持続的イノベーション:意図的計画法 | 破壊的イノベーション:発見志向計画法 | ||
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特徴 | パターン認識に基づいてプロジェク卜開始を決定する | 数字や規則に基づいてプロジェク卜開始の決定を下しても構わない | |
段階 | 1 | 仮説(将来予測)を立てる | 財務目標を打ち出す |
2 | 仮説に基づいて戦略を策定し、戦略に基づいて財務予測を立てる | 仮説を証明するためのチェックリストを作成する | |
3 | 財務予測を基に投資決定を行う | 重要な仮説の妥当性を検証するために、学習計画を実行する | |
4 | 財務予測を実現するために戦略を実行する | 戦略を実行するために投資を行う |
発見志向計画法は、創発的戦略プロセスを積極的にマネジメントするための手段である。表8-1に示すように、発見志向計画法と意図的計画法では、段階の順序が異なる。
- 第1段階:新事業の財務目標や成果予測を立てる。プロジェクトの損益や投資収益率に関する資料は1ページ程度でまとめてもよい。
- 第2段階:仮説のチェックリストを作る。「財務予測が実現すると期待できるのは、どのような仮説が正しいと証明されたときか」を列挙し、最も重要なものから順番に列挙する。チェックリストには本書で示した理論に関連する仮説を含める。
例1)ローエンド型破壊や新市場型破壊が可能か?
例2)ターゲット顧客が仕事を片づけるために新製品を使うか?
例3)新事業が会社をこれから金の向かう場所に導くか? - 第3段階:「意図的戦略の計画」ではなく「重要な仮説の妥当性を検証する計画」を実行する。この学習計画では、最も重要な仮説の妥当性を確認する、または無効にするような情報を、迅速かつなるべく費用をかけずに収集しなければならない。それができれば、イノベーターは第四段階が始まる前、つまり多額の投資を通じて戦略を実行する以前に、戦略の手直しができる。
- 第4段階:第3段階で計画の有効性がはっきりした後で、戦略を実行するための投資を行う。
発見志向計画法を用いると「組織が要求する数字を実現するための計画には、それを裏付けるような妥当な仮説がない」ということが早い段階で判明する。妥当性がなければ、アイデアを有効な戦略にまとめることはできないだろう。あるいは、過度の急成長を要求しないような価値基準を持った小規模な組織にアイデアの実行を任せるべきかもしれない。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社