ステップ4:経営幹部は一時的に損失を容認する
明白な巨大市場で消費に対抗することは「金がかかる挑戦だ」ということが次第に明らかになると、企業の上層部は長期的な利益を見据えて、しばらくの間、事業が多額の損失を出すことを受け入れるようになる。持続的イノベーションの状況では、これが通用することが多い。
製品発売前に積極投資を行い、チャネルに十分な製品を供給して、予想需要を満たすだけの生産能力を確保することは大切だが、破壊的イノベーションの状況にこれは当てはまらない。
資金の過剰供給は、新事業の成功にとっては逆効果である。支出レベルが高くなると、その費用を賄える顧客や市場が必然的に限られるからである。その結果、新しい用途を求めて無消費からやって来た「シンプルな製品でも喜んでくれる顧客」が、魅力のない顧客となってしまう。そして最も多くの顧客に到達できる、最も大きなチャネルだけが、十分な収益を早くもたらすと考えられるようになる。
この段階で企業資金の特性の変質が完了し、「成長を気短に急かすが、利益は気長に待つ悪い資金」になってしまう。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社