10. 株式会社

株式会社

  • 株式を発行して、多くの人びとから多額の資金を集める法人企業
  • 現在の資本主義経済では、一般的な企業形態
  • 資金を出して株式を持つ株主と、実際に経営にあたる人とが別(所有と経営の分離)
    • 専門的な経営の知識や能力を持った取締役からなる「取締役会」で経営方針を決め、「代表取締役」が中心となって執行する
  • 株式を株式市場で売買することができる
  • 日本では、個人の株主より、銀行などの企業が株式を持つ法人株主の比重の方が高い
    • 同一企業グループ内の企業同士で、株式を相互に保有すること(株式持ち合い)も多い(法人資本主義)

株主

  • 会社のあげた利潤の一部を、配当として受け取る
  • 株主総会で、1株につき一つの議決権を持っている
  • 株式の売買で利益(損益)を得ることもできる
    • 株式の価格(株価)が購入したときの株価より上がれば、その差額が利益となる(キャピタル・ゲイン)
    • 株価が下がると、その分が損となる(キャピタル・ロス)
    • 会社が倒産すれば、その株式の価値がゼロになってしまうこともある
  • 会社の活動に対して、その出資額の範囲内で有限責任を負うだけ
    • 会社の負債まで返済する無限責任は負っていない

株主総会

  • 株式会社の最高意思決定機関
  • 取締役の選任や決算の承認などを行っている

9. 企業の種類

① 公企業

  • 第1セクター
  • 国や地方公共団体が出資・経営するもの

② 私企業

  • 第2セクター
  • 民間が出資・経営する企業
    • 会社企業
      • 営利を目的とする法人のうち、会社法によって設立されるもの
      • 財・サービスの生産、販売を継続的に営む組織体
    • 組合企業
      • 協同組合
      • 共通する目的のために、個人あるいは中小企業の経営者が集まって組合員となり、事業体を設立
      • 事業体を共同で所有し、民主的な管理運営を行っていく相互扶助組織

③ 公私合同企業

  • 第3セクター
  • 国や地方公共団体と民間が合同で出資・運営するもの
① 公企業 国営企業
  • 国有林野事業
  • 独立行政法人国立印刷局(紙幣・切手・旅券や政府刊行物等の印刷)
  • 独立行政法人造幣局(硬賓の製造等、旧大蔵省造幣局)
地方公営企業
  • 地方公共団体が経営
  • 上下水道・電気・交通・ガスや公立病院など
公社
  • 政府や地方公共団体が出資する法人
  • 政府の出資する法人のうち、
  • 日本専売公社、日本電信電話公社は民営化
  • 日本郵政公社は、2006年日本郵政株式会社が発足し、 2008年に日本郵政株式会社に郵政三事業が移管
② 私企業 会社企業 合同会社
  • 2名以上の出資者(社員)で構成
  • 出資者は無限責任(会社が倒産したとき、会社の負債を返済するために、個人の財産を提供する)を負う
  • 利益の分配や議決権は会社の規則で決められる
  • 同族や仲間内での小規模な企業経営に向いている
合資会社
  • 2名以上の出資者(社員)で構成
  • 無限責任社員(経営者)と有限責任社員からなる
有限会社
  • 50名以下の出資者(社員)からなる
  • 出資者は有限責任を負う
  • 比較的小規模な企業を想定している
  • 2006年、会社法の施行により、有限会社法が廃止され、新たな有限会社の設立はできなくなった
株式会社
  • 有限責任社員のみで構成される会社
組合企業
  • 出資者(組合員)は有限責任を負う
  • 農業協同組合、生活協同組合など
③ 公私合同企業 特殊法人形態
  • 日本銀行、日本赤十字社
株式会社形態
  • 公共性の高い事業ではあるが、行政機闘がおこなうよりも、会社形態でこれをおこなう方が適切であると判断されて設立されたもの
  • 日本たばこ産業(JT) 、 日本電信電話(NTI)、国際電信電話株式会社(KDDI)など
金庫
  • 特殊法人の一種
  • 銀行の業務には馴染まない、または民間の銀行では限界のある投融資業務のために設けられた政府系金融機関
  • 商工組合中央金庫(商工中金)、農業協同組合(JA)、農林中央金庫
公団
  • 社会資本を整備するために、政府・地方公共団体・公社などが出資して設立する公共法人
  • 民間にも資金を求め、独立採算性を有している
  • 現在、多くは廃止・民営化が進められている
    • 日本道路公団・本州四国連絡橋公団 → 高速道路保有の株式会社
    • 国民生活センター → 独立行政法人国民生活センター
    • 国際協力事業団 → 独立行政法人国際協力機構(JICA)
    • 日本育英会 → 独立行政法人日本学生支援機構
    • 日本住宅公団 → 都市再生機構

8. 消費と国民経済

日本の消費

  • 家計の消費動向が、国民経済に大きな影響を与えている
    • 現在、 日本の国民総支出の6割弱を「民間消費支出」が占めている
  • 消費の特徴
    • 好況で所得が多くなると増加し、それがさらに好況を拡大する
    • 不況や景気の先行きが不透明なときは落ち込み、不況からの回復が遅れる
    • 物価が上昇すると、賃金の上昇はそれより遅れる傾向があるため、実質所得が一時的に減少し、消費は落ち込む
    • 株や土地の価格上昇によって資産の価値が上がると、消費も増えることがある(資産効果)
    • 外国為替相場の円高が進むと、輸入品の価格が下がり、海外製品の消費が増加する傾向がある

7. 家計

家計の収入

  1. 労働によって得た賃金や、個人の事業の収入などの「勤労所得」
  2. 財産の運用によって得た「財産所得」
    • 預貯金からの利子
    • 株式からの配当
    • 家や部屋を貸して得る家賃
    • 土地を貸して得る地代
  3. 年金や失業保険給付などの「移転所得」

消費性向と貯蓄傾向

  • 可処分所得
    • 「所得」から「税金や社会保険料」を差し引いた残りの部分
      可処分所得 = 所得 - ( 税金 + 社会保険料 )
  • 消費性向
    • 可処分所得に占める消費の割合
  • 貯蓄性向
    • 可処分所得に占める貯蓄の割合

家計の貯蓄

  • 家計の貯蓄(貯金)は、銀行を通して企業や公共事業へと行き渡る
    貯蓄

    銀行預金などの貯金
    ↓        ↓
    企業へ融資  財政投融資の原資
    ↓        ↓
    設備投資の資金   公共事業の資金

日本の貯蓄

  • 日本の貯蓄性向は、病気や教育・老後に備えての貯蓄が多く、かつては諸外国よりも高かった
      ↓
    景気後退により、家計所得が伸び悩む
      ↓
    貯蓄を取り崩して生活費にあてる高齢者所帯が増加する
      ↓
    2013年以降、貯蓄率は2%を下回る
  • 経済が発展して所得が多くなる
      ↓
    エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)が小さくなる
      ↓
    教育・教養・娯楽関係の支出の割合が大きくなる
      ↓
    消費の多様化・高級化が進む

5. 国民経済と経済主体

世界経済

  • 一国の経済を単位とする「国民経済」で形成されている

国民経済

  • 主に「家計・企業・政府」という3つの経済主体から構成されている

各経済主体の経済活動

  • 家計 → 消費
    • 企業や政府に労働や資本・土地などの生産要素を提供
    • その対価として得た賃金や利子・配当、 地代などの収入をもとに、企業から財やサービスを購入して消費
  • 企業 → 生産
    • 資本を元手に、工場や機械設備などを整える
    • 労働者を雇い、商品を生産して、家計や政府に販売
  • 政府 → 公共サービスなどの提供
    • 家計や企業から租税を徴収
    • 税収をもとに、道路や橋・公園などの公共財(社会資本)、教育・警察・消防・国防などの公共サービスを提供

4. 経済のグローバル化

市場経済のグローバル化

  • 多くの社会主義国が、資本主義経済へと転換
  • 旧社会主義圏の低賃金労働が利用できるようなった
  • 旧社会主義圏が新たな市場へ

金融のグローバル化

  • IT技術の進歩が、新しい金融商品を次々と生み出す

2007年夏、サブプライム・ローン問題が勃発

  • 住宅価格が下落し、信用力の低い人向けの住宅ローンが不良債権化していった

2008年秋、リーマン・ショック

  • アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻
  • 世界的な金融危機をもたらした
  • 金融機関は投資や融資を控えるようになった
  • 企業は経営難に陥り、世界経済は深刻な不況となった

G20による金融サミット

  • 日・米・欧に、中国やインド、ブラジルなどの新興国を加えた主要20カ国・地域による首脳会議
  • 各国が足並みを揃えて、積極的な財政金融政策をとり、世界経済の回復につとめている

3. 社会主義経済の成り立ち

産業資本主義時代

  • 労働者は、低賃金・長時間労働などの劣悪な労働条件と、経済的不平等によって貧困

ドイツの経済学者、マルクスの主張

  • マルクス経済学の祖、科学的社会主義
  • 主著『資本論』(1867)
  • 資本主義経済の構造的矛盾を指摘
  • 労働力の商品化による人間疎外を克服するために、社会主義社会の実現が必要である

1917年、レーニンの指導による「ロシア革命」

  • マルクスの考えに基づき、世界最初の社会主義国である「ソビエト連邦(ソ連)」が成立した

第二次世界大戦後

  • 社会主義経済は、東欧や中国・ベトナムなどにも広がった

1960年代初め

  • 資本主義諸国と並ぶ経済成長をとげた国も現れた

1970年代後半、社会主義経済の問題

  • 政府主導の集権的計画経済おいて問題点が現れてきた
    • 商品の品質改善が進まず、消費者の多様なニーズに応えられない生産システム
    • 能力や労働力の質に対応しない賃金制度などによる勤労意欲の減退
    • 技術革新に対する立ち遅れ

ソ連のその後

  • 利潤方式の導入
  • ペレストロイカ改革
  • 1991年、ソ連は解体し、ロシアへ
  • 社会主義義体制を放棄して、資本主義体制へ転換

中国のその後

  • 「社会主義市場経済」により市場経済化・工業化を進め、世界の「生産基地」へ
  • 2010年、GDPの規模が日本を追い越して、世界第2位の経済大国へ
  • 国内問題の拡大
    • 臨海部と内陸部の経済発展の格差、貧富の格差の拡大
    • 公害問題の発生、環境問題の深刻化
    • 1997年、香港返還による一国二制度

2. 資本主義経済の成り立ち

18世紀半ば、イギリスの産業革命

  • 蒸気機関や紡績・織物の機械などが発明・改良された
  • 生産が「工場制手工業」から「工場制機械工業」へと転換した
  • 繊維製品を安く大量生産することが可能となり、多くの労働者が工場で働くようになった
  • 農業中心の「自給自足的な経済」から、工場生産中心の「資本主義経済」へ移行した

資本主義経済は「産業資本主義」へと発展

  • 多数の小規模な企業による自由競争が行われた
  • 競争に勝つために、他社よりも良い商品を、より安く生産する
    • 技術革新(イノベーション)
    • 生産規模の拡大によるコストの引き下げ(規模の経済)
    • 世界の工場
  • 商品の需要と供給は、価格によって調整され、市場経済が機能するようになった
  • 政府の役割を、国防や治安の維持など必要最小限なものとすることが理想となった
    • 夜警国家
    • 安価な政府

イギリスの経済学者の主張

  • イギリスの経済学者、アダム・スミスの「自由放任主義」
    • 経済学の父、古典派経済学の祖
    • 主著『国富論』(1776)
    • 自分自身の利益を追求する個人や企業の自由な経済活動が、神の「見えざる手」に導かれて公共の利益を促進する
    • 政府は経済に干渉しない
  • イギリスの経済学者、リカードの「比較生産費説」
    • 近代経済学の父
    • 政府による貿易への干渉をやめ、 自由貿易を行うことが、各国の利益になる

産業革命の拡大

  • フランス、ドイツ、アメリカへ広がった
  • 日清戦争(1894-1895)・日露戦争(1904-1905)の頃には日本にも広がった

19世紀後半、重化学工業化による「独占資本主義」

  • 鉄鋼や内燃機関・電気などの分野で技術革新が起こった
  • 企業が大規模化し、 多額の資本が必要となり、「株式会社制度」が発達した
  • 生産の集積・集中が進む
  • 競争に勝ち残った少数の大企業が市場を支配するようになった(寡占化)

欧米資本主義諸国の「帝国主義」

  • 軍事力を背景に、アジア・アフリカの植民地化政策を進める
    • 原材料の供給地
    • 製品の輸出市場
    • 資本の投資先

1929年、アメリカを発端とする「世界恐慌」

  • 企業の倒産や労働者の失業など、大きな経済的混乱を引き起こした
  • 植民地を持つイギリスやフランスの対応
    • 保護貿易主義(ブロック経済)
    • 自国と植民地間の貿易の利益を優先し、他国からの輸入に対して高い関税をかけた
    • イギリス:1932年、オタワ連邦会議で、イギリス連邦内の関税を引き下げ、連邦外の国に高い関税を課す「スターリング・ブロック」を結成した
    • フランス:植民地や友好国と「フラン通貨圏」を築いた
  • 植民地をあまり持たないドイツ・イタリア・日本の対応
    • 全体主義(ファシズム)
    • 自国の勢力圏を拡大するために、植民地の再分割を求めていった
  • アメリカの対応
    • フランクリン・ルーズベルト大統領による「ニューデイール政策」
    • 政府が積極的に経済に介入し、新しい法律を制定
      • 全国産業復興法
      • 全国労働関係法(ワグナ一法)
      • 社会保障法
    • 管理通貨制を採用
      • 赤字公債を発行して、公共事業を中心に財政支出を増加させた

イギリスの経済学者、ケインズの主張

  • マクロ経済学を確立
  • 主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』
  • 不況の原因は、社会全体の有効需要の不足にある
  • 完全雇用の実現には、政府の積極的な財政政策などによる有効需要の創出が必要である

第二次世界大戦後の資本主義諸国

  • ケインズ政策を取り入れた
  • 経済政策の目標は、経済の安定成長と完全雇用、国民福祉の充実をめざす「福祉国家」の実現
  • 政府の経済活動に対する役割が大きくなった
    • 政府と民間部門(私企業や家計など)が密接な関係を持つ「混合経済(修正資本主義)」

1980年代、アメリカの「小さな政府」

  • ケインズ政策に基づく「財政支出の増加、財政赤字の拡大、インフレ圧力の増大」
  • 規制緩和や民営化などによって、政府の役割を縮小し、市場経済本来の機能を回復させる

経済のグローバル化

  • 世界規模で活動する多国籍企業の登場
  • コンピュータを利用した国境を越えた金融取引
  • IT革命の進展によるインターネットビジネスの登場
  • 国民経済の枠を超えた経済活動

1. 経済とは

経済とは

  • 経済=財・サービスを生産し、消費する人間の活動
  • 現代には、2つの経済体制が存在する
    1. 資本主義経済
    2. 社会主義経済
  • 多くの国々が、資本主義経済の仕組みを採用している

資本主義経済とは

  • 機械や原材料などの生産手段の私有が認められている(私有財産制)
  • 利潤の追求を目的とした自由競争がおこなわれている(経済活動の自由)
  • 多くの財は、市場で売るための商品として生産される(財市場)
  • 労働力も、市場で商品として売られている(労働市場)

社会主義経済とは

  • 原則として、生産手段の私有は認められない
  • 工場、機械設備、農地などの生産手段は、固有または公有である
  • 生産は、政府の立てた計画に基づいて行われる(計画経済)
  • 計画経済の成果は、労働に応じて分配される
  • 生産手段を私有する資本家はおらず、すべての国民は労働者と農民である