表2-1は新成長事業の創出を試みる企業が取り得る3つの戦略「(1)持続的イノベーション、(2)ローエンド型破壊、(3)新市場型破壊」の特徴を対比したものである。
特徴 | (1)持続的イノベーション | (2)ローエンド型破壊 | (3)新市場型破壊 |
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製品やサービスの目標性能 | 最も要求の厳しい顧客が最も重視する属性における性能向における従来の性能向上。これには、漸進的または画期的な向上が含まれる | 主流市場のローエンドにおける従来の性能指標に照らして十分良い性能 | 「従来型」の属性では性能が劣るが新しい属性(特に単純で便利なこと)での性能向上 |
目標顧客または用途市場 | 性能向上に対価を支払う意志のある、主流市場の最も魅力的な(つまり最も収益性の高い)顧客 | 主流市場のローエンドにいる、過保護にされた顧客 | 無消費をターゲットとする。つまり製品を購入、使用するために必要な、金やスキルを持っていなかった顧客 |
どのようなビジネスモデル(ロセスやコスト構造)が必要になるか | 既存のプロセスやコスト構造を活用し、現在の競争優位を十分に活かして、利益率を改善または維持する | 運営面または財務面(または両方)における新しいアプローチ。低い粗利益率と高い資産活用率をさまざまに組み合わせることによって、市場のローエンドでビジネスを得るために必要な低価格でも魅力的な利益率を得る | 販売単位当たり価格が低く、当初は単位生産量が少なくても、儲けが出るようなビジネスモデル。販売単位当たりの粗利益益額はかなり低くなる |
破壊とは、競争の帰結が状況に応じてどのように変化するかを、高い精度で予測できる、因果関係を示す概念モデルである。表2-1と前述のリトマス試験を用いれば、アイデアをプランとして形成する際に、さまざまな戦略がどのような競争上の帰結をもたらすかを、あらかじめ知ることができる。
革新的なアイデアのすべてを、破壊的戦略として形成できるわけではない。必要な前提条件が存在しない場合があるからだ。そのような状況では、優良企業に機会を与えるか任せるのが得策である。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社