22. ⼀般原則:明瞭性の原則

明瞭性の原則

  • 「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明確に表⽰し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」とする原則
  • 財務諸表は、利害関係者に対する会計情報の提供を⽬的としているため、必要とされる会計情報を充分かつ円滑に提供することができるように、明瞭に表⽰されなくてはならない

会計処理の結果としての「会計数値の明瞭な表⽰」

  1. 総額主義の原則
    • 費⽤及び収益は、総額によって記載する
    • 費⽤の項⽬と収益の項⽬とを直接に相殺することによって、その全部または⼀部を損益計算書から除去してはならない
  2. 区分表⽰の原則
    • 貸借対照表を「資産の部」「負債の部」「資本の部」の3区分に分ける
    • 資産の部を「流動資産」「固定資産」「繰延資産」に区分する
    • 負債の部を「流動負債」「固定負債」に区分する
  3. 収益費⽤対応表⽰の原則
    • 費⽤と収益は、その発⽣源泉に従って明瞭に分類する
    • 各収益項⽬とそれに関連する費⽤項⽬を、損益計算書に対応表⽰させる

会計数値を計算するために適⽤された「会計⽅針」の開⽰

  • 選択可能な複数の会計⽅針が存在する場合、どの会計⽅針を採⽤しているのかを開⽰していなければ、会計事実を明瞭に表⽰しているとはいえない
    • 会計⽅針 = 財務諸表の作成にあたって採⽤した会計処⾥および表⽰の⽅法
  • 企業会計原則が挙げる開⽰すべき項⽬
    • 有価証券の評価基準および評価⽅法
    • 棚卸資産の評価基準および評価⽅法
    • 固定資産の減価償却⽅法
    • 費⽤および収益の計上基準などの会計⽅針
  • 特定の会計⽅針のみしか採⽤しない(代替的な⽅法が認められていない)場合は、会計⽅針の開⽰を省略することができる
  • 会計⽅針の開⽰⽅法
    • 財務諸表の末尾に注記事項として記載するか、または個別注記表を作成する
    • ⾦融商品取引法が適⽤される場合は、附属明細表を作成する

後発事象、偶発債務のような「企業経営に影響を及ぼす可能性」の開⽰

  • 重要な後発事象の開⽰は、将来の財政状態および経営成績を理解するために、補⾜情報として必要とされる
    • 後発事象 = 決算⽇(期末)後に発⽣した事象であり、次期以降の財政状態、および経営成績に影響を及ぼすもの
  • 企業会計原則が挙げる注記すべき後発事象
    • ⽕災や出⽔等による重⼤な損害の発⽣
    • 多額の増資、減資
    • 多額の社債の発⾏、繰り上げ償還
    • 会社の合併
    • 重要な営業の譲渡、譲り受け
    • 重要な係争事件の発⽣、解決

附属明細表

  • 貸借対照表や損益計算書では利便性を考慮して、適度に勘定科⽬を合算する(概括的表⽰)売掛⾦、買掛⾦、売買⽬的有価証券といった勘定科⽬からは、債権や債務の貸付先・借り⼊れ先、保有有価証券の銘柄などは分からないため「附属明細表」によって詳細を報告する
    • 附属明細表 = 利害関係者が関⼼をもつ特定項⽬の詳細をまとめた明細表
    • 有価証券明細表、有形固定資産明細表など