モーガン・マッコー教授の提唱する「経験の学校」の理論によれば、経営者は生まれながらにしてなるのではなく、経験によってつくられる。将来取り組まなければならない課題を過去に取り組んだことがある「経験の学校」に通った人材は、成功する見込みが高い。
着目点さえ正しければ、経営幹部の経歴は課題に取り組む重要な手がかりとなる。企業が将来直面するであろう難問をリストアップして、経営者が過去に似たような課題に取り組んだことがあるかどうかを確かめるとよい。
破壊的企業の経営者は、次に挙げる経験の学校の「講座」を、少なくともいくつか受講していることが望ましい。
- 不確実性のきわめて高い環境で事業を行ったことがある。
- 一見得られそうにない情報を掘り起こすための計画を立案したことがある。
- 試行錯誤の末に、製品・サービスを利用できる、思いもよらない顧客を発掘したことがある。
- 詳細なデータだけに頼らず、理論と直感をもとに決定を下したことがある。
- 臨機応変な対応により、それほど資金を使わずに問題を解決したことがある。
- 企業の課題にふさわしいスキルを備えた経営チームを、ゼロから立ち上げたことがある。
- やるべきことを速くやるために、社内の特定のプロセスを阻止、活用、あるいは操作したことがある。
上記のいくつかに取り組んだことのある経営幹部は、破壊的イノベーションの推進を先導するのにふさわしい。ただし、意図的戦略が必要な状況では、経営幹部は創発的戦略とは別の経験の学校に通っていなければならない。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社