図9-1. 競争基盤の変化
性能の供給過剰が起きると、競争の基盤に変化が起きる。ある性能に対する需要が飽和状態になると、まだ市場の需要を満たしていない他の性能指標が重視される。
一般に、ある特性に対して求められる性能レベルが達成されると、特性がさらに向上しても顧客は価格プレミアムを払おうとしなくなる。それは市場が飽和状態に達したことを表す。このように性能の供給過剰は競争基盤を変化させ、顧客が複数の製品を比較して選択する際の基準が、まだ市場の需要が満たされていない特性へと移る。
図9-1のように競争基盤が繰り返し変化し、完全に差別化の要素がなくなる(複数の製品がすべての性能指標に対する市場の需要を満たす)と、製品は市況商品(需給関係に応じて価格が変化する商品)になる。製品の特徴と機能が市場の需要を超えてしまうと、特徴や機能の違いは意味を失う。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社