イノベーションの理論を用いて業界の変化を分析する方法の第一段階は、変化のシグナル(何者かが変化の機会を有利に利用しようとしている兆候)を探すことである。
企業は「新市場型破壊的イノベーションを創出して、新しい消費者の獲得を目指す」「上位市場に向かう持続的イノベーションを推進して、満たされない顧客を狙う」「ローエンド型破壊的イノベーションやモジュールへの置き換えによって、過剰満足の顧客を狙う」といった行動をとる。ルールの誕生は、このような変化を促進する。市場外のプレーヤーが「動機づけ」や「能力」を高める目的で講じる措置がイノベーションを促す場合もある。このような動きのすべてが、業界構造を根底から変える可能性のある「変化のシグナル」である。
これらの動きは、次の質問をすることで明らかにできる。
- 業界の顧客は、どのような用事を片づけようとしているのか?
- 顧客は現在の製品・サービスを十分消費していないのか、満たされていないのか、それとも過剰満足なのか?
- 企業は顧客を獲得するために、どの側面で競争しているのだろう?
- 過去にどのような性能向上に割高な価格がついたか?
- 現時点での主流は、統合型と分業型のビジネスモデルのどちらか?インターフェースは特定可能で、検証可能、予測可能だろうか?
- 目新しいビジネスモデルは、どこに現れているのか?周辺市場に成長が見られないだろうか?
- 政府やその監督機関は、イノベーションを促進または阻害するうえで、どのような役割を果たしているのか?
変化のシグナルを有利に活用する企業は、業界を成長・変革できる。一般に業界がこのような形で成長すると、今度は新規参入企業が既存企業の市場を侵食するようになる。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社