「顧客が片づけようとしている用事」という観点から市場を従えることで、顧客の時間の過ごし方に即したイノベーション項目を定義することができる。どの製品が顧客と結び付くかを明らかにする「状況ベースの区分」に基づく理論があれば、従来イノベーションにおいて一か八かの賭けだったものが、理解しやすく予測可能になる。
特定の用事をよりうまく片づけられるような特長や機能に長い間注力すればするほど、そしてマーケティング・メッセージを特定の用事に長く絞れば絞るほど、メーカーは速く成長することができる。競合企業からシェアを奪うだけでなく、同じ用事をするために雇われる、その他の製品やサービスからもシェアを獲得することができる。企業が特定の用事に改良を集中すれば、製品はいつまでも差別化され、収益性も高くなるだろう。
メーカーが競合企業のすべての機能を、ひとつの多目的型機器に必死に詰め込もうとすると、コモディティ化された区別の付かない製品になる。このような結果に至る理由は「片づけなければならない用事」ではなく「製品の属性や顧客の属性」という観点から市場を促えるからだ。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社