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ブルー・オーシャン戦略論文集
ブルー・オーシャン戦略論文集
W・チャン・キム (著), レネ・モボルニュ (著), DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (翻訳)
ダイヤモンド社 2018.01.18 328ページ
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (11)
経営幹部がイノベーションのマネジメントにおいて果たすべき役割は4つある。
- 適切な連携プロセスが存在しない場合には、さまざまな行動や決定を、自ら進んで連携させなければならない。
- 部下が新しいコミュニケーション、連携、意思決定のパターンを必要とする、新しい課題に直面したときには、既存プロセスの支配力を崩さなければならない。
- 同じような行動や決定が組織内で繰り返し行われるとき、経営幹部はこれに関わる従業員の活動を確実に導き連携させるためのプロセスを作り出さなければならない。
- 新たな破壊的成長事業を続けざまに立ち上げていくためには、同時進行する複数のプロセスやビジネスモデルを構築し維持する必要がある。経営幹部はさまざまな組織の橋渡しを行って、新成長事業での有益な学習を主流部門に環流させ、適切な「資源 – プロセス – 価値基準」が適切な状況で用いられるよう、押し進めなければならない。
優良企業が破壊的成長事業の創造を初めて企てるとき、経営幹部は1番目と2番目の役割を果たす必要がある。その場合、破壊は新しいプロジェクトであり、そこには必要な連携や意思決定を行うための適切なプロセスが存在しない。主流組織のプロセスのうち、破壊チームが行わなければならない仕事に役立たないものは、回避するか遮断する必要がある。
企業の成長を長期にわたって持続させる成長エンジンをつくるためには、経営幹部は3番目の役割を果たさなければならない。新しい破壊的事業の立ち上げを、周期的で反復的な課題にする必要があるからだ。そのためには、その課題に携わる従業員を繰り返し教育し、破壊的アイデアを直観的に発見して、成功につながる事業計画として形成できるようにさせることが必要である。
4番目の役割は、破壊的事業と持続的事業との橋渡しを行い、適切な「資源 – プロセス – 価値基準」が主流事業から新事業へ、そして再び主流事業へと流れるよう、積極的に監督することである。そしてこの役割こそが、不断に成長を続ける企業をマネジメントすることの本質なのである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (10)
ステップ4:部隊を訓練して破壊的アイデアを発見させる
十分に機能する破壊的成長エンジンをつくるためには、従業員、特に営業、マーケッター、エンジニアを訓練する必要がある。
彼らを教育して、持続的イノベーション、破壊的イノベーションの概念やリトマス試験について、十分理解させる。どのアイデアを持続的プロセスへと導き、どのアイデアを破壊的プロセスに差し向けるべきかを、彼らに理解させることが非常に重要となる。
この訓練は「破壊的機会を発見して、始動者と形成者に報告すること」を、組織の全員に徹底して習得させるためのシステムである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (9)
ステップ3:アイデアを形成するためのチームやプロセスを作る
アイデアが資金を獲得するために戦略・計画へと形作られていくうちに、破壊的成長の潜在能力を失ってしまう。アイデアを成功率の高い破壊的イノベーションに形成するためには、独立的に運営されるプロセスを作る必要がある。
全社レベルのコア・チーム(小規模なグループ “始動者と形成者”)を設置し、このチームに破壊的イノベーションのアイデアを収集させ、それを「リトマス試験」に適合するような破壊的事業計画にまとめる責任を持たせる。また、このチームには「確実に資金が配分されて実行に移されるような、反復可能で信頼できる確実なシステム」を開発させるのである。
コア・チームは破壊理論の実践を通じて、以下のことが対応できるようになる。
- 破壊として形成できるアイデアと形成できないアイデアを判別することができる。
- 破壊的イノベーションあるいは持続的イノベーションとして形成する見込みがあるアイデアを識別できる。
- どのアイデアが既存事業の形成プロセスや資源配分プロセスに注ぎ込まれるべきかを識別できる。
コア・チームが破壊的事業を立ち上げる際には、「戦略的計画や予算策定のための既存の標準的プロセス」を用いることはできない。コア・チームのメンバーは、新事業のマネージャーに戦略的計画や予算管理のテクニックを指導する必要がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (8)
ステップ2:アイデアを適切な形成プロセスおよび資源配分プロセスへ導く経営幹部を任命する
優れた破壊的成長エンジンを作るためには、CEOまたは同等の自信と権限を持った経営幹部による、入念な指導が必要である。また「経営幹部による監督」という取り組みが特に重要なのは、成功がまだ「プロセス」よりも主として「資源」の働きによってもたらされる初期段階である。
新事業を会社の既存プロセスから免除してやり、新しいプロセスの開発が必要だと宣言する。そして、資源配分において各事業の状況や企業全体のニーズに適した判断基準が用いられるよう取り計らうことができるのは、権限を持つ経営幹部をおいて他にいない。
経営幹部は、破壊的イノベーションの理論に精通していなければならず、また破壊的潜在性を持つアイデアと、既存の持続的向上の軌跡上で活用されるべきアイデアとを区別して考えられなければならない。また破壊の足がかりを築くのに適したアイデアを、その成功率を最も高めるようなプロセスに、確実に注ぎ込むという責務を持っている。
経営幹部が果たすべき役割は、時と共に変わる。初期段階の責務は個々の成長事業の個々の決定を監督、指導することだが、やがてアイデアを収集・形成し、資金を配分するためのプロセスを監視し、指導と訓練を続け、環境における風向きの変化に目を配ることが任務となる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (7)
ステップ1:必要になる前に始める
成長エンジンは周期的に、そして財務動向ではなく所定の方針に従って、作動させなければならない。そうすれば、企業がまだ堅調に成長している間に新事業を確実に立ち上げられる上、新事業が急成長するよう圧力をかけられることがない。
成長投資に最も過した時期は、企業が成長を続けているときである。数年後にどれほどの成長が必要になるかを考慮し、それによって決定される周期で、新事業を成長事業のポー卜フオリオに加えていかねばならない。
成長しながら基盤を増強する企業は、創生期にある有望な事業を金融市場のプレッシャーから庇うことができる。有効な戦略を探し出すために、試行錯誤を重ね離陸するまでの時間的猶予を与えられるからである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社
イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (6)
企業が成長事業を連続して立ち上げ、リトマス試験を繰り返し用いてアイデアを形成するか、生成期の破壊的事業を買収するかして、確かな理論を繰り返し用いて事業構築の重要な決定を下すならば、利益ある成長事業を特定し、形成し、立ち上げるための、予測可能かつ反復可能なプロセスが生まれるはずだ。これらを行うための能力を「プロセス」に組み込む企業が、価値ある「成長エンジン」を手にする。
破壊的成長エンジンには、4つの重要な要素がある。
- 必要になる前に始める
- 投資するのに最適な時期は、企業がまだ成長している間である
- 急成長へのプレッシャーは、新事業に多くの誤った決定を下される
- 経営幹部による監督
- 経営幹部が資源配分プロセスを監督する
- 企業のプロセスのうち、どれが適当か、適当でないかを判断する
- 破壊的事業と持続的事業との間の意思疎通を図る
- 専門家チーム “始動者と形成者”
- アイデアを破壊のリトマス試験に適合するように形成する責任を負う
- 理論を用いて状況に即した行動がとられていることを確認する
- 部隊の訓練
- 市場のニーズに最も近いところにいるエンジニアと営業部隊が、何を探すべきかを理解していなければならない
- 適切に訓練された部隊は、適切なアイデアを適切なプロセスへ送り込める
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社