2. 小さく始める:成長を気長に待てるよう、事業部門を分割する
分散型企業は、一枚岩の中央集権型企業に比べて、破壊的イノベーションを追求できる価値基準を長く保つことができる。複数の事業部門にわかれた分散型企業には、破壊的成長の機会を求めるマネージャーが多い。そのような理由から、運営組織は比較的小規模にとどめておく方がよい。
ヒューレット・パッカード、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゼネラル・エレクトリックなど、過去30年間で変身を遂げた企業のほとんどが、自律した多数の小規模な事業部門にわかれている。これらの企業は、既存の事業部門のビジネスモデルを破壊的成長事業に変化させることで、変身を遂げたわけではない。新しい破壊的事業部門を設立する一方で、持続的技術の軌跡が限界に達してしまった成熟事業を閉鎖または売却することで、変身を遂げたのである。
事業部門を統合して規模を拡大すれば間接費を削減できるが、立ち上げるすべての新事業に対して、急激な成長を要求するようにもなる。は大幅なコスト削減をもたらす可能性はあるものの、破壊性を秘めた機会を迫求するために必要な価値基準を損ないかねない。
ちなみに、小規模な組織、または多数の小組織に分割された大規僕な組織は、破壊に即した価値基準を取り入れることはできるかもしれないが、組織は相互依存型アーキテクチャの要請にも対処する必要があり、その際大規模な統合された組織が必要になることが多い。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社