クリステンセン教授は「イノベーションのジレンマ」の序章の冒頭で次のことを述べている。
- 業界をリードしていた企業が、ある種の市場や技術の変化に直面したとき、図らずもその地位を守ることに失敗する。
- 優良企業は、顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資したからこそ、リーダーの地位を失う。
- 市場の動向を注意深く調査し、システマティックに最も収益率の高そうなイノベーションに投資配分したからこそ、リーダーの地位を失う。
- 優良企業が失敗するのは、経営者が「破壊的イノベーションの法則」を無視したか、この法則に逆らったからである。
そして彼は、以下の謎を解き明かすために、ディスク・ドライブ業界を調査・分析した。
“ 新技術がどのような理由で、どのような場合に大企業を失敗に導くかを理解した上で、既存事業の短期的安定に適したことを行いながら、既存事業を衰退させる可能性をもつ破壊的技術にも十分な資源を割り当てるにはどうしたらよいか ”
ディスク・ドライブ業界は、「優良企業にきびしい局面が訪れる」という経験を何度も繰り返した業界である。これまでに6度、新しいアーキテクチャーとなる技術が現れたが、業界の有力企業がつぎの世代でもリードを維持できたのはそのうち2回だけであった。
ディスク・ドライブ業界の主力企業がつまずいた理由を紐解くとともに、機械式掘削機業界や鉄鋼業界における失敗を分析することで、破壊的イノベーション理論が広範囲で有効であることを確かめた。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社