大学レベルの会計

16. 近代会計の成立

近代会計の成立

  • 会計の構造の面から見た近代会計の成立 = 19世紀イギリスの発生主義にもとづく期間計算の成立
    • 14~15世紀イタリアには複式簿記の成立
    • 16~17世紀ネーデルラントには期間計算の成立
    • 18~19世紀イギリスには発生主義の成立
  • 期間計算は、まず「財産法」という方法で行なわれた。
    • 期首(前期末)の正味財産と期末の正味財産とを較べる。
    • 期末の正味財産 - 期首の正味財産 = 利益
    • 財産が増えた結果(増えた分が利益)しか分からない。
  • やがて「財産法 → 損益法」と移行。
    • 収益と費用の差額から利益(または損失)を算出する。
    • 収益 - 費用 = 利益
    • 収益や費用(そして「収益 - 費用」)は、財産が増えた原因を示す。
    • 「財産法 → 損益法」は「ストック → フロー」としても捉えられる。
  • 会計の基本的な考え方は、静態論と動態論に大別される。
    • 歴史的には「静態論 → 動態論」と移行

静態論と動態論

  • 静態論
    • かつての会計においては、債権者保護を重視し、債務の弁済に用いることのできる財産(担保財産)がどれだけあるか、を貸借対照表によって示すことが重視された。
    • かつては、資本と経営との分離がなく、投資者という者が存在しなかったため、保護すべき対象は債権者しかいなかった。
  • 動態論
    • 資本と経営との分離が生じた情況において、投資者に企業の収益力を示すことを重視し、それを担う損益計算書を貸借対照表よりも重視。
    • 会計の主目的を期間利益計算とし、期間利益計算を適正に行なうべく、発生主義を取り入れた。
  • 「静態論 → 動態論(貸借対照表 → 損益計算書)」と移行した結果、現行の会計は動態論にもとづいている。

会計の発展

  • 会計の移行 → 適正な利益計算のために行われてきた
    • 現金主義 → 発生主義
    • 財産法 → 損益法
    • ストック → フロー
    • 静態論 → 動態論
    • 貸借対照表が主役 → 損益計算書が主役
  • 近年は会計(会計情報)における利益(利益情報)の重要性が低下してきている。
  • 「静態論 → 動態論 → 静態論」といったように、静態論へ回帰しつつある。
    • 「収益費用アプローチ vs.資産負債アプローチ」という捉え方のもと、昨今の動向を「収益費用アプローチ → 資産負債アプローチ」と理解することに依拠する。
    • 「新静態論」と呼ぶ向きもあれば、「かつての静態論とは似て非なるもの」とする向きもある。
    • こうした回帰は「キャッシュフロー重視、キャッシュフロー計算書重視」の風潮に依拠する。

15. 会計監査人

会計士による監査人の成立

  • 近代会計制度
    • 近代会計制度は、「会計プロフェッションを監査人に充てる」という制度の成立によって完成。
    • 会計士のメイン業務 = 監査
  • 19世紀のイギリス、鉄道会社の大半がロンドン証券取引所に株式を上場
    • 鉄道ブームにおける資金調達
    • 資本と経営との分離の進行
    • 遥有株主の増加
    • 株主監査人が監査を担当

株主監査人廃止までの歴史

  • 19世紀 鉄道会社は個別法によって設立 → 監査人は株主でなければならない
  • 1845年 会社約款統一法 → 監査人は株主であることを要する(株主監査人の義務化)
    • 監査人は会計士等を会社の費用負担を持って雇用できる → 専門性を持つ監査人の補助者を認めていた
  • 1849年 ウィリアム・ウェルシュ・デトロイト事務所が、グレイト・ウェスタン鉄道の監査人補助を担当
  • 1856年 株式会社法 → 監査人は株主であることを要しない
    • グレイト・ノーザン鉄道の株主記録係レオポルド・レッドパスによる横領事件 → デトロイト事務所に調査依頼
  • 1857年 金融恐慌
  • 1862年 会社法 → 監査人は株主であってもよい
  • 1866年 金融恐慌
  • 1868年 鉄道規制法 → 監査人に株主所有を求めない
  • 1878年 シティ・オブ・グラスゴウ銀行が粉飾決済の隠蔽により支払い停止
    • 無限責任会社のため、株主の多くが破産
    • 独立監査が行われていなかった
  • 1879年 会社法
    • 無限責任会社の有限責任化を容易にした
    • 有限責任会社と登記される銀行に独立監査を強制
    • 勅許会計士にとって重要性を持つ最初の法律
  • 1900年 会社法 → すべての会社に監査を強制
  • 1947年 会社法 → 監査人を特定の会計士団体メンバー等に限定 → 監査人の専門化
    • 「会計士による監査が行わなければ株主が納得しない社会情勢」をもたらしたのは、スコットランドの会計プロフェッション(専門性を持つ会計士)の存在であった。

14. 会計プロフェッション

会計プロフェッション

  • 「会計プロフェッションによって担われる監査」が、近代会計制度の完成をもたらす。
  • 会計プロフェッション = 日本では「公認会計士」
  • 公認会計士の業務
    • 監査(法律によって公認会計士しかできない)
    • 会計
    • 税務
    • 経営コンサルティング

会計プロフェッションの誕生

  • スコットランド
    • 1854年 「エディンバラ会計士協会」の設立 → 勅許会計士(チャータード・アカウントタント)の誕生
    • 1855年 「グラスゴウ会計士保険数理士協会」の設立
    • 1867年 「アバディーン会計士協会」の設立
  • イングランド
    • 1870年 「ロンドン会計士協会」の設立
    • 1872年 「イングランド会計士協会」の設立
    • 1880年 上記2団体とリヴァプール、マンチェスター、シェフィールが統一され、「イングランド&ウェイルズ勅許会計士協会」の設立
      • 会計士のステイタス
      • スコットランド → 専門性が高い、司法プロフェッションの一員
      • イングランド → 簿記係程度

会計士の仕事

  • 19世紀前半、破産関係がほとんど → 会計士の専業化が進む
    • 19世紀 景気変動による凶荒が周期的に起きていた
    • 1831年 破産裁判所法の成立
    • 1848年 株式会社解散法の成立
    • 1856年 株式会社法の成立
    • 1862年 会社法によって、官選清算人に会計士が選任されるようになる
    • 1866年 イングランドの巨大金融機関オヴァレンド・ガーニィ商会の支払い停止 → 金融恐慌
    • 1869年 破産法によって会計士の破産関係の仕事が増加
    • 1878年 スコットランドのシティ・オブ・グラスゴウ銀行が支払い停止
  • 破産関係の仕事が抱える問題
    • 会計士のイメージダウン
    • 報酬が安い
    • 仕事のあるなしが景気に左右される
  • 会計士のイメージダウン → 団体設立 → 監査業務への移行
    • 1853年 スコットランド破産法 → エディンバラ会計士協会の設立
    • 1856年 スコットランド破産法の改正
    • 1883年 破産法 → 破産関係の仕事が会計士から官史に移る
    • 1890年 会社法 → 破産関係の仕事が会計士から官史に移る
    • 1890年代 会計士の仕事が監査業務へと移行

13. 固定資産と減価償却

固定資産

  • 流動資産 = 短期的に出入りする資産
  • 固定資産 = 複数年に渡って保持する資産(建物、備品、車両など)
  • 固定資産 → 期をまたいで使用する → 一年間の利益計算に入れてしまうのは適切ではない → 特定の期間に分割して「減価償却費」で計上

減価償却

  • 減価償却の出発点
    • 18~19世紀イギリスの産業革命期における固定資産の著増
    • 生産形態が手工業生産 → 機械による大規模工場生産 → 機械や工場の建物といった固定資産の著増
    • 交通革命(運河業や鉄道業)→ 船舶や車輛や線路といった固定資産の著増
    • こうした情況が減価償却の考え方をもたらし、やがて減価償却の実践は一般化する。
      • 固定資産をどのように利益計算に関連付けるか、というところに近代会計がある。
      • 減価償却思考の確立 = 近代会計の成立
  • 19世紀前半
    • 生産設備を貸借しての経営が一般的
    • 配当を増額するために、減価償却を減額または中止する動き
    • 「固定資産の買い替え」を意識していなかった。
  • 19世紀後半
    • 貸借経営から自己所有経営への移行
    • 固定資産観の変化 → 固定資産の陳腐化を意識
    • 減価償却の意義の普及
      • 固定資産の買い替えのための資金の蓄積
      • 減価償却 → 利益の減額 → 配当の減額 → 資金の支出が減少 → 資金の蓄積 → 蓄積した資金で、新しい固定資産を購入

12. 会社法の近代化と株式会社制度

会社法の歴史

  • 1844年 株式会社法の成立
    • 「準則主義」を採用。
    • 法律によって一定の要件が規定され、それを満たせば法人格が認められる。
    • 登記だけで法人が設立できるものだった。
  • 1845年 会社約款統一法の成立
    • 公共事業会社の特許(個別法)に関する規定
  • 1845~1848年 不況
    • 出資者の有限責任を求める議論が高まる。
  • 1855年 有限責任法の成立
    • 準則主義のもと法人格を得た会社では、株主の責任を出資額に限る。
  • 1856年 株式会社法の改定
    • 会社の登記法をより近代化へ。
  • 1862年 会社法の成立
    • 会社に関わる最初の総合的な法律
    • 近代的な会社法のはじまり
    • 会社に関する大憲章

会社法の近代化

  • 準則主義と出資者の有限責任
  • 19世紀の後半に一般化
  • 会社法の近代化プロセス = 株式会社制度の一般化プロセス

19世紀イギリス

機能面 構造面
  • 発生主義に基づく期間計算
  • 近代会計制度の完成
  • 委託・受託の関係(資本と経営の分離)の近代化
  • 会計プロフェッションによる監査
  • 産業革命、交通革命による固定資産の問題
  • 構造面における発生主義
  • 大資本の調達の必要性 → 株式会社という企業形体の成立

11. 発生主義

発生主義の成立

  • 会計は「現金主義 → 発生主義」へと移行
    • 現金主義の会計 = カネの出入り、にもとづいて利益を計算、把握する会計
    • 発生主義 = 非現金主義

現金主義

  • 当座企業の場合
    • 企業の全生涯に入ってきた資金 - 企業の全生涯に出ていった資金 = 利益
  • 継続企業における期間計算の場合
    • その期間に入ってきた資金 - その期間に出ていった資金 = 利益
  • 現金主義からの離脱は、信用取引の一般化をもってはじまり、非現金主義は固定資産の増加(による減価償却の成立)をもって成立(確立)した。
    • 信用取引の一般化は都度に見られた。
    • 減価償却の成立は、19世紀のイギリス。

信用取引

  • 債権(売掛金)が生じたという事実をもって利益を計算する。

減価償却

  • 固定資産 = 複数の期間にわたって利益を得るために使用されてゆくもの
  • 減価償却 = 固定資産の購入金額を特定の期間に配分すること

10. 産業革命と会計

企業形体観

  • 当時の企業形体観 = アダム・スミスの『国富論』
    • 資本と経営とが一体となった形体が、最も効率的な企業形体とする。
      → 資本と経営との分離の非効率性
    • 株式会社形体の一般化にブレーキをかけていた。
    • ただし、巨大の資本を必要とする事業については、株式会社のような形体は適当としている。
  • エイジェンシー・セオリー
    • 経営者を出資者の段取りとしてとらえ、資本と経営との分類の状態を「本人の代理人との関係」としてとらえる。
    • エイジェンシー・コスト = 財産の所有者本人が、自分で財産の管理を行う場合と、代理人が管理する場合において生ずるコスト
  • 産業革命は、事業に要する資本の増大をもたらしたが、株式会社という企業形体は一般の商工業において、ただちに採用されなかった。

バブル会社禁止法の廃止

  • 産業革命
    • 1760年代から1830年頃
    • 商業資本主義(重商資本主義)から、産業資本主義の時代を迎える。
    • 世界で最も早く成し遂げたのはイギリス
      • 世界の工場
      • 綿工業に関連して技術革新が起きる。
      • 製鉄法の発明 → 石炭生産量の増大 → 蒸気機関 → 交通革命
    • 18世紀後半、運河建設熱の高まり「運河マニア」
    • 1830~1840年代、鉄道業への投資熱が最高潮「鉄道マニア」
    • バブル会社禁止法によって採用された特許主義は、法人設立を困難にした。
    • 巨額の資本を必要とする事業は、議会の個別法(特許)によって、法人格を持つ会社が行っていた。
  • バブル会社禁止法の廃止
    • 19世紀初頭、イギリスにおいて南アメリカ市場への輸出熱が沸く。
      • 1808年、投機ブーム
      • 法人格なき株式会社が増産。
      • 南海バブルの再来。
      • バブル会社禁止法によって訴訟が起こるも、法廷の判断はバラバラ。
        → バブル会社禁止法の存在意義が議論される。
    • 1824~25年の好景気による投機ブーム
      • バブル会社の増産
      • 株式会社の規制に関して議論される。
    • バブル会社禁止法の廃止

9. 株式会社

株式会社の変遷

1553年 ロシア会社の設立
広義での「最初の株式会社」
1600年 ロンドン東インド会社の設立
勅使会社
1602年 オランダ東インド会社の設立
勅許会社
1613年 第一次合本の成立
株式会社という形体(合本会社)が成立
出資者の有限責任はない
当座企業的な性格が残存
株主総会は閉鎖的
1657年 オフィヴァー・クロムウェルの清教徒権による特許
出資を一般開放
民主的な株主総会
完全な継続性の成立
配当システムの完成へとつながる
1662年 破産者法の成立
全出資者の有限責任が許容された
1668年 イギリス東インド会社の設立
名誉革命で力を得た反対派が設立
1709年 合同イギリス東インド会社の設立
ロンドン東インド会社とイギリス東インド会社の併合
東インド会社における株式会社の進化は、利益の計算方法の進化を促す。
継続性は期間計算へつながり、18世紀には東インド会社は年次期間計算を導入。

南海バブルの変遷
17世紀、「株式会社」はさまざま業種に普及。

1711年 南海会社の設立

  • 南海 = 南アメリカ沿岸
  • 南海バブルの発生
  • 公債の債権者には、債権額に応じた株式が与えられた。
1720年

南海会社の公債整理計画案を議会が承認

  • 株式の時価で、公債と株式を転換
  • 南海株式会社が株式の吊上げを画策 → 投機ブームが最高潮
  • 法人格なき「バブル会社」が増加

バブル会社禁止法

  • 公的な損害や不都合をもたらす事業の禁止
  • 法的な認可(法人格)がない会社は、法人としてのふるまい、譲渡可能な株式の募集、株式譲渡を禁止
  • 法人の設立に「特許主義」を採用
1720年 南海会社が他社を規制するために告知を裁判所に請求

  • 株価全体が暴落で大恐慌
  • 南海バブルの崩壊
  • 南海バブルの崩壊による大恐慌は、株式会社に対する不信感を生む。

8. 株式会社制度

近代会計の成立環境

  • 機能面から見た近代会計の成立環境
    • 株式会社という近代的な委託・受託の関係の生成
  • 構造面から見た近代会計の成立環境
    • 期間計算が発生主義をもって行われるようになって成立
    • 発生主義は、産業革命の交通革命をもって完成
    • [構造面]          [機能面]
      産業革命 → 大資本の調達 → 株式会社の一般化

株式会社制度の形成

  • 企業形体の近代化プロセス = 株式会社の形成プロセス
    • 株主(委託)と経営者(受託)との関係をもって成り立つ
  • 中世の教会の権威が低下するにつれて、商人ギルドの拡大がもたらされるが、それにつれて、新しい形態の組合的な企業が、ギルドに取って代わりはじめる。
    • 商業資本主義の成長
    • 株式会社形成の基礎をなした。
  • 新しい組合的な企業の登場
    • 規制組合(regulated company) → 規則があるだけで合資という考えはない
    • 合本会社(joint-stock-company) → 広義の「株式会社」

7. 期間計算の普及

口別計算から期間計算へ

  • 口別計算 = ひとつの事業プロジェクト(ひと仕事)における利益の計算
  • 当座企業の場合 → 口別計算ですべての利益がわかる
    継続企業の場合 → 口別計算ですべての利益がわからない → 期間計算が必要
  • 1543年、ジャン・イムピン著「新しい手引き」
    • 未販売商品(売れ残り商品)を独立の項目で取り扱う → 期間計算の存在
    • 期間損益計算の芽生えを示すものが見られる。

期間計算の普及

  • 14、15世紀、ヴィエネチアの個人企業、同族企業は、すべての利益を把握する必要はなく、口別計算で事足りていた。
  • 14、15世紀、イタリアのフィレンツェでは、他人同士からなる組合的な企業において、メンバーに利益を厳密に分配する必要が生じた。
    • 期間に区切ってすべての利益を把握する期間計算が採用された。
    • まだ非定期的な期間計算であった。
  • 大規模化 → 他人資本を集める必要性 → 口別計算から期間計算へ
  • 16世紀、アルトウェルペン
    • 年数回、定期市が開かれ、あるときから取引の清算がその時期に行われるようになった。
    • 定期的な期間計算、年次期間計算の存在
  • 17世紀、アムステルダム
    • ポルトガルの支配下だった東インド貿易を、オランダが軍事力で征し、ヨーロッパへの香辛料供給を独占
    • 1602年、オランダ東インド会社の設立 → 株式会社の起源
  • 株式会社における株式の自由譲渡性
    • 株式を譲渡(売却)することで、出資者は元手を回収することができる
    • 年次期間計算の一般化