[ 資源 ]
資源とは、企業が獲得、構築、売却、破壊できる「モノ」をいう。たとえば技術、製品、現金、人的資源、蓄積された知識、確立したブランドといったものが該当する。
資源はとても柔軟性が高く、同じ資源を複数の市場や組織で生産的に利用することもできる。企業にとっては、資源を「所有」することではなく「利用できる」ことが重要である。
[ プロセス ]
プロセスとは、従業員が資源のインプットを、より価値の高い製品 ・サービスやその他の資源に変換するために用いる、やりとりや調整、連携、意思疎通、意思決定のパターンをいう。企業は同じ問題を繰り返し解決する必要があるとき、課題にうまく対処できるような公式、非公式のプロセスを生み出して、失敗のリスクを最小限に留める。
プロセスが資源と違うのは、それが基本的に変わらないことを前提に作られている点である。プロセスは企業のスキルや強みを決定し、またそのスキルと強みによって企業にできないことや弱みが決定する。プロセスが本来意図されない課題に用いられると、全く融通が利かず、非効率に課題が解決されることが多い。
企業のプロセスを外部から判断するときは、その企業がこれまでどのような問題を繰り返し解決する必要があったかを調べるとよい。企業がこれまで繰り返し適切に対処してきた問題をリストアップすることで、その企業の持っているプロセスを目に見える形で、かなり正確に把握することができる。
企業の強みを作っているプロセスの中には、外部者には(ときには内部者にも)わかりらいものが多い。例えば、資源をどこに投入するか、市場調査をどのように行うか、財務予測をどのように立てるか、社内で計画や予算をどのように交渉するか、といった重要な決定を支援するための補助プロセスがある。
[ 価値基準 ]
組織の価値基準とは、従業員が優先順位の決定を下す際に用いる判断基準のことである。価値基準は「企業の経営幹部が下すより大きな戦略決定」や「資源配分プロセス」に影響を与える。資源配分プロセスとは、どの脅威や機会に対処すべきか、すべきでないかを決定する仕組みをいう。
企業の規模、収益構造、コスト構造、最も重要な顧客、過去の投資履歴などはすべて、その企業の経営者の目にどのような戦略や投資が魅力的に映るのか映らないのかを理解する手がかりになる。企業の価値基準は、次の要因から見極めることができる。
- 収益・コスト構造
- 売上構成はどうなっているのか?
- 現在のコスト構造を維持するには、どれだけの粗利率が必要か?
- どれくらいの規模の事業機会ならば関心を示すだろうか?
- 顧客リスト
- どのような顧客のニーズに応えるために、どのようなイノベーションを優先させているのか?
- 収益の多くを特定の顧客層から得ている企業は、その顧客層をターゲットにするイノベーションに重点的に取り組む可能性が高い。
- 投資実績
- どのような事業機会に集中して投資を行い、どのような機会を見送ってきたのか?
企業の経営状況を把握し、資源、プロセス、価値基準を洗い出すことによって、企業ができることできないことを深く理解することができる。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社