専門的企業は「置き換えのイノベーション」を推進して、既存企業からシェアを奪うこともある。置き換えは、イノベーションの分類の1つである。
上位市場に向かう持続的イノベーションとは異なり、置き換えはモジュール化した箇所で生じる。ローエンド型破壊的イノベーションが、最も要求のゆるい顧客をターゲットとするのに対し、置き換えはまず主流市場をターゲットにする。
置き換えのイノベーションは、必ずしも低コストのビジネスモデルや性能の劣った製品を伴うとは限らない。製品・サービスの特定の構成要素を供給する専門的企業が、置き換えを推進することが多い。
置き換えを見極めるには「顧客のニーズに対して過剰満足の状態にある機能性」と「モジュール型のインターフェース」を探す必要がある。原則として専門的企業が勝てるのは、明確なモジュール化が生じた箇所で、自社製品が製品システムと接続できる場合に限られる。
インターフェースがモジュール型かどうかを識別するための3つの試金石は次の通りである。
- インターフェースのどの部分が、重要か、重要でないかを特定できること。
- インターフェースを構成するパラメータや通信手順が、適切かつ必要なものであることを、測定または検証できること。
- インターフェース全体の相互作用が、よく理解され予測可能であること。部品間に予測不能な相互作用がある限り、モジュール性への移行は壊滅的な結果を招きかねない。
置き換えのイノベーションは分業をもたらすため、ローエンド型破壊的イノベーションを促すことがある。新興企業がバリューチェーンのいくつかの構成要素を新しい方法で組み合わせて、新しいメリットを提供する。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社