イノベーションへの解:第4章 自社製品にとって最高の顧客とは (6)

本書における「チャネル」とは、卸売業者や小売店に限らず、企業の製品が最終消費者の手に届くまでの間に、その製品に価値を付加したり生み出したりする、あらゆる存在が含められた「広義のチャネル」である。チャネルに属するすべての企業が「利益をあげながら成長する」という用事を片づけなければならない。

同じようなコスト構造やビジネスモデルを持つ企業同士が競争し、同じような製品を販売することに甘んじれば、利益率は必要最小限のレベルにまで落ち込む。したがって、チャネル内部に作用する“強力で永続的な破壊的エネルギー”として「上位市場への移行性」を活かすことが必要となる。

イノベーションを推進する経営者は「自社の新製品を上位市場に移行するための原動力として捉えてくれるチャネル」を探さなければならない。チャネルが新製品によって競争相手を破壊すれば、企業は「チャネルのエネルギー」を活用して、破壊的イノベーションを起こしたことになる。大きく成功した破壊では、製品とそれを顧客に届けるチャネルとの間に、相互に利益をもたらす関係が成立する。企業は、製品から最大の利益を得るチャネルに、製品を扱ってもらうよう常に気を配らなければならない。

破壊的製品の推進に、特別な金銭的インセンティブを与えるのは賢明ではない。「持続的向上において最も収益性の高い製品を販売する」という重大な責務から注意が逸れてしまうからである。また破壊的製品には、破壊的チャネル(破壊的能力を秘めたサービス企業)が必要となる。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社