② 新しい能力を内部で生み出す
資源を補強して既存の組織の能力を変えることは比較的簡単だが、資源を基本的に変化のないプロセスに当てはめても、ほとんど変化は起きない。資源には柔軟性があり、さまざまな状況で利用できるが、プロセスと価値基準には本来、柔軟性がない。プロセスはもともと、同じことを同じように繰り返すために存在するものである。
組織の基本的な能力は、プロセスと価値基準にある。プロセスと価値基準は、どのように資源を組み合わせて価値を生みだすかを決めるものであり、資源の多くは購入や売却、雇用や解雇ができるものである。
プロセスを変えることは次の理由により難しい。
- 現在のプロセスが機能しやすいように組織に境界が設定されている場合が多く、境界を超えた新しいプロセスの作成を妨げることがある。
- 経営者は既存のプロセスを捨てられない。
新しい課題のために、慣例とは異なるやり方で人びとが対話し、従来とは異なるタイミングで異なる課題に取り組まねばならない場合、経営者は既存の組織から対象となる人材を引き抜き、新しいグループの周囲に新しい境界線を引く必要がある。新しいチームの境界を設定することで、新しい共同作業のパターンが生まれ、そこから新しいプロセスが形成され、インプットをアウトプットに変える新しい能力が形成される。このチームのことを「重量級チーム」と呼ぶ。
破壊的変化の予兆が見え始めたら、/者はそれが主流事業に影響を及ぼす前に、変化に対応する能力を備えておく必要がある。つまり、既存の事業モデルに合ったプロセスを持つ古い組織が、抜本的な変化を必要とする危機的状況に直面する前に、新しい課題に取り組む組織が必要になる。
プロセスは目的ごとに異なるため、一つのプロセスで根本的に異なることを行おうとしても無理である。既存の市場で新製品を発売するのに適した市場調査と計画のプロセスでは、新しくて輪郭のはっきりしない市場へと企業を導くことはできない。
一つの組織部門が、全く異なる対極的なプロセスを採用することは非常に難しい。経営者は別のチームを新設し、その中で新しい問題に取り組む別のプロセスを決定したり、調整できるようにする必要がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社