破壊的技術の用途となる市場は、開発の時点では知り得ない。そのため、破壊的イノベーションに直面したときにマネージャーが打ち出す戦略や計画は「実行するための計画」というより「学習し、発見するための計画」であるべきだ。未知の市場を発見する方法は、理論的にも実践的にも教育を受ける者はほとんどいないからである。
第7章では、ディスク・ドライブ業界の専門家が、持続的技術の市場を正確に予測していながら、破壊的技術の新しい市場を予測することができなかった理由を見ていく。さらに、オートバイ業界とマイクロプロセッサー業界の事例を通して、破壊的技術の新しい市場が、当時はいかに不透明であったかを確認する。
ディスク・ドライブ業界に関しては、『ディスク/トレンド・レポート』が1975年から現在までの各年に発売したあらゆるモデルのディスク・ドライブの情報を提供している。その各号では、前年の各市場分野の販売台数と売上高を公表し、その後4年間の分野別予測を提供している。その予測を分析すると、確立された市場についての予測はすばらしいが、破壊的ディスク・ドライブ技術によって生み出された新しい市場の規模を正確には予想できていないことがわかる。
『ディスク/トレンド・レポート』のスタッフは、持続的アーキテクチャーに関する予測も、破壊的アーキテクチャーに関する予測も同じ方法で作成している。例えば、主要顧客や業界の専門家への取材、トレンド分析、経済モデルの作成などである。これらは持続的技術には適用する方法であっても、破壊的技術の予測には適用せず、予測が失敗してしまう。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社