市場外の要因がイノベーションの力に与える影響は予測可能であり、イノベーターが新しい製品・サービスを開発・活用する「動機づけ」または「能力」に影響を与える。
「能力」または「動機づけ」を高めようとする措置はイノベーションを活性化させる傾向にあり、「能力」や「動機づけ」への障壁を築くような措置はイノベーションを阻害する傾向にある。
動機づけ/能力マトリクスは、イノベーションへの障壁を理解し、介入がイノベーションにどのような影響を与えるかを理解するのに役立つツールである。イノベーションを阻害しているのが市場の不均衡で「動機づけ」をくじく場合、または法的障壁であり「能力」を制約する場合、政府の介入によって業界を温床の領域に押し上げることができる。
これに対して、イノベーションへの障壁が技術的障壁であるか、貧弱な経済性である場合は、政府の介入が業界の競争を促す可能性は低い。業界が市場外の措置によってイノベーションを促進できる状況にあるからといって、イノベーションを促進できるとは限らない。
イノベーションの障害に対して政治的に好ましい措置をとれば、問題を悪化させることがある。また問題が深刻であればあるほど、一つの措置で是正できる可能性は低くなる。政府にできることは、破壊的イノベーターに新しいバリューネットワークの創出を促し、それを通じて業界を変革することである。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社