① 買収による能力の獲得
買収を行う場合、経営者は次のことを自問する必要がある。
- これほどの対価を支払って生みだされる価値とはどのようなものなのか。
- 人材、製品、技術、市場での地位などの資源が必要だから支払うのか。
- この会社が顧客を理解し、満足を得て、短期間で新しい製品やサービスを開発、製造、販売してきた背景にある独自の仕事の方法(プロセス)や意思決定の方法(価値基準)に価値はあるのか。
買収した企業がその「プロセス」や「価値基準」によって過去の成功を築いてきたのなら、子会社として独立性を保ち、親会社は子会社のプロセスと価値基準へ資源を投入する戦略をとった方がよい。統合すると、子会社の経営幹部は親会社の仕事のやり方を踏襲しなければならなない。イノベーションを提案しても親会社の判断基準に従って評価されるため、買収された会社のプロセスや価値基準の多くが失われてしまうからである。
買収の主な理由が「資源」にある場合は、子会社を親会社に統合することに意味がある。獲得した人材、製品、技術、顧客を親会社のプロセスに取り込み、親会社の既存の能力に生かすことができる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社