57. 負債性引当金 (1)

負債性引当金の該当条件

  • 将来における資源の流出はいまだ確定していないが、その可能性が高いもの
  • 流出の金額を合理的に見積もることができるもの
  • 流出の原因が、当期においてすでに発生している場合に限り、当期において負債として認識することが認められているもの

負債性引当金、評価性引当金(貸倒引当金)の認識要件(企業会計原則注解より)

  • 将来の特定の支出、または損失であること(将来の特定の支出)
  • その発生が当期以前の事象に起因していること
  • その発生の可能性が高いこと
  • その金額を合理的に見積ることができること

引当金の認識

  • 「借方項目の費用(○○引当金繰入)」と「貸方項目の負債(○○引当金)」とを同時に認識する
    借方 貸方
    ○○引当金繰入(費用) 100,000 ○○引当金(負債) 100,000

引当金の認識の論拠

  1. 発生主義にもとづくもの、対応原則にもとづくもの
    • 引当金を費用の側面から捉えるもの
    • 引当金の論拠となる発生主義
      • 広義の発生主義、発生原因主義
      • 「当期の収益と因果関係があるものを当期の費用として認識する」という対応原則の考え方が根底にある
      • 期間利益計算を適正に行うべく、資源流出と当期の収益とが経済的犠牲と成果との関係にあるのであれば、同じ期に計上すべきである
    • 負債性引当金の場合
      • 将来の資源流出の原因が発生した時点にで費用を認識し、引当金を計上する
    • 評価性引当金の場合
      • 資源の流入の取り消し、または損失が発生した時点に費用を認識し、引当金を計上する
  2. 保守主義にもとづくもの
    • 「費用や損失をできるだけ早期に計上しよう」という保守主義を引当金の認識の論拠とする考え方
      • 負債と利益留保とを混同することにつながりかねず、利益計算の適正化という点からは妥当とはいいがたい
    • 電力事業法にもとづく渇水準備引当金
      • 湖水期の収益減少に備えるための利益留保性準備金
      • 公益保護の観点から法によって、負債計上を強制されたものであって、会計上の負債とは区別して表示される
  3. 資源流出の可能性の高さにもとづくもの
    • 資源流出の可能性の高さを引当金の認識の論拠とする考え方
      • 企業会計原則注解も、将来の資源流出の可能性が高いことを引当金の認識の要件のひとつとしている
    • 当期の負債である引当金を認識する際には、資源流出の可能性の高さに加えて、発生主義や対応原則が論拠となる
      • 無限に予想される将来の資源流出について、可能性の高さのみによって当期の負債を認識するのは困難であるため
      • 利益留保性の準備金との区別が曖昧になりかねないため
    • 将来における資源流出の可能性が低いものや、金額の見積りが困難なものは、特別法上の渇水準備引当金等を除き、引当金として認識することは認められない
      • 引当金として認められない例
        • 地震損失引当金、係争中の事件に関する損害賠償などの偶発債務
        • 利益留保性の準備金として、純資産の部の「任意積立金」に計上される(「偶発債務」として貸借対照表の註記事項に記載されるのみ)