[ 価値基準 ]
組織の価値基準とは、従業員が仕事の優先順位を決定する際に用いる判断基準を指す。例えば、ある注文が魅力的かどうか、顧客が重要かどうか、新製品のアイデアが魅力的か取るに足りないか、などを判断する際の基準である。
企業が大規模で複雑になればなるほど、役員があらゆるレベルの従業員を訓練して、企業の戦略的方向やビジネスモデルと整合性の取れた優先順位の決定を、自発的な行動のもとで下せるように教育することが重要になる。また企業の価値基準は、いずれはその企業のコスト構造や収益モデルに適合するような形に変わって行かねばならない。
「資源」と「プロセス」が、組織に何ができるかを定義する成功因子であることが多いのに対し、「価値基準」は組織ができないこと、つまり制約を定義する。また、全く異なるコスト構造に基づく価値基準を持つ企業は、優先順位の付け方も異なる。このような価値基準の違いが、破壊する者と破壊される者との間に存在する「モチベーションの非対称性」を生み出す。
優良企業の価値基準は、少なくとも2つの側面において、しばしば予測可能なやり方で時間をかけて変化していく。
- 粗利益率の許容範囲に関わる変化
- 企業が市場の上位市場の魅力的な顧客を獲得しようとして製品やサービスを改良すると、間接費がかさむことが多い。
- 企業の価値基準は上位市場に移行するうちに変わっていく。
- 企業がうまみを感じる事業規模に関わる変化
- 企業の株式時価総額は予想将来収益の割引現在側値に等しいため、単に成長を持続させるだけでなく、一定の成長率を維持しなければならない。
- 企業は大規模になるにつれ、小さな新興市場に参入する能力をすっかり失ってしまう。
- 成功した大企業は、莫大な資源を思い通りにできるようになるが、その価値基準のせいで、今は小さいが大きく育つであろう破壊的市場に投入することはできない。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社