イノベーションへの解:第7章 破壊的成長能力を持つ組織とは (4)

[ プロセス ]

従業員が労働、設備、技術、製品設計、ブランド、情報、活力、現金といった資源のインプットを、価値の高い製品やサービスに変換するとき、組織は価値を生み出す。組織がこのような変換を実現する、相互作用や連携、意思伝達、意思決定などのパターンが、「プロセス」である。

プロセスには、製品の開発や製造に関連したもののほか、調達、市場調査、予算編成、人材開発および報酬決定、資源配分を遂行する方法などが含まれる。

明確に定義・文書化された「公式」なプロセスもあれば、習慣的な手順や仕事のやり方から生まれた「非公式」なプロセスもある。長年にわたってプロセスの効果が実証されると、それらが組織文化を構成することもある。何であれプロセスは、組織がインプットをさらに価値の高いものに変換する方法を規定する。

企業は他社より優れたプロセスを生み出すことで競争優位に立ち、また優れたプロセスは効果的な行動を忠実に反復することで作り出せる。そして優れたプロセスが一度成立すると、それを変えることは難しくなる。

プロセスは、特定の業務に取り組むために定められるか、自然に生まれる。ある特定の業務を遂行する上では能力を示すプロセスは、それ以外の業務に適用されると、融通が利かず効率が悪くなって無能力を示すことが多い。多くの資源が柔軟であるのとは対照的に、プロセスは本質的に変化しないようにできている。

一般に破壊的イノベーションが市場の最低層や競争の新しい次元に出現するのは、中核事業の絶頂期、つまりすべてに「大変革を起こす」ことが突拍子もない考えに思われるときである。そのため、イノベーションを推進するマネージャーは、中核事業を効率良く運営するために設計されたプロセスを、ついつい新成長事業にも用いてしまう。新事業の構築が失敗する理由は、不適切なプロセスが用いられるからである。
 
イネーブリングとバックグラウンド

検討すべきプロセスの中で最も重要なものは、投資判断を側面から支援するプロセス(イネーブリング)や背景的なプロセス(バックグラウンド)であることが多い。たとえば、市場調査をいつもどのように行うか、その分析結果をどのように財務予測に反映させるか、計画や予算をどのように取り決めるか、その数字をどのように実現するか、といったことだ。破壊的な成長事業を生み出すための最も深刻な無能力は、このようなプロセスにあることが多い。

側面的プロセスや背景的プロセスは目に付きづらいため、主流組織のプロセスが新成長事業に役立つか、妨げになるかを判断しづらいかもしれないが、組織が過去に似たような状況や業務を経験したかどうかを考えてみれば推測がつく。組織が似たような業務に繰り返し取り組んだことがなければ、その業務を成し遂げるためのプロセスが生み出されたとは考えづらい。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社