ステップ3:良い資金は成長を待ちきれなくなる
大きな成長ギャップに直面した企業では、価値基準(資源配分プロセスでプロジェクトを承認するために用いられる判断基準)が変化する。
急成長したことで成長ギャップを埋められなくなったプロジェクトは、戦略プロセスの資源配分ゲートを通過できなくなる。その結果、新成長事業を生み出すプロセスは脱線し、企業の投下資本は成長を急かすようになって、良い資金が悪い資金になる。破壊的イノベーションは高い成功率で企業の成長に大きく寄与するにもかかわらず、「十分に早く大きくなれないから」という理由で、その計画案は却下されてしまう。
新市場型破壊は無消費に対抗する必要があり、創発的戦略プロセスに従わねばならないため、破壊的事業のマネージャーは、事業が必ず急成長すると予測することはできない。彼らに高い目標を無理矢理約束させると、確立した大市場にイノベーションをやみくもに押し込む戦略、つまり「消費に対抗する」ことを選択せざるを得なくなる。一端、この成長プロジェクトへの資金供与が承認されると、マネージャーは前言撤回することができず、無消費に対抗する創発型戦略に従うこともできなくなる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社