企業が無消費者を獲得するための新しい方法を開発しているかどうかを見極めたら、次に企業の現在の顧客を評価しなければならない。
既存顧客は、以下の2種類に分類することができる。
- 既存製品がニーズに十分応えていない「満たされない顧客」
- 既存製品が必要にして十分以上にニーズに応えている「過剰満足の顧客」
そして、特定の階層の顧客が最も重視しているが十分ではない部分のことを「業界の競争基盤」という。
製品が発売されて間もない頃は、顧客は製品が「何をするのに役立つか(機能性)」と「いかに着実に用事を片づけられるか(信頼性)」によって、性能を評価する傾向がある。顧客の要求に最も近い製品・サービスを提供できる企業や、機能性や信頼性をさらに高められる企業は、平均以上の利益を獲得することができる。
満たされない顧客の存在を示す最も明らかな兆候には、以下のようなものがある。
- 性能の高い新製品に一貫して割高な価格を支払おうとする顧客の存在
- システム全体のソリューションを提供する統合型企業の成功
- 複雑な相互依存的な問題を解決できる能力をもたない専門的企業の不振
満たされない顧客が存在することによって、既存企業が上位市場に向かう持続的イノベーションを推進して利益を上げる機会が生まれる。この状況で企業は、改良された製品・サービスを最良の顧客に、より利益を生む価格で提供できる。
上位市場に向かう持続的イノベーションは複雑さの程度によって区別され、「急進的な持続的イノベーション」と「漸進的な持続的イノベーション」を両極とした軸のどこかに位置づけられる。急進的な持続的イノベーションは「大躍進」と呼ばれるたぐいのもので、複雑で相互依存的でコストが高いという特徴がある。対して漸進的な持続的イノベーションは、業界にそれほど劇的な影響を及ぼさないことが多い。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社