イノベーションのジレンマ:第5章 破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる (2)

企業は、顧客がその製品を求めているとわかれば、技術的にリスクの大きなプロジェクトにも投資を惜しまない。しかし、収益性の高い既存顧客が製品を求めなければ、技術的に単純な破壊的技術を用いるプロジェクトに対して経営資源を集めることができない。

顧客や投資家の求める製品やサービス、利益を提供し、そのニーズを満たした場合にのみ、組織は存続し企業は繁栄する。各業界における優良企業とは、顧客が求めるものを提供することを最も重視する人材とプロセスを備えた企業である。

企業は経営資源に依存し、その資源を提供する相手は顧客である。ゆえに企業の行動を決定するのは、経営者ではなく顧客である。優良企業では「経営幹部の決定」よりも「顧客重視の資源配分と意思決定プロセス」の方が、投資の方向性を決める上で重要である。

それでは、顧客が明らかに求めていない破壊的技術が出現したとき、経営者はどうするべきだろうか。方法は2つある。

  1. とにかく破壊的技術を追求し、収入源である顧客が拒否しようと、上位市場の技術より収益性が低かろうと、その技術は長期戦略にとって重要であると全社員に伝える。
  2. 独立した組織を作り、その技術を必要とする新しい顧客に対して活動する。

2番目の方法は1番目の方法よりも成功する確率が高いと、クリステンセン教授は考えている。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社