資産の受領によって、利益の処分可能性が⽣まれる
  • 利益は処分の対象となり、株主への配当などで分配される
  • 収益に資⾦的な裏づけがなければ、利益の分配は実⾏できない

現⾦等価物の捉え⽅

① 再販売過程を要しない資産 ② ⽀払⼿段に充当する資産
基本的な考え⽅
  • 販売しなくても現⾦化できるものであれば「現⾦等価物」とみなす
  • 現⾦として回収されるまでの時間は問題としない
  • 必要に応じて直ちに換⾦できれば「現⾦等価物」とみなす
  • 現⾦化するのに販売過程を要するかどうかは問われない
例)対価として売掛⾦、または受取⼿形を受け取った場合
  • その回収期限が期間内に到来せず、現⾦化されなくとも、対価は現⾦等価物とみなす
  • 現⾦化されるのに販売過程を経る必要はない
  • 短期的に現⾦化できるものであれば、現⾦等価物とみなす
  • 現⾦化に相当の時間がかかり、現⾦回収上のリスクが⾼いものは、現⾦等価物として認めるのが難しい
    例)割賦販売の売掛⾦
例)対価として売買⽬的有価証券を受け取った場合
  • 販売(市場での売却)という過程を経なければ現⾦化できないため、現⾦等価物とみなさない
  • 必要に応じて、市場で直ちに売却(現⾦化)できることから、⽀払⼿段として認め、現⾦等価物とみなす

現⾦等価物の判断基準

  • 利益の処分可能性を重視すれば、現⾦等価物には「即時の換⾦性」が求められる
  • 収益の対価に現⾦等価物が含まれ、それが即時現⾦化できるものでなれば、利益の処分可能性に資⾦的な裏付けは保証されない
  • 「② ⽀払⼿段に充当する資産」の⽅が資⾦的な裏付けを保証する