① 破壊的技術の弱みは強みでもある
「性能の供給過剰」「製品のライフサイクル」「破壊的技術の出現」が相互に影響し合う中では、主流市場で破壊的技術を役に立たたないものとしている特性が、新しい市場で価値を生むことが多い。
破壊的イノベーションで成功する企業は、最初にその技術の性質や機能を当然のものと捉え、それらの特性を評価し受け入れる新しい市場を見つけるか、開拓しようとする。一方、破壊的技術に追い落とされた企業は、確立された市場のニーズを当然のものと受けとめ、その技術が主流市場でも十分評価されると思えるまで破壊的技術を販売しない。それは、持続的技術に適した考え方を破壊的技術にも当てはめるからである。
優良企業が破壊的技術に直面したとき、開発における最大の課題は「技術」であり、既存の市場に合うように破壊的技術を改良することだと考えがちである。一方、破壊的技術の商品化に成功した企業は、開発における最大の課題は「マーケティング」であり、製品の破壊的な特性が有利になる次元で競争が発生する市場を開拓するか、見つけることだと考える。
破壊的技術を研究室で温め、主流市場に適したものになるまで育てようとする企業は、破壊的技術の特性を当初の状態のまま受け入れる市場を見つける企業のようには成功しない。
② 破壊的技術は確立された技術より単純、低価格、高信頼性、便利
性能の供給過剰が起こり、破壊的技術が主流市場を下から攻撃するようになると、破壊的技術は「機能」に対する市場の需要を満たす。さらに主流製品より単純、低価格で、信頼性が高く、便利であるがゆえに、成功する場合が多い。
優良企業は高性能、高収益の製品と市場を追い求める傾向があるため、最初の破壊的製品に余計な機能を付けないことに抵抗感がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社