[ 第3章のテーマ ]
- 破壊は避けられるだろうか?
- 新規参入企業が下さなければならない、重要な決定とはどのようなものだろうか?
- どのような市場を最初にターゲットにすべきなのか?
- どのような組織を設計すべきか?
- こうした決定は、どのような力に左右されるのだろう?
- 外部者がそうした力を観察する方法はあるだろうか?
- 既存企業はどのような対処戦略をとれば、新規参入企業の破壊的攻撃をかわせるだろうか?
- こうした対処戦略が成功する見込みを、どのようにすれば評価できるのか?
イノベーションの理論を用いて業界の変化を分析する方法の第三段階は、企業が下すべき重要な選択を洗い出し、そうした選択がもたらす影響を理解することである。新規参入企業がどのような「準備計画」を立て、どのようなバリューネットワークを選択したかを検証し、既存企業が「破壊のブラックベルト」を得たかどうかを検証すれば、「企業が下す決定は、その企業が最終的に成功する見込みを高めるのか、それとも低めるのか?」という質問に答えることができる。
企業の戦略的選択に関して把握すべきことをまとめると図3-1となる。
図3-1. 戦略的選択
同じイノベーションを、破壊的イノベーションとして活用するか持続的イノベーションとして活用するかは、経営判断による。企業による選択が成否を分け、それ次第では優位性を生み出すことも、相手の優位性に対抗することもできる。
業界の自然な進化の過程に変化を起こし得る要因は大きく3つ考えられる。
- 新規参入企業が誤った準備計画を実行する
- 準備計画とは、企業の人材採用、戦略策定プロセス、資金源に関するさまざまな意思決定のことである。
- 誤った決定による初期条件のせいで、新規参入企業は誤った市場に足がかりを築こうとする場合がある。
- 新規参入企業が既存企業と重複するバリューネットワークを構築し、既存企業が取り込みを行いやすい道筋をつくってしまう
- バリューネットワークとは、上流のサプライヤーや下流の販路、その他の補助的な企業の集まりのことである。
- 新規参入企業は、既存企業のバリューネットワークの中で競争するという選択を下すと、既存企業の価値基準への同調を求める圧力にさらされ、新規参入企業に何より必要な非対称性を失ってしまう。
- 既存企業が破壊のブラックベルトを得て、自らに働く力を有利に活用する能力を身につける
- 破壊的イノベーションの理論を理解すれば、企業も破壊をマスターすることができる。
豊富な資源と確立したプロセスを活用できる既存企業は、上記3つのうちのどの要因が選択されても、形勢を有利に逆転させることができる。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社