[ 第2章のテーマ ]
- 闘いに先立ち、競合企業を打ち負かせるかどうかを知る方法はあるのか。
- なぜ破壊的戦略を実行すると、強力な既存企業が新規参入者の攻撃に対抗せず、必ず逃走するように仕向けられるのか。
- 事業案をそのような破壊的戦略として形成するには、どうすればいいのか。
- イノベーションによる成長競争の勝者を、本当に予測できるのだろうか。
- 確実に勝てる競争を自分で選ぶことができたらどうだろうか。
- どの成長戦略が成功し、どれが失敗するかを事前に予測できたら、良くはないだろうか。
クリステンセン教授が進めているイノベーションに関する研究は「既存企業が必ず勝つのはどのような状況で、参入者が彼らを打ち負かす可能性が高いのはどのような状況なのか。それらを解明するにあたって、それぞれの状況に対して別の考え方がある」ということを示唆する。
『イノベーションのジレンマ』では、イノベーションの状況に基づいて「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を特定した。企業が魅力ある顧客に高く売れる、より良い製品をつくることで競い合うという「持続的イノベーション」では、ほぼ必ず既存企業が勝つ。一方、新規顧客や魅力のない顧客群に安く売れる、シンプルで便利な製品を商品化することが課題となる「破壊的イノベーション」では、新規参入者が既存企業を負かす確率が高い。
成功した企業を頻繁に失敗させる状況は「破壊的イノベーション」のときである。新興企業が実績ある競合企業を攻撃するのではれば、破壊的戦略を取るとよい。
破壊的イノベーションに秘められた力は、マネージャーがアイデアを計画にまとめ実行するうちに「戦略」という形になってはじめて、十分に発揮される。新たな成長を生み出すことに成功した人たちは、破壊的戦略が競争で成功する確率を大いに高めることを、直観的にせよ意識的にせよ理解している。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社