破壊的成長の波が起こる中で、リーダーとして頭角を現すことができない企業は、次の2点のいずれかで失敗している。
- 初期の参入企業の多くが失敗するのは、正しい戦略が判明しないうちに、未熟な意図的戦略を強引に実行して、資金を使い果たしてしまう。
- 創発的戦略プロセスを効果的に運営し、市場とその用途を明らかにした後、経営者が資源配分を意図的に制御し、上位市場に向かって駆け上がることにすべての投資を集中させず、取り残されてしまう。
創発的戦略から意図的戦略への切換がうまくいくかどうかが、破壊的事業の成否を分ける。また意図的戦略は、破壊的成長事業を続けざまに立ち上げる取り組みでは、次のような理由により障害になることが多い。
- 成功した企業の資源配分プロセスのフィルターは、成功を導いた戦略に連動するようになるため、既存事業を支える計画以外のものをすべてふるい落とすようになる。その結果、次の成長の波を生み出す破壊的イノベーションが見落とされてしまう。
- 意図的戦略プロセスが組織に組み込まれてしまうと、次に新事業を立ち上げるときに、創発的プロセスを再び用いることが難しくなる。
新しい破壊的成長の波を捉えようとする企業の取り組みは、創発的戦略によって導かれなければならない。他方、主流事業を推進するにあたっては、競争力と収益性を維持するための持続的イノベーションを導く、意図的戦略を用いる必要がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社