6. 会計主体論 (1)

会計上の判断

  • 会計上の判断は「会計が経営活動を⾏う企業をどのようにて捉えるのか」によって最終的に規定される
  • 企業の捉え⽅(企業観)
     ↓
    会計の⽬的を決定(会計の⽬的観)
     ↓
    会計上の判断を規定

企業観とは

  • 企業実体の公準「企業は所有者と切り離されたもの(資本と経営の分離)」を前提とした企業の捉え⽅
    • 企業は誰のものか?
    • 企業の利害関係者をどう⾒るか、どのように位置づけるか?

会計主体論とは

  • 企業会計を考える上で、企業とその利害関係者との位置づけを論ずること
  • 会計処理における最終的なよりどころ
    • どのように認識、測定、伝達するのか?
    • 会計はどのような(誰の)観点から⾏われるのか?
    • 会計の⽬的とは何か?
    • 企業の多様な利害関係者(ステークホルダー)の存在をどうみるのか?
    • 利害関係者をどのように位置づけるのか?

会計主体論の位置づけ

  • 企業実体の公準、企業観、会計主体論の関係は以下のようになる
    企業実体の公準 資本と経営の分離
      ↓
    会計主体論 企業観 (所有者は誰か)
      ↓
    会計の⽬的観 (認識、測定、伝達の⽬的)
      |
      |→ 会計上の判断
      ↓
    会計処理

5. 会計公準

会計公準

  • 会計の基本的な前提
  • 会計公準をもとに、会計は「認識→測定→伝達」が⾏われる
  • 会計公準には3つの原則がある(構造的公準)

公準1.企業実体の公準

  • 会計では、企業をその所有者とは切り離して考える
  • 財務諸表に記載される財産は、企業そのものの財産のみであって、所有者の個⼈的な財産などは記載さない

公準2.貨幣的な測定の公準

  • 会計における測定は、貨幣数値をもって⾏われる
  • 様々な企業の財産を測定する共通尺度として「貨幣数値」を⽤いる
  • 会計情報における「貨幣数値」の位置づけ
    企業の情報 定性的な情報(⾮数量情報)
    定量的な情報(数量情報) ⾮貨幣数値情報
    貨幣数値情報 会計情報

公準3.継続企業の公準(会計期間の公準)

  • 会計では、企業を「縦続的な存在」として捉える
  • 現代の会計は「継続企業(終了が予定されていない企業)」を前提して⾏われている
  • 企業の終了が予定されていないため「会計期間」を定め、その期間ごとに会計は⾏われる
  • 会計期間は「1年」とすることが多い

4. 企業の利害関係者

利害関係者(ステークホルダー)

  • 企業には、多様なステークホルダーが存在する
  • ステークホルダーそれぞれが、独⾃の利害関係や関⼼事を持っている

直接的ステークホルダー

  • 株主、経営者、債権者
  • 事業の元⼿を拠出
  • 企業は直接的にステークホルダーに対して、会計責任(アカウンタビリティ)がある
ステークホルダー 企業との利害関係 関⼼事
株主 現在の投資対象
  • 出資による持ち分に関わる報酬(配当)の額
  • 配当の適正性
  • ⾃⼰の持ち分の保全状態
株価 経営者経営活動の責任を持つ対象
  • ⾃⼰の責任に帰されることとなる「経営成績」
  • ⾃⼰が得る報酬に直結する経営成績とその向上
債権者(銀⾏など) 融資対象

  • 貸し付けた資⾦の回収の確実性
  • 将来における資⾦の融通の是⾮
投資者 将来の投資対象
  • 企業の将来における収益性
  • 他の企業と⽐較した場合におけるその企業の将来性
従業員 ⾃⼰の労働に対して報酬を得て、⽣計を⽴てるための基盤
  • 報酬の額
  • 企業の負担能⼒
  • ⾃⼰の労働にかんがみたその適正性
消費者 ⽣活に要する財、および⽤役の供給源
  • 財・⽤役の安定的かつ継続的な供給の維持
  • 価格の適正性
⾏政府当局 国家、地⽅財政に不可⽋の財源
  • 企業の課税所得の算定
  • 担税能⼒(担税⼒)の適正な判定

3. 会計の⽬的

1.利害の調整

  • 企業の経営活動から⽣じた利益(成果)を分配する際に、利害関係者(株主など)の持ち分を調整すること
  • 会計は「企業の利益」の算定などを通じて、利害の調整を⾏う
  • 利害調整機能

2.意思決定の⽀媛

  • 有⽤な情報(会計情報)を提供することによって、企業の利害関係者の意思決定を⽀援すること
     例)投資者による「投資意思決定」
     例)経営者による「経営意識決定」
  • 意思決定有⽤性機能

2. 会計のプロセス

会計の流れ

会計は「① 認識 → ② 測定 → ③ 伝達」の3段階で⾏われる
取引
  • 企業の経営活動において「取引」が発⽣する
① 認識
  • 企業の経営活動の中で、資産、負債、資本の増加(または減少)をもたらす事象が会計の中に取り込まれること
  • 「取引」という概念を⽤いて認識する
  • 会計における「取引」= 資産、負債、資本の増加(または減少)をもたらす事象
② 測定
  • 取引を数値化すること
  • 会計固有の測定ルールがある
③ 伝達
  • 財務諸表の作成
    • 貸借対照表
    • 損益計算書
    • (キャッシュフロー計算書)
  • 会計情報の伝達
    • 会計情報は、会計の測定ルールに従ってもたらされた数値によって構成される
    • 「誰に伝えるか」によって会計の⽬的が異なってくる
    • 社内関係者への伝達 → 報告、社外への伝達 → 開⽰
判断
  • 社内の利害関係者は、会計情報をもとに経営判断を⾏う
  • 社外の利害関係者は、会計情報をもとに投資、融資、経営⽀援などの判断を⾏う

1. 会計の定義

会計情報とは

  • 企業の経営活動に関する情報
  • 会計情報は、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を通じて伝えられる
  • 会計情報の作成プロセスは「認識」と「測定」から成り⽴つ

会計とは

  • 財産管理の受託者が、その委託者に対して、財産の管理情報を説明する⾏為

企業会計

  • 企業の経営者が、企業の経営活動を認識し、測定し、そこで作成された情報を伝達する⾏為
  • 企業の経営者が、企業の経営活動(企業が保有する財産の管理状況)を、企業の利害関係者に説明する⾏為

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