イノベーションのジレンマ:第2章 バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激 (2)

バリュー・ネットワークとは、入れ子構造になった商業システムのことである。企業は、あるバリュー・ネットワークの中で経験を積むと、そのネットワークの主要な需要に合わせて能力、組織構造、企業文化を形成することが多い。

企業はバリュー・ネットワークにおいて顧客のニーズを認識し、対応し、問題を解決し、資源を調達し、競争相手に対抗し、利潤を追求する。バリュー・ネットワークの中では、各企業の競争戦略、とりわけ過去の市場の選択によって、新技術の経済的価値をどう認識するかが決まる。各企業が「持続的イノベーション」や「破壊的イノベーション」を追求することによってどのような利益を期待するかは、この認識によって異なる。

優良企業は期待する利益のために、資源を持続的イノベーションに投下し、破壊的イノベーションには与えない。このような資源配分が、持続的イノベーションでは常にリーダーシップをとり続けた優良企業が、破壊的イノベーションでは敗者となった要因である。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社