統合化からモジュール化への前進は、製品の改良が進んで顧客の要求を追い抜く度に繰り返される。そして「性能が十分ではない状況」に業界を支配していた独自システムや垂直統合企業は、「性能が十分である状況」では特化型企業に取って代わられていく。
統合は、ある時点では競争上不可欠だが、後には競争上の障害となる。モジュール化と特化を駆り立てるのは、以下の予測可能な因果的連鎖である。
- 技術改良のペースは顧客の利用能力を上回るため、ある時点では機能性や信頼性が十分でない製品も、やがては顧客の利用できるものを上回るようになる。
↓ - その結果、競争基盤が変化し、企業はそれまでとは異なる方法で競争することを強いられる。
↓ - 顧客が機能性や信頼性の向上に対して割増価格を支払う意志を失うにつれ、今度は顧客が求めるものを必要なときに与える能力を持つ供給業者が、利益を得るようになる。
↓ - 企業は競争圧力により「スピードと顧客ニーズへの対応性をできる限り高めること」を強いられると、相互依存型の独自仕様の製品アーキテクチャを、モジュール型に進化させることによって、この問題を解決する。
↓ - モジュール型を通じて産業の解体が実現し、一部の特化型企業が、かつて業界を支配していた統合型企業を打倒する。
性能向上の軌跡が各市場の各階層を通過するにつれて支配を弱め、それと同時にモジュール型のモデルが次第に支配的になっていく。アーキテクチャ戦略や統合戦略の有効性は「性能ギャップ」や「性能過剰」の状況に依存する。状況が再び変化すれば、戦略的アプローチもそれに合わせて変える必要がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社