1. 破壊的イノベーションの理論 ー 単純、安価、画期的
破壊的イノベーションの理論(破壊理論)は、新しい組織が相対的に単純、便利で、低コストのイノベーション を利用して成長を生み出し、強力な既存企業に打ち勝つことができるような状況を指摘する。破壊理論によると、既存の優良企業は持続的イノベーションの戦いでは、新規参入企業に勝つ可能性が高いが、破壊的イノベーションで攻撃をしかけてくる企業には、ほぼ必ず負ける。
破壊理論を図示すると以下のようになる。
図0-1. 破壊的イノベーションの理論
<破壊理論の特徴>
- 企業の性能向上曲線は、製品・サービスが時間とともに改良されていく様子を示す。
- 顧客の需要曲線は、顧客に使いこなせる性能がどのように移り変わってきたかを示す。
- 需要曲線が示すように、特定の市場用途での顧客のニーズは、時間が経過してもそれほど変化しない。
- 持続的イノベーション:確立した性能向上曲線を企業がのぼっていく原動力になるもの
- 顧客がそれまで重視してきた特性において、既存製品に加えられる改良である。
- 例)航続距離を伸ばした航空機
- 例)処理速度を上げたコンピュータ
- 例)持ち時間の延びた携構電話のバッテリー
- 例)画質が徐々にまたは劇的に向上したテレビ
- 破壊的イノベーション:新しい価値提案を実現するもの
- 破壊的イノベーションには、新しい市場を生み出すもの(新市場型)と、既存市場を大きく変えるもの(ローエンド型)の2種類がある。
- ローエンド型破壊が起こるのは、既存顧客が使いこなせる価値に比べて、製品・サービスが「性能過剰」になり、高価になりすぎたときである。
- ローエンド型破壊は、既存顧客に相対的に単純な製品を低価格で提供することから始まる。
- 例)ニューコアの製鋼ミニミル
- 例)ウォルマートのディスカウントストア
- 例)バンガードのインデックスファンド
- 例)デルのダイレクト販売のビジネスモデル
- 新市場型破壊的イノベーションが起こるのは、既存製品の特性のせいで、潜在的顧客の数が制限されているとき、または不便で集中的な場所で消費を行わざるを得ないときである。
- 新市場型破壊は、高度な専門知識か豊富な資金がなければできなかったことを、より簡単にできるようにすることで新しい成長を創出する。
- コダックのカメラ
- ベルの電話
- ソニーのトランジスタラジオ
- ゼロックスのコピー機
- アップルのパソコン
- イーベイのオークションサイト
図0-1は『新市場型破壊的イノベーションは、新市場型破壊がどのようにして「無消費者」や「無消費の状況」に消費をもたらすか』を示している。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社