優良企業の組織は顧客によって束縛され、自由がきかない。優良企業の合理的かつ機能的な資源配分プロセスは、破壊的技術の商品化を妨げることがある。また企業が大きくなって優良企業になると、新しい市場に早い段階から参入するための根拠が集めづらくなる。
企業の成長率は、株価に強力な影響を与える。企業の株価が将来の利益予測を表すのであれば、株価水準が上昇するか下落するかは、市場の成長予測や企業の利益予想に左右される。株価が堅調に上昇すれば、有利な条件で増資できるようになるし、経営資源も集めやすくなるが、その一方で、企業が大きくなればなるほど、成長率を維持することは難しくなる。
以上のように優良企業はさまざまな制約を受けることから、新しい市場へ参入するのに出遅れる。優良企業にとっては魅力がないほどの小規模であるうちに、破壊的技術が生み出す新しい新市場へ参入することは極めて重要となる。
優良企業の経営者が破壊的変化に直面したとき、小規模市場とその成長をどのように捉えたらよいだろうか。クリステンセン教授は3つのアプローチを提案している。
- ① 新しい市場の成長率を押し上げる
新しい市場が優良企業の増収増益に影響を与えるよう、短期間で市場の成長率を高める。 - ② 市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
市場が形成され、その性格があきらかになるまで待ち、十分にうまみのある規模に達したところで参入する。 - ③ 小規模な組織に小さなチャンスを与える
破壊的技術を商品化する業務を、その売上規模に見合った小規模な組織に任せる。
①~③の要点について次稿より具体的に紹介する。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社