クリステンセン教授は以下の「破壊的技術の五原則」を提唱し、既存の技術を利用する上で最も効果的な経営慣行が、破壊的技術の開発を妨げる理由を説明している。さらに、企業経営者がこれらの原則にどのように従えば、将来自分たちの市場に広がるであろう新技術をうまく開発できるのかを示唆している。
- 企業は顧客と投資家に資源を依存している
- 企業が生き残るためには、顧客や投資家が必要とする製品、サービス、収益を提供しなければならない。
- 優良企業には、顧客が求めないアイデアを切り捨てるシステムが整備されており、利益率が低い破壊的技術に十分な資源を投資することは極めて難しい。
- 小規模な市場では優良企業の成長ニーズを解決できない
- 優良企業は株価を維持し、従業員に機会を与えるために、成長し続ける必要がある。
- 会社の規模が大きくなると、同じ成長率を維持するためには、新しい収入の金額を増やす必要がある。
- 会社の規模が大きくなるにつれ、将来は大規模な市場になるはずの小さな新興市場に参入することが難しくなっていく。
- 存在しない市場は分析できない
- 確実な市場調査と綿密な計画の後で計画どおりに実行することが、優れた経営の特徴である。
- 数値的根拠がなければ市場に参入できない企業は、まだ存在しない市場に向かう破壊的技術に直面したとき、手も足も出なくなる。
- 組織の能力は無能力の決定的要因になる
- 組織の能力は、労働力、エネルギー、原材料、情報、資金、技術といったインプットを付加価値に変える「プロセス」と、組織の経営者や従業員が優先事項を決定するときの「価値基準」によって決まる。
- 「資源」とは違って「プロセス」や「価値基準」には柔軟性はない。
- 組織の能力を生みだすプロセスや価値基準も、状況が変わると、組織の無能力の決定的要因になる。
- 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
- 破壊的技術は、当初は小規模な市場でしか使われないが、いずれ主流市場で競争力を持つようになる。それは技術進歩のペースが、時として主流顧客が求める性能向上のペースを上回るからである。
- 2つ以上の製品が十分な性能基準を満たせば、顧客は他の基準に従って製品を選ぶようになる。それらの基準は『性能 → 信頼性 → 利便性 → 価格』の順で変化することが多く、いずれの基準についても、新しい技術の方が有利であることが多い。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社