イノベーションへの解:第5章 事業範囲を適切に定める (4)

図5-1. 製品アーキテクチャと統合
図5-1. 製品アーキテクチャと統合

 
製品の機能性と信頼性が、ある市場階層に属する顧客のニーズを満たすにはまだ十分でない「性能が十分ではない状況(青領域)」では、企業はできる限り優れた製品をつくることで競争しなければならない。競争では、独自仕様の相互依存型アーキテクチャを基に性能を最適化する企業に、大きな競争優位が約束される。

インターフェースの標準化が進むと、技術的に実現し得る最高のものから遠ざかってしまう。競争で遅れを取らないために、エンジニアは新製品を生み出すたびに性能ギャップを縮めようとする。利用可能な技術から最高の性能を引き出すために、システムの構成要素をますます効果的な方法で組み合わせようとする。

相互依存型の独自アーキテクチャで競争する企業は、統合型企業でなければならない。システムのどの構成部品を製造するにも、システム内の重要な部品の設計と製造をコントロールする必要があるからだ。

「性能が十分でない状況(青領域)」では、未熟な新技術が持続的向上のために採り入れられることが多い。新規参入企業がブレークスルー技術(画期的技術)の商品化に成功することがほとんどないのは、システムの他の構成要素にも変更を強いる相互依存関係が多すぎて、まったく新しい技術を組み込んだ有望な製品の商品化になかなかこぎ着けないからである。

参考:ブレークスルー技術と破壊的技術

  • ブレークスルー技術とは「技術進歩の軌跡に持続的な影響を及ぼすもの」であり、破壊的技術とは「技術面での飛限的前進を伴わず、既存技術を破壊的ビジネスモデルという形にまとめたもの」である。
  • ブレークスルー技術のほとんどが持続的な特性を持っており、製品内の他のサブシステムとの間には予測不能な相互依存関係がある。
  • 持続的イノベーションの中には、年々行われる単純な漸進的改良(漸進的技術)と一足跳びに持続的軌跡を上っていくような劇的で画期的なもの(ブレークスルー技術)があるが、どちらも持続的な影響を及ぼすため、優良企業がほぼ必ず勝利を収める。

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社