経営幹部がイノベーションのマネジメントにおいて果たすべき役割は4つある。
- 適切な連携プロセスが存在しない場合には、さまざまな行動や決定を、自ら進んで連携させなければならない。
- 部下が新しいコミュニケーション、連携、意思決定のパターンを必要とする、新しい課題に直面したときには、既存プロセスの支配力を崩さなければならない。
- 同じような行動や決定が組織内で繰り返し行われるとき、経営幹部はこれに関わる従業員の活動を確実に導き連携させるためのプロセスを作り出さなければならない。
- 新たな破壊的成長事業を続けざまに立ち上げていくためには、同時進行する複数のプロセスやビジネスモデルを構築し維持する必要がある。経営幹部はさまざまな組織の橋渡しを行って、新成長事業での有益な学習を主流部門に環流させ、適切な「資源 – プロセス – 価値基準」が適切な状況で用いられるよう、押し進めなければならない。
優良企業が破壊的成長事業の創造を初めて企てるとき、経営幹部は1番目と2番目の役割を果たす必要がある。その場合、破壊は新しいプロジェクトであり、そこには必要な連携や意思決定を行うための適切なプロセスが存在しない。主流組織のプロセスのうち、破壊チームが行わなければならない仕事に役立たないものは、回避するか遮断する必要がある。
企業の成長を長期にわたって持続させる成長エンジンをつくるためには、経営幹部は3番目の役割を果たさなければならない。新しい破壊的事業の立ち上げを、周期的で反復的な課題にする必要があるからだ。そのためには、その課題に携わる従業員を繰り返し教育し、破壊的アイデアを直観的に発見して、成功につながる事業計画として形成できるようにさせることが必要である。
4番目の役割は、破壊的事業と持続的事業との橋渡しを行い、適切な「資源 – プロセス – 価値基準」が主流事業から新事業へ、そして再び主流事業へと流れるよう、積極的に監督することである。そしてこの役割こそが、不断に成長を続ける企業をマネジメントすることの本質なのである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社