66. 収益と費用の捉え方

動態論からの捉え方

  • 収益と費用 = 経営活動の成果と犠牲
  • 期間利益計算を重視
  • 損益計算書が重要な役割を果たし、貸借対照表は、調整項目を収容するものとして位置づけられる
  • 期間利益の構成要素たる収益(期間収益)と費用(期間費用)とは、経営活動の成果と犠牲を示すものとして、独立的に定義されなければならない

新静態論、資産負債アプローチからの捉え方

  • 経済的資源の状況を重視
  • 貸借対照表が重視され、損益計算書は資本(純資産)の変動原因を示すものとして位置づけられる
  • 各要素の定義
    1. 収益と利得
      • ともに資本(純資産)の増加原因
      • 従属的に定義
    2. 費用と損失
      • ともに資本(純資産)の減少原因
      • 従属的に定義
    3. 資本(純資産)の増減
      • 資本取引以外の取引によって資本の増減をもたらすもの
      • 資本金の追加受け入れや払い出しといった資本取引によっても生ずるため
    4. 利益の額
      • 配当可能額を算定する根拠
      • 経営活動の原資である「資本」と、それによって得た「利益」とは、資本維持の観点からは、厳密に区別しなければならない
      • 配当は「利益」を源泉として行わなければならない
      • もし「資本」から配当を行えば、企業は経営活動の原資を失い、継続企業としての能力を失う
    5. 収益(利益のプラス要素)の認識基準
      • 実現主義を適用する
      • 客観性や確実性を求める
      • 資金性(貨幣性資産の受領)を要件のひとつとする

静態論からの捉え方

  • 債権者保護を重視
  • 貸借対照表が重視され、収益や費用は資本の変動原因を示すものとして位置づけられる
  • 企業の弁済能力(資産の担保性や実在性)が重視されるため、収益・費用・利益にはほとんど関心が向けられない

会計の目的と利益の変化

  • 会計の目的によって、収益や費用の定義や認識基準は異なり、利益の額も変化する
  • 維持すべき資本を「名目資本」「実質資本」「実体資本」のいずれとするかによって、資本と利益との境界、収益と費用の認識、利益の額は変化する
  • 利益の額を変化させる会計の目的
    1. 配当可能額の算定
      配当可能額の算定を目的として計算される利益額は、資金性が重視されることから、比較的小さくなる傾向がある
    2. 将来における経済的資源の流入、流出の判断のための情報提供
      情報提供を目的として計算される利益額は相対的に大きくなる傾向がある
    3. 企業の経営活動の良否の判断

65. 収益と費用

利益の分類

  • 経済価値の増加は、経営活動との関連性によって「収益」と「利得」とに区別され、収益はさらに、その帰属時点によって「期間収益」と「負債(繰延収益)」とに区別される
  • 利益の区分
    1. 収益
      • 期間収益
        • 当期に帰属する収益
      • 繰延収益
        • 次期以降に帰属する収益
        • 負債として貸借対照表に記載される
    2. 利得

費用の分類

  • 経済価値の減少は、経営活動の成果である収益との因果関係によって「費用」と「損失」とに区別され、費用はさらに、その帰属時点によって「期間費用」と「資産(繰延費用、費用性性資産、繰延資産)」とに区別される
  • 費用の区別
    1. 期間費用
      • 当期に帰属する費用
    2. 資産
      • 繰延費用
        • 次期以降に帰属する費用
        • 資産として貸借対照表に記載される
      • 費用性資産
        • 営業活動を行うことによっていずれ費用となる資産
        • 棚卸資産、土地以外の固定資産
      • 繰延資産

収益や費用の認識

  • 「発生主義会計」における収益・費用の認識
    • 発生主義
    • 実現主義
    • 対応原則 など
  • 「現金主義会計」における収益・費用の認識
    • 現金主義のみ
  • 収益を認識するにあたっては、「発生主義(発生原則)」に加えて、「実現主義(実現原則)」を適用し、創出された経済価値の確定性や客観性を確保しなければならない
    • 経済価値の発生は、「いつ、いくら創出されたのか」といった、認識時点や測定額を把握することが困難である。
    • 実現主義の本質は、経済価値の増加の確定性と客観性を確保することである

64. 損益計算書の要素

損益計算書

  • ある期間における企業の経営成績を示すもの
  • 企業の経営成績は、経営活動の成果である「収益」とそのための犠牲である「費用」とによって示される
  • 「収益」と「費用」との差額である「利益(マイナス額の場合は損失)」は、経営活動の結果を示す
  • 経営活動の良否を判断する際には、「収益」や「費用」よりも、「利益」を利用することが多い

損益の概念

  1. 収益
    • 企業が経営活動において新たに創出した経済価値
    • 企業に経済的資源の流入をもたらしたか、もたらすことが確実であるもの
    • 企業は生産活動や販売活動等によって新たな経済価値を創出し、利益を獲得
        ↓
      経済価値の創出 = 収益の発生
        ↓
      収益の発生を認識するための基準 = 発生主義(発生原則)
        ↓
      発生主義 = 収益や費用の認識基準のひとつ
        ↓
      発生主義を用いる会計システム = 発生主義会計
  2. 利得
    • 企業に経済的資源の流入をもたらしたか、もたらすことが確実である経済価値の増加
    • 企業の経営活動における成果とは無関係に獲得されたという点で収益とは区別される
  3. 費用
    • 企業が経営活動において費消、または喪失した経済価値
    • 企業に経済的資源の流出をもたらしたか、もたらすと考えられるもの(広義の費用)
    • 成果である収益を獲得するための犠牲 → 収益との因果関係(収益への貢献)
    • 費消、または喪失によって減少した経済価値のうち、個別の財やサービス、あるいは期間を媒介とする収益との因果関係が認められるもの(狭義の費用)
  4. 損失
    • 費用以外の経済価値の減少

63. 株主資本以外の純資産

評価、換算差額等

  • 企業が保有する資産を評価替えしたことによって生ずる、自己資本の増加部分
  • 評価、換算差額等の種類
    • その他有価証券評価差額金
    • 繰延ヘッジ損益
    • 土地再評価差額金

新株予約権

  • 株式の交付を受けることができる権利
  • 将来の株主が所有する権利であることから、「払込資本」とは区別して記載される
    • 新株予約権の種類
    • 転換社債等の社債において与えられる予約権
    • 従業員に対するストックオプション

62. 株主資本

払込資本(資本金 + 資本剰余金)

  • 株主から金銭や現物等の払い込みを受けた額のうち、資本金に組み入れられた部分(資本取引を源泉とする)
  • 会社法上の法定資本
    • 株主による払い込み額の2分の1までは資本金に組み入れず、「株式払込剰余金(資本剰余金のひとつ)」とすることができる
    • 企業は、利益処分に際して資本金額の4分の1の額まで積み立てを行わなければならない
      → 資本金組み入れ額を最低限度に抑えようとする
  • 資本剰余金の種類
  • 資本準備金
    • 株式払込剰余金
    • 吸収合併や子会社化などの組織再編成によって生ずる資本剰余金
  • その他資本剰余金
    • 減資や資本準備金の取り崩しによって生ずる資本金、および資本準備金減少差益
    • 自己株式の処分によって生ずる自己株式処分差益

稼得資本(利益剰余金)

  • 株主からの払い込みではなく、企業が獲得した利益を源泉とする内部留保(損益取引を源泉とする)
  • 利益剰余金の種類
    • 利益準備金
      • 企業は、利益処分として配当を行う際に、外部流出額の10分の1以上を利益準備金として積み立てることを義務づけられている
          ↓
        利益準備金の積み立ては、資本準備金と利益準備金との合計額が資本金額の4分の1に達するまで行わなければならない
          ↓
        資本金組み入れ額を最低限度に抑えようとする
          ↓
        「株式払込剰余金」を計上する
    • その他利益剰余金(任意積立金)
      • 将来の特定の目的に備える事業拡帳積立金や配当平均積立金
      • 特に目的を定めない別途積立金
      • 利益準備金、任意積立金に該当しなかった利益の未処分額
        • 「繰越利益剰余金」として計上される

自己株式(株主資本の控除科目)

  • 自己株式を取得した場合は、株主資本の最後に記載する
  • 取得原価を控除する
  • 自己株式を処分した場合に生ずる「自己株式処分差益」または「自己株式処分差損」は、「その他資本剰余金」として記載する

61. 資本取引と損益取引

資本取引

  • 会社の設立や増資の際に行われる株主からの払い込み、減資、および合併の取引など、企業の自己資本の額を直接的に変化させる取引
  • 資本剰余金(株式払込剰余金、減資差益、合併差益)
    • 損益取引を源泉として生ずる剰余金
    • 払い込み資本 = 資本金 + 資本剰余

損益取引

  • 利益の獲得を目的として行われ、その結果として間接的に株主資本の額を変化させる取引
  • 利益剰余金(稼得資本、留保利益)
    • 損益取引を源泉として生ずる剰余金

資本取引と損益取引の区別

  • 払い込み資本、稼得資本の額に影響を及ぼす取引では「資本取引」と「損益取引」を厳密に区別しなければならない
    • 払い込み資本と稼得資本(留保利益)
      • 株主に帰属する株主資本
      • 配当による流出は、留保利益を源泉とすべきであって、これを超えて配当を行えば、資本が減少し、企業を維持することができなくなる
  • 「利益の額」の良否を判断する指標として、企業の努力が反映する「損益取引」と、その元手を変化させる「資本取引」とは明確に区別しなければならない

60. 資本/純資産

資本(純資産)とは

  • 貸借対照表の純資産の部
  • 純資産 = 自己資本
  • プラスの財産(資産)からマイナスの財産(負債)を控除した残余
  • 財務諸表分析における純資産
    • 自己資本 + 他人資本(負債) = 総資本

資本(純資産)の捉え方

  • 資本派 →「純資産 = 自己資本」と捉える
    • 企業の内部から資源を得たことを示す
    • 資本維持の観点から、払込資本と留保利益を明確に区別する
      • 払込資本(株主から払い込まれたもの)
      • 留保利益(経営活動によって獲得した利益の留保分)
  • 純資産派 →「純資産 = 資産から負債を控除した残余」と捉える
    • 返済義務がないことが最も重要
    • 利益は、前期との比較によって算出された純資産の増加分
    • 企業の存続を図るために、純資産のうち、企業の留保利益と外部への流出(株主への配当等)を区別しなければならない
  • 会社法は、貸借対照表の資本の部を「純資産の部」と呼んでいる
    • 資源は、源泉別に区分されている

純資産の源泉別分類

純資産の部 株主資本 払い込み資本 資本金
資本余剰金 資本準備金
その他資本剰余金
稼得資本
(留保利益)
利益剰余金 利益準備金
その他利益剰余金
自己株式(株主資本の控除科目)
評価、換算差額等
新株予約権

59. 税効果会計

税効果会計

  • 税効果会計 = 税額の調整手続き
  • 「企業会計上の資産・負債の額」と「課税所得計算上の資産・負債の額」に差がある場合
    • 「法人税、その他の利益に関連する額」と「課税標準とする税額」を適切に期間配分する
    • 税控除前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させる
  • 税効果会計の対象
    • 一時差異 =「貸借対照表に計上されている資産・負債の額」と「課税所得計算上の資産・負債の額」の差額
  • 貸借対照表では、一時差額に関わる税額を、繰延税金資産・繰延税金負債として計上する

58. 負債性引当金 (2)

製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金は、条件つき債務に属する

  • 製品保証引当金
    • 一定期間の修理保証をつけて製品を販売することによって、修理にともなう資源流出が合理的に予想されるものを当期の費用として認識し、それと同時に負債を認識する引当金
    • 1年以内の保障部分については「流動負債」
    • 1年を超える部分については「固定負債」
  • 売上割戻引当金
    • 一定数量、または一定金額以上の商品、製品を販売した得意先に対して、割り戻しを行うことによって、合理的に予想される割り戻し額を当期の収益から搾除し、それと同時に負債として認識する引当金
    • 割り戻しは次期に行われることから、「流動負債」に区分される
  • 返品訓整引当金
    • 販売した商品、製品について販売価格で返品を受け入れる特約を結んでいることによって、合理的に予想される返品額を当期の売上
    • 総利益から控除し、それと同時に負債として認識する引当金
    • 返品は1年以内に行われる場合が多いことから、「流動負債」に区分される

修繕引当金、特別修繕引当金
修繕引当金、特別修繕引当金は、法的な債務ではないが、将来における財産の流出が合理的に予想されることから、会計的負債として認識される

  • 修維引当金
    • 毎年行われる通常の修繕が、何らかの理由で行われなかった場合において、次期に行われる修繕にかかる資源流出を、当期の費用として認識し、それと同時に負債として認識する引当金
    • 「流動負債」に区分される
  • 特別修繕引当金
    • 数年ごとに定期的に行われる大修繕に備え、大修繕にかかる資源流出を合理的に見積もり、当期に配分される費用を認識し、それと同時に負債として認識する「引当金」
    • 次期に修繕が行われる部分については「流動負債」
    • それ以外は「固定負債」
  • 賞与引当金
    • 条件つき債務のひとつ
    • 従業員に対する賞与のうち、すでに労務の提供を受けた当期分として負担すべき金額を見積もって費用を認識し、それと同時に負債として認識する引当金
    • 給与の後払い分であるが、金額を見積り計算するという点で、未払費用とは性質を異にする
    • 「流動負債」に区分される

退職給付引当金

  • 条件つき債務のひとつ
  • 従業員が将来において退職する際に支払うべき退職給付のうち、すでに労務の提供を受けた当期分として、負担すべき金額を見積もって費用を認識し、それと同時に負債として認識する引当金
  • 給与の後払い分であるが、金額と支払い時期を見積り計算するという点で、未払費用とは性質を異にする
  • 「固定負債」に区分される

引当金のまとめ

貸借対照表の区分 法的債務性 相手感情の性質
評価性引当金 資産の部(控除項目) ーーー 費用 貸倒引当金
負債性引当金 負債の部 あり(条件つき債務) 収益の控除 売上割戻引当金
返品調整引当金
費用 製品保証引当金
賞与引当金
退職給付引当金
なし(会計的負債) 費用 修繕引当金
特別修繕引当金
特別法上の引当金 なし(将来の損失) 利益留保 渇水準備引当金
任務積立金 純資産の部 なし(偶発債務) 利益留保 地震損失引当金

57. 負債性引当金 (1)

負債性引当金の該当条件

  • 将来における資源の流出はいまだ確定していないが、その可能性が高いもの
  • 流出の金額を合理的に見積もることができるもの
  • 流出の原因が、当期においてすでに発生している場合に限り、当期において負債として認識することが認められているもの

負債性引当金、評価性引当金(貸倒引当金)の認識要件(企業会計原則注解より)

  • 将来の特定の支出、または損失であること(将来の特定の支出)
  • その発生が当期以前の事象に起因していること
  • その発生の可能性が高いこと
  • その金額を合理的に見積ることができること

引当金の認識

  • 「借方項目の費用(○○引当金繰入)」と「貸方項目の負債(○○引当金)」とを同時に認識する
    借方 貸方
    ○○引当金繰入(費用) 100,000 ○○引当金(負債) 100,000

引当金の認識の論拠

  1. 発生主義にもとづくもの、対応原則にもとづくもの
    • 引当金を費用の側面から捉えるもの
    • 引当金の論拠となる発生主義
      • 広義の発生主義、発生原因主義
      • 「当期の収益と因果関係があるものを当期の費用として認識する」という対応原則の考え方が根底にある
      • 期間利益計算を適正に行うべく、資源流出と当期の収益とが経済的犠牲と成果との関係にあるのであれば、同じ期に計上すべきである
    • 負債性引当金の場合
      • 将来の資源流出の原因が発生した時点にで費用を認識し、引当金を計上する
    • 評価性引当金の場合
      • 資源の流入の取り消し、または損失が発生した時点に費用を認識し、引当金を計上する
  2. 保守主義にもとづくもの
    • 「費用や損失をできるだけ早期に計上しよう」という保守主義を引当金の認識の論拠とする考え方
      • 負債と利益留保とを混同することにつながりかねず、利益計算の適正化という点からは妥当とはいいがたい
    • 電力事業法にもとづく渇水準備引当金
      • 湖水期の収益減少に備えるための利益留保性準備金
      • 公益保護の観点から法によって、負債計上を強制されたものであって、会計上の負債とは区別して表示される
  3. 資源流出の可能性の高さにもとづくもの
    • 資源流出の可能性の高さを引当金の認識の論拠とする考え方
      • 企業会計原則注解も、将来の資源流出の可能性が高いことを引当金の認識の要件のひとつとしている
    • 当期の負債である引当金を認識する際には、資源流出の可能性の高さに加えて、発生主義や対応原則が論拠となる
      • 無限に予想される将来の資源流出について、可能性の高さのみによって当期の負債を認識するのは困難であるため
      • 利益留保性の準備金との区別が曖昧になりかねないため
    • 将来における資源流出の可能性が低いものや、金額の見積りが困難なものは、特別法上の渇水準備引当金等を除き、引当金として認識することは認められない
      • 引当金として認められない例
        • 地震損失引当金、係争中の事件に関する損害賠償などの偶発債務
        • 利益留保性の準備金として、純資産の部の「任意積立金」に計上される(「偶発債務」として貸借対照表の註記事項に記載されるのみ)