イノベーションのジレンマ:第8章 組織にできること、できないことを評価する方法 (11)

図8-1 イノベーションの条件と組織の能力の適合性
図8-1. イノベーションの条件と組織の能力の適合性

 
図8-1は、既存のプロセスと価値基準に内在する能力が利用できるかどうかを整理・判断するためのフレームワークである。左の軸は、組織で現在使われている反復作業、コミュニケーション、協調、意思決定のパターンなど既存のプロセスを使って、新しい仕事をどれだけ効果的に遂行できるかを表す。右の軸は、左の軸の状況に適したチーム構造を示している。機能的組織や軽量級チームは既存の能力を生かすのに適しており、重量級チームは新しい能力を生かすのに適している。

主流事業のやり方や意思決定の方法が新しいチームの仕事では役に立たず、むしろ妨げになるような場合は「重量級チーム」が必要である。重量級チームとは、新しいプロセス、つまり連携して新しい能力を構築する新しい方法を作り出すための手段である。

重量級チームのメンバーは、単に自分たちの役割の範囲内で能力を発揮するだけでない。ゼネラル・マネージャーと同じように行動し、プロジェクトのために決定や取捨選択を行わなければならない。このようなメンバーは、通常、プロジェクトへの貢献度が高く、同じ場所で仕事をする。重量級チームのメンバーが連携してプロジェクトを遂行するうちに、新しいコミュニケーションや意思決定の方法が作られ、新しいプロセス、ひいては新しい能力を形成するようになる。事業が発展していくと、それらは慣行化して文化となる。

図8-1の横軸は、組織の価値基準から見て、新しい事業が成功するために必要な資源が割り当てられるかどうかを表す。新しい事業の適合性が低い場合は、主流組織の価値基準ではプロジェクトの優先順位は低くなる。成功するためには、開発と商業化を行う自律的な組織を設立することが求められる。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社